吉川 英治

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吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第59話

忍剣と小文治がなおも追いかけようとするのを、伊那丸はきっぱりと制止しました。逃げる八風斎の姿を一瞥もせず、伊那丸は言いました。「小さな敵に気を取られるな。心もとない大軍の出動とやら、誰ぞ、早急に物見(偵察)をしてまいれ!」「はっ、心得ました...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第58話

晩秋の草むらを庭として遊ぶ、鶉(うずら)や百舌(もず)や野うさぎの世界は、うらやましいほどに平和そのものです。ちょうどそれと同じように、のんきで陽気な顔をして、またぞろ裾野へ舞い戻ってきた泣き虫の蛾次郎は、まるで自分が偉い身分にでもなったか...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第57話

死地におちた雨ヶ岳一富士川の名物である筏舟(いかだぶね)に竿を差し、鰍沢(かじかざわ)から下る筏乗りのふりをして、矢のような速さで東海方面へ逃げた、怪しい二人の男がいました。海口へ着くやいなや、しぶきに濡れた蓑笠(みのかさ)とともに筏を捨て...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第56話

自分たちがいない間に、あるいは軍律を破って、夜半の眠りをむさぼっていたのではないかとさえ疑いました。「なぜ、かがり火を焚いておらぬ。この暗さで、いざという時にどうするつもりだ。不埒者め、早く灯をつけい!」「はい、ただいま、すぐに明るくいたし...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第55話

いつもの図太さはどこへやら、顔色は真っ青です。「おお、裾野の見張り役の婆さんではないか。大変とはなんだ、どうした?」一斉に色めき立つ人々を見回しながら、蚕婆は歯をむき出しにして怒鳴りました。「なんだもかんだもあるものか! 早く、早く門を閉め...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第54話

徳川家へまいれば伊賀衆の組頭として、いくらでも取り立ててやるから、一緒にくるがいい」「あ、ありがとう!」「おれもこんなやかましい親方にくっついているのは、いやでいやでたまらないんだ」「む、卜斎に気取られぬうち、そっと馬小屋から足のはやいのを...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第53話

「それに、後から聞いた話では、てめえは夕方、物置小屋から二、三十本もの松明(たいまつ)を盗み出したそうだな。一体そんなものをどこへ持ち出して、何のために使ったんだ。嘘をつくとこれだぞ!」いきなり弓の折れ(弓の端材)を振り上げ、羽目板をピシリ...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第52話

「逃がしはしないよ!」鋭く目を凝らしてあたりを見回した蚕婆は、ふと、七、八間(約13〜15メートル)先の暗闇の中で、何やらモゾモゾと動いている人影を見つけて、じっと狙いを定めました。――それは紛れもなく、天井裏で膝を突かれてケガをした曲者(...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第51話

竹童は自分より三歳か四歳上らしい蛾次郎を見上げて、へんなやつだと思いました。「そのことじゃないよ。さっきおいらが悪いやつに危うく殺されそうになったところを、石を投げて助けてくれたから、その礼を言ったのさ」「あんなことはお茶の子さいさいだ。こ...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第50話

するとすぐに、鋭い太刀風が竹童の耳たぶから鼻筋のあたりをブーンとかすめました。哀れ竹童、組み討ちならまだしも、駆け比べならまだしも――真剣の白刃を交えるには、悲しいかな、まだそれだけの体格もできておらず、剣の技もありません。第一、腰に差して...
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