息子がひとりで名はジャック、
その子まずまずお人よし、
ずんと良いことせぬ代わり、
ずるい悪さも教えぬ。
市場へジャックをやったれば、
雌のガチョウを買ってくる、
「まあまあ、お母さん、見ておいで、
そのうちいいこともあるでしょうよ」
それからガチョウの雌と雄、
なかよしこよしで遊んでる。
いつも一緒にエサを食べて、
ガアガア、お池に泳いでる。
ある朝、ジャックが行ってみりゃ、
(ほんに話によく聞いた)
金の卵がありまする。
産んでくれたは雌のガチョウ。
金の卵だ、早く告げよ、
ジャックはお母さんへとんでゆく。
お母さんもほくほくごきげんだ。
「それはよかった、おお出来じゃ」
ジャックは卵を売りにでる。
それを買おうとユダヤ人の悪者、
思う半値もつけないで、
うまうまジャックをちょろまかす。
ジャックはお嫁取りにゆきまする。
向こうのお嬢さん華美好きで、
それはかわいい、うつくしい、
花の山査子、百合みたい。
ところへ、あとからつけまわす
ユダヤ人とオシャレのおべっか屋、
脇腹めがけて、ぶってやろうと、
かわいそうなジャックにつっかかる。
そのときすばやく、すっと来たは、
マザー・グースのおばあさん、
杖でジャックをちょいと打ちゃ、
道化の*ハーレクインにはやがわり。
つづいて、おばあさんが杖あげて、
きれいなお嬢さんをちょいと打ちゃ、
すぐにその子もはやがわり、
それこそかわいい**コランバイン。
金の卵は海の中、
どさくさまぎれに放られる。
だけど、ジャックが飛び込んで、
またももとへと取り返す。
それで、雌のガチョウとったユダヤ人のやつ、
殺しちまえと息巻いた、
割いて、こいつを売り飛ばしゃ、
ポケットにたんまり金もうけ。
ジャックのお母さんは、それ見ると、
すぐにガチョウをひったくり、
そして、その背にうち乗って、
お月さまめがけて飛んでいった。
*ハーレクイン(道化師のこと)
**コランバイン(ハーレクインの恋人である踊り子のこと)道化|芝居の男役のことです。
** コランバイン。
これは女役のことです。
まざあ・ぐうす
こまどりのお葬式
「だァれがころした、こまどりのおすを」
「そォれはわたしよ」すずめがこういった。
「わたしの弓で、わたしの矢羽で、
わたしがころした、こまどりのおすを」
「だァれがみつけた、しんだのをみつけた」
「そォれはわたしよ」あおばえがそういった。
「わたしの眼々で、ちいさな眼々で、
わたしがみつけた、その死骸みつけた」
「だァれがとったぞ、その血をとったぞ」
「そォれはわたしよ」魚がそういった。
「わたしの皿に、ちいさな皿に、
わたしがとったよ、その血をとったよ」
「だアれがつくる、経帷子をつくる」
「そォれはわたしよ」かぶとむしがそういった。
「わたしの糸で、わたしの針で、
わたしがつくろ、経帷子をつくろ」
「だァれがしるす、戒名をしるす」
「そォれはわたしよ」ひばりがそういった。
「あかるいならば、くれないならば、
わたしがしるそ、戒名をしるそ」
「だァれがたつか、お葬式にたつか」
「そォれはわたしよ」おはとがそういった。
「葬ってやろよ、かわいそなものを、
わたしがたとうよ、お葬式にたとうよ」
「だァれがほるか、お墓の穴を」
「そォれはわたしよ」ふくろがそういった。
「わたしの鏝で、ちいさな鏝で、
わたしがほろよ、お墓の穴を」
「だァれがなるぞ、お坊さんになるぞ」
「そォれはわたしよ」白嘴がらすがそういった。
「経本もって、小本をもって、
わたしがなろぞ、お坊さんになろぞ」
「だァれがならす、お鐘をならす」
「そォれはわたしよ」おうしがこういった。
「わたしはひける、力がござる、
わたしがならそ、お鐘をならそ」
空の上からみんなの小鳥が、
ためいきついたりすすりなきしたり、
みんなみんなきいた、なりだす鐘を、
かわいそなこまどりのお葬式の鐘を。
お月夜
へっこら、ひょっこら、へっこらしょ。
ねこが胡弓ひいた、
めうしがお月さまとびこえた、
こいぬがそれみてわらいだす、
お皿がおさじをおっかけた。
へっこら、ひょっこら、へっこらしょ。
天竺ねずみのちびすけ
天竺ねずみのちびすけは、
ちびだからふとっちゃいなかった。
いつもあんよでおあるきで、
たべるときゃ断食ゃいたさない。
さてそこらからかけてでりゃ、
けっしてそこにはもういない。
きけば、かけてるそのときは、
どっちみちじっとしちゃいないそだ。
キイキイなくのは常々だ、めちゃくちゃあばれもたまたまだ。
それがさわいでわめくときゃ、けっしてだまっちゃいなかった。
たとえねこからおそわらなくとも、
はつかねずみがただのねずみでないのは御承知だ。
ところでたしかなうわさだが、
ある日、ひょっくり気がふれて、奇態な死に方した話。
とても勘のいい、金棒引きの人たちは、
きゃつめおっ死んだで、いきてるわけないぞといっている。
木のぼりのおさる
木のぼりのおさるさん、
おちたときゃ、そのときゃおちていた。
石の上のつんがらす、
飛ったときゃ、そこらにゃ影もない。
りんごかじりの婆おかみ、
二つたべたときゃ、一対たべていた。
水車場がよいの小荷駄うま、
てくるときゃ、じっとたっちゃいなかった。
拇指ちょんぎったうしころし、
けがしたそのときゃ、血をだした。
かけっこしてゆくお供さん、
はやがけするときゃ、かけあしだ。
おくつそそくるくつなおし、
つくろっちゃったそのときゃ、しあげてた。
ろうそくつくるがろうそく屋、
型からひっぱいだときゃ、手にもってた。
スペインさしていった艦隊、
かえったときゃ、またぞろやってきてた。
くるみ
ちいさな緑のお家がひとつ。
ちいさな緑のお家の中に、
ちいさな金茶のお家がひとつ。
ちいさな金茶のお家の中に、
ちいさな黄色いお家がひとつ。
ちいさな黄色いお家の中に、
ちいさな白いお家がひとつ。
ちいさな白いお家の中に、
ちいさな心がただひィとつ。
ボンベイのふとっちょ
ひとりふとっちょがボンベイにござった。
ある日、日なたでたばこのんでござった。
そこへ、ついときたはしぎという小鳥よ、
パイプひっさらってまたふいととんじまう。
そこでじれました、ボンベイのふとっちょ。
六ペンスの歌
うたえうたえ、六ペンスの歌を。
衣嚢にゃごほうびの麦がある。
二十四匹の黒つぐみ、
焙じこまれて、パイの中。
パイがはがれたそのときに、
すぐに小鳥がうたいだす。
もともと王さまにそなえます
きれいなお皿じゃ、そりゃないか。
『王さまは会計院で、
お金の御勘定。
おきさきゃお居間で、
パンと蜜をめしあがり。
女中さんはお庭で、
衣裳をせっせとほしている。そこへ小鳥が一羽とんでまいって、
つんとはじきました、女中さんのお鼻。
一時
いっちく、たっちく、おうやおや。
ねずみが時計をかけあがる。
柱時計がチーンとうつ。
ねずみがすたこらかけおりる。
いっちく、たっちく、おうやおや。
卵
お乳のように白い大理石の壁に、
絹のやわらかい薄い膜をはって、
すきとおった泉のなかに
金のりんごがみえますよ。
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