それはなんと、カーニバルのときにつかう小さな「枝のたば」でした。その枝のたばは、自分だって立派なお花の仲間なんだと思いこんでしまったらしく、自分からすすんで下へ飛びおりたのです!
そのたばも、ちゃーんとそれらしくかわいらしく束ねられていて、頭のほうには小さな「ろう人形」がちょこんとすわっていました。そのろう人形は、横に長ーいぼうしをかぶっていて、なんだかあの相談役の大人そっくりでした。
その枝のたばには、作りものの赤い足が三本もついていたものだから、お花さんたちのど真ん中にドスンと飛びこむと、勢いよく力強く足ぶみをしたのです。まあ、それはマズルカというダンスを踊ろうとしたからなんだけど、まわりのお花さんたちには、そんなふうにドタバタ踊ることはできませんでした。だって、お花さんたちのからだはとっても軽いから、足でどんどんなんて音を立てられるわけがないんだもんね。
するとどうでしょう! いきなりあの小さなろう人形が、たばの上でむくむくとでっかくなって背がのびていき、紙でできた花の上でぐるぐる回りながら、大きな声でがみがみと怒鳴り始めたのです。
「そんなことを、子どもにふきこみおって! たわけた作り話だ!」ってね。
そのろう人形は、ほんとうにあの、横に長いぼうしをかぶった相談役の人そっくりで、堅物で、顔色がすごく悪くて、おこりんぼうでした。
だけど、まわりのおしゃれな紙のお花が、そいつの細い足をヒュッと引っかけてあげるとね、そのおとなの相談役はまたシュルシュルとしぼんでいって、もとのちっちゃなろう人形に戻っちゃったんだよ。
いやあ、それがほんとうにおもしろくて! イーダちゃんは思わずくすっとふきだしちゃいそうになりました。
でも、枝のたばの方はダンスをやめようともせず、ずっと踊り続けていたものだから、相談役もいっしょにおどらなくちゃいけませんでした。大きくなったり背がのびたりしてみせたり、またおっきな黒いぼうしをかぶった顔色の悪いちっちゃなろう人形に戻ってみたり……相談役にしてみれば、どうしようもなくて大慌てです。
そこで、ほかのお花さんたちが、「まあまあ、どうかもう許してあげて」とお願いしてくれました。とくに、さっきまで人形のベッドでねていたお花さんたちが一生けんめい頼んでくれたので、やっとのことで、枝のたばもおとなしく踊るのをやめてくれたのです。
するとそのとき、お部屋のわきにある引き出しの中から、ドンドン、ドンドンと激しくたたく音がきこえてきました。
それをきいたイーダちゃんは、ハッと思い出しました。そうだ、あそこは、ソフィがお山のような小さなおもちゃたちといっしょに、すやすや眠っている場所だったんだ――!けむり人形がテーブルのふちまで走っていって、ぺたんとうつぶせになると、引き出しをほんのちょこっとあけたんだ。
とたんにソフィがぴょこんと起きあがって、周りを見てびっくりぎょうてん!
「これって、もしかしてダンスパーティなの!」って言って、「どうしてだれも、あたしに教えてくれなかったのよ!」
「わしとおどらんか?」って、けむり人形が言ったんだけど、
「ふぅん、けっこうなお相手だこと!」なんて言って、ソフィはそっぽを向いちゃった。
そのお人形は引き出しにすわったまま、「ひょっとしたらお花の一本でも、こっちにおどりのお願いをしにくるかな?」って考えたんだけど、どいつもこいつも来ないから、そのお人形は「えへん、えへん、えへん!」ってせきばらいをしたんだ。でも、それでもだれも来ない。
しかたなく、けむり人形はひとりきりでおどったんだけどね……うーん、なんだか見ていられないくらい変な踊りだった。
もうだれもソフィのほうを見てくれないものだから、そのお人形は自分で引き出しから床のほうへまっすぐ飛びおりたんだ。そうしたら、やっとみんながパッと顔を向けたんだよ!
お花さんたちがわらわらとお人形のまわりに集まってきて、「ケガはありませんでしたか?」ってたずねました。みんなすっごくやさしいね。なかでも、さっきまでお人形のベッドでねていたお花が、まっさきに声をかけてくれました。
お人形にケガはちっともなかったんだけど、お花さんたちはこう言ったんだ。「ありがとう、すごくここちいいベッドだったわ」って。そして、とてもよくしてくれたお礼にと、そのお人形の手をとると、ゆかの真ん中、月明かりがキラキラかがやくところへ連れて行って、いっしょにおどりました。ほかのお花さんたちは、ふたりを囲んで輪になってぐるぐるとまわったよ。
もう、ソフィはうれしくってたまらない! 「ずっと自分のベッドでねてくれてもいいわよ! ねどこが引き出しだって、ぜんぜん気にしないから!」って言いました。
でも、お花たちはこう答えたんだ。
「あなたにいっぱいおれいを言わなくちゃいけないけれど、ぼくら、そう長くは生きられないんだ! 朝になったら、ぼくらみんなかれてしまうんだよ。
だから、イーダちゃんに伝えてほしいんだ。ぼくらのおはかを庭に作ってほしいって。カナリヤ小屋のすぐそばだよ。そうすれば、ぼくらはまた土から生えてきて、次の夏までには、ずっと、もっときれいになれるから!」
「そんなのやだ! かれちゃダメ!」ってソフィは言って、お花さんにそっとキスをしました。
ちょうどそのとき、大きなお部屋のドアがバタンと開いて、おおぜいのかわいいお花たちが楽しそうにおどりながら入ってきたものだから、イーダちゃんはもう頭がごちゃごちゃになって、「いったいどこから来たんだろう?」ってびっくりしちゃった。でもきっと、みんな王さまのおしろの庭をぬけてやってきたお花なんだよ!
先頭には、すてきなバラが二本、並んで歩いていました。ふたりとも小さなかんむりをかぶっているから、どうやら王さまとおきさきさまみたい。そのあとには、なによりすてきなストックとクローバが続いて、両わきの人たちに「ごきげんよう」ってあいさつしたよ。
楽器を持っていたのは、大きなケシとボタンシャクヤクでした。エンドウのさやを笛のかわりルにふいていたものだから、ふたりとも顔じゅうがまっ赤になってがんばっていました。
青いイトシャジンとちっちゃな白のマツユキソウは、ゆれるたびにリンリンと音がして、まるでちいさなすずをたくさん持っているみたいだった。
それはもう、とびっきり楽しい音楽でね! ぞろぞろとほかのお花たちもくわわって、みんないっしょになって元気いっぱいにおどったんだ。青いスミレも、赤いヒナギクも、カモミールもスズランも、みんなみんなおどりました。
そしてお花さんはみんな、おたがいにうれしそうにキスをしたんだよ。かわいらしいったらありゃしないね!
パーティーの最後になって、お花さんはそれぞれ「おやすみなさい」を言って、イーダちゃんもしのび足で自分のベッドにもどりました。そして、こうして見てきたことぜんぶを、そのまま夢に見たんだ。
あくる朝、イーダちゃんが目を覚ますと、すぐベッドからとびおりて、かけ足で小さなテーブルのところへ行きました。だってお花さんがまだ元気にいるかどうか、どうしても見たかったからね。
コメント