新美 南吉

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初級翻訳・良寛物語 手毬と鉢の子 第29話

もうご飯がうまく蒸れている頃です。蓋をとると、ふわっと白い湯気が顔を撫で、美味しそうな匂いが鼻をくすぐりました。上出来のようです。「詩はまずくできたが、飯はうまくできた」一人でそんな冗談を言いながら、良寛さんはささやかな朝食をとりました。朝...
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初級翻訳・良寛物語 手毬と鉢の子 第28話

すべてが二十年前とは逆になっているように、良寛さんには思えました。あの時は、まだ世の中をよく知りませんでした。大きな希望に胸が膨らんでいました。今は人の世の様々な苦しみを知ってしまいました。胸には何の希望もありません。……――たくさんのしな...
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初級翻訳・良寛物語 手毬と鉢の子 第27話

わしもまだ達者でいるつもりじゃ」「いいえ、今度はもう帰ってこないつもりです」「何、帰ってこない? ではもう故郷へいって落ち着くつもりか」「どこに落ち着くやらわかりませんが、もうこちらへは参らないつもりです」「そうか、それもよかろう。だが、ど...
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初級翻訳・良寛物語 手毬と鉢の子 第26話

それに比べてわしは、一体何をし遂げただろうか。なるほど、わしは多くの書を読み、かなり苦しい修行も積んだ。人間や世界がどういうものか、大体わかることもできた。しかし、わしがこれまでやってきたことは、このまま何もしないで、のらくらと生きていくだ...
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初級翻訳・良寛物語 手毬と鉢の子 第25話

「それじゃあ、わしのお弁当を半分お食べなさい。えらく黒い飯で、お口に合うかどうか分かりませんがね。」「何の、何の。わしは黒いのが大好物でね。茄子と飯は、黒ければ黒いほどいい。」良寛さんは、そんな冗談を言いながら、弁当箱の蓋に分けてもらったご...
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初級翻訳・良寛物語 手毬と鉢の子 第24話

「お前らは全部立会人だ。一足も動いてはならん。」弥助さんは泣き顔をして、またみんなのところへ戻ってきた。「もうええだろう。」と言って、胸の深さまで掘った勘又さんが、穴から出てきた。「罪人を突き落とせ。」と役人は命じた。そこでちょっと動揺が起...
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初級翻訳・良寛物語 手毬と鉢の子 第23話

寂しいからといって、泣く気も起きません。泣いたところで、誰もどうしてくれるわけでもないのです。また、誰かが慰めてくれたとしても、それで癒えてしまうような浅い寂しさではありませんでした。しかし、良寛さんは思いました。昔の偉かったお坊さんたちは...
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初級翻訳・良寛物語 手毬と鉢の子 第22話

片手にはお土産の菜の束をぶら下げて。「慌てたって駄目なんだ」と大きな声で良寛さんは独り言を言いました。目の前の麦の中から雲雀(ひばり)が飛び出し、少し上がったかと思うと、囀(さえず)り始めました。「なるようにしかならないのだ」と良寛さんは雲...
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初級翻訳・良寛物語 手毬と鉢の子 第21話

しっかりと真理を聞いてくるのだぞ」そして良寛さんが出かけようとすると、和尚はこう付け加えました。「それからな、今晩あたり月がきれいだから、一杯飲みに来るようにと和尚に伝えてくれ。いい酒をいただいたから、とな」良寛さんが山門を出てくると、そこ...
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初級翻訳・良寛物語 手毬と鉢の子 第20話

瀬戸内海が細長く陸へ食い込んで湾になっている。その湾に向かっている丘の上に円通寺は建っていた。同じ港町でも、越後の出雲崎とこの玉島とでは、ずいぶん違っていた。越後の海は、冬になると暗い雲に閉ざされ、北から来る風が波を巻き上げた。波は怒った牛...
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