初級翻訳・ラツパ 第1話

ラツパ

ラッパ
新美南吉

 おじいさんは、田舎でひとりぼっちで暮らしていました。
 だんだんと耳が遠くなってきたので、都に住んでいる息子に、「耳が遠くなったから、よく聞こえる機械を買って送っておくれ」と手紙を出しました。
 息子はいろいろと探しましたが、あまり良い機械がなかったので、ラッパを買って、「これを逆さまにして耳につけて、ラッパのお尻から聞きなさい」と言って送りました。
 おじいさんは、そのラッパを喜んで使っていましたが、耳はどんどん遠くなって、とうとう聞こえなくなってしまいました。
 それでもおじいさんは、「あのラッパでは聞こえなくなったから、もっとよく聞こえるものを送っておくれ」と、息子に手紙を出しました。
 息子はいろいろと考えてから、また前と同じラッパを送って、「このラッパを耳につけると、わたしの声が聞こえますよ」と書き添えました。
 おじいさんは、そのラッパを耳に当ててみました。
 そして、「ああ、聞こえる、聞こえる。なつかしい息子の声が聞こえる」と言って喜びました。
 けれどそれは、おじいさんの耳が聞いたのではありません。心が聞いたのです。

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