ラッパ
新美南吉
おじいさんは、田舎でひとりぼっちで暮らしていました。
だんだんと耳が遠くなってきたので、都に住んでいる息子に、「耳が遠くなったから、よく聞こえる機械を買って送っておくれ」と手紙を出しました。
息子はいろいろと探しましたが、あまり良い機械がなかったので、ラッパを買って、「これを逆さまにして耳につけて、ラッパのお尻から聞きなさい」と言って送りました。
おじいさんは、そのラッパを喜んで使っていましたが、耳はどんどん遠くなって、とうとう聞こえなくなってしまいました。
それでもおじいさんは、「あのラッパでは聞こえなくなったから、もっとよく聞こえるものを送っておくれ」と、息子に手紙を出しました。
息子はいろいろと考えてから、また前と同じラッパを送って、「このラッパを耳につけると、わたしの声が聞こえますよ」と書き添えました。
おじいさんは、そのラッパを耳に当ててみました。
そして、「ああ、聞こえる、聞こえる。なつかしい息子の声が聞こえる」と言って喜びました。
けれどそれは、おじいさんの耳が聞いたのではありません。心が聞いたのです。
コメント