初級翻訳・ガリバー旅行記 第11話

ガリバー旅行記

」

こゝまで彼の話を聞いていると、私はむしゃくしゃしてきたので、
「何だって、みんなは私を罪人にしようとするのか、私はそんなに……」
と言いかけました。
「まあ、黙って聞いていてください。」
と、彼は私を黙らせました。
「私はいつかあなたの御恩になったので、こんなことを打ち明けるのですが、もしかすると、そのために私まで罪になるかわかりません。
が、それも覚悟でお知らせするのです。
こゝに、その弾劾文の写しを手に入れていますから、今それを読みあげてみましょう。

人間山に対する弾劾文
第一条
カリン・デファー・プリューン陛下の御代に作られた法律によると、宮城の中で立小便をした者は、死刑にされることになっている。
それなのに、人間山は皇后の御殿が火事のとき、火を消すことを口実にして、不埒千万にも、小水で宮殿の火を消しとめた。
第二条
人間山はブレフスキュ国の艦隊を引っ張って持って戻ったが、その後、陛下は残りの敵も全部捕えて来いと命令された。
陛下はブレフスキュ国を征服して属国にしてしまう、お考えだった。
すると人間山は不忠にも、陛下のお考えに反対し、その命令に従わなかった。
罪のない人民の自由や生命は奪えません、と、こんなことを言うのであった。
第三条
ブレフスキュ国から講和の使節がやって来たとき、その使節は敵国の皇帝の使であることを知っていながら、人間山は、まるで叛逆者のように、これを助けたり慰めたりした。
第四条
人間山は近頃、ブレフスキュ国へ渡ろうとして航海の準備をしている。
陛下はたゞ、口先で、ちょっと許可されただけなのだ。
それをいゝことにして、彼は敵国の皇帝と会い、敵国を助けようと企んでいる。

このほかにもまだあるのですが、主なところを今読みあげてみたのです。
ところで、あなたの罪状について、この弾劾文をめぐって、何度も議論が行われたのですが、陛下は、あなたがこれまで立派な手柄をたてゝいられるので、まあ、大目にみて罪は軽くしてやれ、と言われるのです。
しかし、大蔵大臣と提督の二人は、夜中にあなたの家に火をつけて、焼き殺してしまった方がいゝ、と、ひどいことを言うのです。
それから、陸軍大将は、そのときには毒矢を持った二万の兵をひきいて、あなたの手や顔を攻撃する、と、こんなことを言うのです。
それからまた、あなたの味方の宮内大臣レルドレザルは、こんなことを言います。」殺すのはあまりにひどすぎるから、せめてあなたの両方の目をつぶすことにしたらどうだろうか、と、こんなことを陛下に申し上げたのです。
すると、これには議員たちがみな反対しました。
君は逆らう者の命を助けようとするのか、と、ボルゴラムは怒鳴りだしました。
皇后の御座所の火事を立小便で消すことのできるような男なら、いつ大水を起こして宮城を水浸しにしてしまうかもわからない。おまけに、敵艦隊を引っ張ってきたあの力では、いったん何か腹を立てて暴れだしたら大変なことになる、と、ボルゴラムは死刑を主張するのです。
大蔵大臣も、あんな男を養っていては、間もなく国が貧乏になってしまうと言って、やはり死刑を主張しました。
しかし、陛下はどこまでも、あなたを死刑にはしたくないお考えでした。
両方の目をつぶしただけでは刑が軽すぎるというのなら、食べ物を減らして、だんだんやせ衰えさせるといいでしょう。身体が半分以上も小さくなって死ねば、死骸から出るにおいだってそう恐ろしいものではないし、骸骨だけは記念物として残しておけます、と、宮内大臣は言いました。
そんなわけで、とにかくみんなの意見はまとまりましたが、この、あなたを餓死させる計画は、ごくごく秘密にされているのです。
あと三日すると、あなたの味方の大臣がここへ訪ねてくるでしょう。
そして、弾劾文を読んで聞かせ、それから、陛下のおかげであなたの罪は両目を失うだけですむことになった、と告げることになっています。
陛下は、あなたが喜んでこの刑に従うだろうと思っていらっしゃいます。
そこで外科医二十名が立ち会ううえで、あなたを地面に寝かせ、あなたの眼球に、鋭く尖った矢を何本も射込む手はずになっています。
私はただありのままをあなたにお知らせしたのですが、どうかそのつもりでいてください。
あまり長居をしていると人から疑われますから、これで失礼いたします。
」
そう言って、大官は帰っていきました。
あとに残された私は、どうしたらいいのだろうと、いろいろ悩みましたが、とうとう私は逃げ出すことに決めました。
三日が来る前に、私は宮内大臣に手紙を送り、明日の朝ブレフスキュ島へ出発するつもりだ、と伝えてやりました。
もう返事など待ってはいられません。
そのまま海岸の方へと歩いていきました。
そこで大きな軍艦を一隻つかまえ、綱を結びつけ、いかりを上げると、裸になって着物は軍艦に積み込みました。
それから、その船を引っ張って、歩いたり泳いだりしながら、ブレフスキュの港に着きました。
向こうでは私の来るのを待ちかねていたところです。
二人の案内者をつけてくれて、首都まで案内してくれました。
私は二人を両手に乗せて城の近くまでいきましたが、ここで、誰か大臣に知らせてきてくれないか、と頼みました。
しばらく待っていると、皇帝ご自身が私を出迎えになるということでした。
私は百ヤードばかり歩いていきました。
皇帝とその従者たちは馬からおりられました。
皇后は馬車からおりられました。
みんな、少しも私を怖がっている様子はありません。
私は地面に横になって、陛下の手にキスをしました。
それから、いつかの約束どおりリリパット皇帝の許しを得て、今このとおりブレフスキュ大帝にお目にかかりに来ました、私の力でできることなら何でもいたします、と、私はこう申し上げました。
私がブレフスキュ島へ来てから三日目のことでした。
島の北東の岸をぶらぶら歩いていってみると、沖の方にボートのようなものがひっくり返っているのが見えます。
さっそく靴を脱いで、二三百ヤード海の中を歩いていってみると、その物は潮に乗ってだんだん近づいてくるように見えます。
よく見ると、本物のボートです。
たぶん、これは嵐にあって本船から流されたのでしょう。
私はすぐ首都へ引き返して、皇帝にお願いし、二十隻の軍艦と三千人の水兵を借りてきました。
それから私は海に入って、ボートのところへ泳いでいきました。
水兵たちが軍艦から綱の端を投げてくれたので、それをボートの穴に結びつけ、もう一方の端は軍艦に結びつけました。
さらに私は泳ぎながらいろいろ骨を折って、九隻の軍艦にボートの綱を結びつけました。
ちょうど風向きもよかったので、私はボートを押し、水兵は引っ張り、こうしてとうとう海岸に来ました。
それから十日ばかりかかってオールをこしらえ、それでやっと、ブレフスキュの港へボートを漕いで入ったわけです。
私が港に着くと大変な人出で、なにしろあまりに大きな船なので、みんなすっかり仰天していました。
私は皇帝に向かい、
「天の助けでボートが手に入りました。
これに乗っていけば、私の故国へ帰れるところまで行けるでしょう。
つきましては、出発の許可をいただき、いろいろ準備することをお許しください。

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