初級翻訳・きつねめさんのはなし 第4話

きつねめさんのはなし

そのあと、「いや、やっぱりやめた」とばかりに考えをあらためて、ぜんぶ片づけたり。
石炭入れをもどして戻ってきたときには、あなぐまトミーの寝ぞうが、ちょっと横むきに変わっていました。
それでも相変わらず、ねむりはものすごくぐっすり…? ところがこいつは、ただのどうしようもない大ナマケモノ。きつねめさんなんて少しもこわくないといったふうに、ただだらだらと気持ちよく寝ていたい、その一心で動きたくないだけなのです。
ふたたび気をとりなおして、寝室にしのびこむきつねめさん。手には、ものほし用のロープがしっかり握られていました。
ふと立ちどまると、あなぐまトミーのようすをじろりとうかがい、いびきがちゃんと続いているかを確かめます。
いびきは相変わらずうるさいけれど、とくにヘンなところはありません。
そこで、きつねめさんはベッドに背中をむけ、窓のかけ金をそっと外しました。
きーっという窓の音が鳴ったので、びっくりしてギクッとふりかえります。
あなぐまトミーは片目をパッチリとあけていましたが――あわててまたぎゅっと閉じました。
いびきはそのまま、何事もないように続いています。
きょどう不審で、なんだかおちつかない様子のきつねめさん。(なにぶん、窓とドアのすぐ近くにはさまれるようにベッドが置いてあったものですから。)
それでも、ちょこっとだけ窓をあけて、そこからものほし用ロープの大半を、外へとグイグイとおしだしました。
きつねめさんの手元に残ったのは、ロープのはしっこだけで、そこには小さなフックがついていました。
そんなことにも気づかず、あなぐまトミーは相変わらず、わざとらしくねんいりにぐーぐーといびきをかきつづけていました。立ちどまってしばらく目をむけてから、寝床をまたあとにするきつねめさん。
両目を開けたあなぐまトミーは、ロープをみとめてにやり。
窓の外で物音がしました。
あわてて目を閉じるあなぐまトミー。
表のドアから出たきつねめさんがおうちのうらに回ります。
道すがらうさぎのぬけ穴にはまってしまって。
中にいるとばれていたら、がっと引きずり出されるところです。
しかしぬけ穴をつきやぶった足は、すんでのところで、あなうさピーターとベンジャミンの頭を外します。
そしてさいわいその穴もあなぐまトミーのしわざだと思ってくれたみたいで。
窓からぐるぐる出ているロープを取り上げ、しばらく聞き耳を立ててから木にロープをくくりつけます。
それを片目で追うあなぐまトミー。
窓ごしに何がなんだか。
きつめねさんは大きなバケツいっぱいにずっしり水をくんできて、ふらつきながらもかかえたまま台所を通って寝床へ。
せっせといびきにはげむあなぐまトミー、鼻もちょっとずずずずず。
きつねめさんはベッドのわきにバケツをおろし、フックのついたロープのはしをひろいあげると――まをおいてあなぐまトミーをみやります。
いびきはもはやすさまじいものでしたが、口のはしはそれほど上がっていません。
ベッドの頭がわによせてあるイスにおそるおそるのぼるきつねめさん。
その足があなぐまトミーのはぐき近くできわどくて。
ベッドのてっぺんには日よけをつるしておくでっぱりがあるのですが、そこへフックつきのロープのはしをのばして引っかけました。
(きつねめさんの日よけそのものは留守中なのでたたんでしまわれています。
かけぶとんも同じ。
だからあなぐまトミーはもうふだけなのです。)
ぐらつくイスの上に立ちながらきつねめさんはじろりと見下ろして。
じゅくすいコンテストがあればほんと一等賞まちがいなし!

何があっても起きないごようす――ベッドの上でロープがぺろんぺろんしているのに。
イスからあぶなげなくおりたきつねめさん、こんどは水入りバケツを手にして上がろうとします。
フックからつるせばあなぐまトミーの頭上でバケツがぶらんぶらん、窓ごしにひもでゆらすといっちょシャワーのできあがりというわけです。
ところがもともと足が細かったために(すな色のいじわるひげはありましたが)――重たいものをフックやロープの高さにまではとても持ち上げられません。
あとちょっとでひっくりかえりそうになったくらいで。
すさまじさを増していくいびき。
あなぐまトミーの後ろ足がもうふのなかでつってしまったのですが、それでも何ごともないようにねむりつづけます。
ひとまずイスからおりるきつねめさんとバケツ。
ひとしきり考えたあと水をせんめんきや水さしに入れ替えます。
からのバケツならそこまで重たくはないですし。
ふらつきながらあなぐまトミーの頭の上につるしました。
まさかここまでして起きないやつなんていませんよ!
きつねめさんはイスをのぼったりおりたりおりたりのぼったり。
バケツ1ぱい分の水を上まではこぶのは1どでは無理ですから、ミルクピッチャーを持ち出してちょっとずつすくい上げながら数リットルの水をバケツにうつしていきます。
水がたまっていくにつれてバケツがふり子のようにゆーらゆら。
たまに水がはねてこぼれたり。
なのにあなぐまトミーはみだれなくいびきをかきながらぴくりともしません――片目をのぞいては。
きつねめさんはとうとう手はずをととのえました。
バケツには水がなみなみ、ロープもベッドの上からぴーんと張られ、窓下をぬけて外の木までのびています。
「これでわたくしの寝床もしっちゃかめっちゃかですねえ。
大そうじでもしませんとあのベッドではねむることもかないませんか。」
とつぶやくきつねめさん。
さいごにきつねめさんはあなぐまに流し目してさっと寝床をあとにします。
外へ出ると表に戸じまり。
ぬけ穴のウサギたちにも、上から足音が聞こえてきます。
うらにかけ足でまわってロープをほどくつもりでした。そうすればあなぐまトミーの上に水の入ったバケツを落とせるのです――
「起き抜けに思いきりびっくりさせて差し上げます。」

しかしあいてが出てすぐ、とっさに体を起こすあなぐまトミー。
きつねめさんのガウンを細長く丸めて、みがわりに水入りのバケツの下のベッドにつっこんで、自分も寝床をあとにします――どこまでもニヤニヤ顔で。
台所に入ってやかんを火にかけお湯を作ります。
今のところここで手間をかけて子うさぎたちを煮るつもりではないようで。
木のところにたどりついたきつねめさんははっとします。
重みでぴーんと張っていたために結び目がきつく締まりすぎてほどくのが無理で。
思いきってかみ切るハメになりました。
20分以上はかんだでしょうか。
ようやくロープがぶちん、でもいきなりぐいっと引っ張られたので歯ぐきごと外れそうなくらいにのけぞってそのままはね飛ばされてしまいました。
おうちの中ではどがしゃばちゃーん、バケツのころころ転がる音。
でも、きゃーという声がありません。
あれっとなるきつねめさん。
じっとしたまましっかり耳をすませます。
そのあと窓に近づいて中をのぞきました。
水がベッドからぴたぴた、バケツはすみに転がっています。
ベッドのど真ん中、毛布の中には何かしらがぐっしょり――真ん中がへっこんでいるのでそこへ(というかおなかに?)バケツがジャストヒット。
頭も湿った毛布に包まれて、いびきももはやありません。

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