吉川 英治

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吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第69話

しかし、彼の軍学も空までは及びません。蚕婆の吹き針もここからは届かず、ただ唇を噛みしめている間に、鷲は一気に裾野をめがけて斜めに遠ざかっていきます。「呂宋兵衛さま、もうこうしてはおられません」さすがの昌仙も少しうろたえて腰を浮かせましたが、...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第68話

龍太郎はあわてて後ろへ馬首をめぐらし、「待て! 味方だ!」「竹童だ、撃つな!」小文治も絶叫しました。しかし、間に合いませんでした。プツン! と高い弦の音が、はるか遠くまで響き渡りました。射手は名人、矢は鷹の石打ち。ヒューッと風を切って飛んだ...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第67話

そのせいで徳川勢と武田方の合戦は両軍引き分けになったと聞きましたが、人穴城から追い出された野武士たちは、駿河の方へは逃げられないので、たぶんこちらへ押し寄せてくるでしょう」「えっ、野武士の残党がこっちへ逃げてくるんですか?」「他に逃げ道もな...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第66話

「では、もしやきさまは、伊那丸(いなまる)のために働いている者ではないのか?」と、厳しく問い正しました。「あたりまえさ! 伊那丸さまのほかにおられるか、誰のためにこんな危ない真似をするものか。おいらもお師匠さまも、みんなあの方を立派に世に出...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第65話

果心居士(かしんこじ)から教わった浮身の法(うきみのほう)で、ピタリとクロの翼の根元へへばりつき、両端に火をつけた松明を次々と投げ落としていたのです。火先は鮮やかな縞模様を描いて人穴城へと降り注ぎ、三千の野武士の巣窟を、瞬く間に大混乱の渦に...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第64話

ちょっとくらい、オレにだって貸してくれてもいいだろう! こっちは命がけで合戦の様子を探ってきてやったんだぜ。そんな根性の悪いことをするなら、オレだって、もう何も話してやらねえからな!」「いいとも、もうお前になんか教えてもらうことはないよ。お...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第63話

「蛾次郎、蛾次郎、姿を隠せ! 早く隠れろ!」「え、え、え、なんです、親方!」「バカ! ぐずぐずするな、見つかっては一大事だ! 早くそこらへ姿を消せ!」「ど、どこへ消えるんです?」 と、不意の出来事に蛾次郎は度を失い、まだうろうろしているので...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第62話

「さては、またしても民部の策にのせられたか!」と、又八は顔色を失い、慌てて道を引き返そうとしましたが、なんとそこにはすでに逃げ道を断つように、別の軍勢が立ちはだかっていました。その中からひときわ高い声が響きます。「武田伊那丸、これにあり! ...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第61話

たちまち、進軍の合図が響きます。民部の手から振られた采配が空を切り、風を切る音とともに、陣は五つの段に分かれました。雁が列をなして飛ぶような形となり、闇に包まれた野原から、人穴城の正面へと、脇目もふらずに攻めかかりました。「わーッ! わーッ...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第60話

二 そこは密林の奥深くでしたが、地盤の岩石が露出しているため、一町四方ほど樹木がなく、開けた平地には硯(すずり)のような黒い石が転がり、裂け目や窪みからは、いくつもの筋に分かれた水がサラサラと流れていました。ギャア、ギャア、ギャア。 ――不...
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