初級翻訳・ラ・ベルとラ・ベート(美し姫と怪獣) 第1話

ラ・ベルとラ・ベート(美し姫と怪獣)

昔々、ある所に一人の商人が住んでいました。彼には三人の息子と三人の娘、合わせて六人の子どもがいました。
商人はお金よりも子どもたちのことを何よりも大切に思っており、みんなが賢く幸せに育つことだけをいつも願っていました。

三人の娘はどの子も美しかったのですが、一番下の妹は単にきれいという言葉では足りないほど、キラキラと輝くような美しさを持っていました。幼い頃から「ラ・ベル(美し姫)」と呼ばれていた彼女は、成長するにつれて、まさに「美人」という言葉そのもののような女性になりました。

ラ・ベルは顔が美しいだけでなく、心も素直で優しい女の子でした。ところが、二人の姉たちはあいにく意地悪でひねくれており、妹が「美しい、美しい」と褒められるのが面白くありませんでした。
姉たちは見栄っ張りでプライドが高く、自分たちを世界一の大金持ちだと思い込んでいました。彼女たちは他の商人たちを見下し、侯爵や伯爵といった貴族の屋敷に招かれて、舞踏会やお茶会に出かけることこそが最高の誇りだと思っていました。
そして、いつも家の中にいて、つつましくお父さんのお手伝いをしている妹のラ・ベルを、「あの子はただの田舎者だわ」と馬鹿にして笑っていました。

家がお金持ちだった頃、ラ・ベルに結婚を申し込んでくる人は後を絶ちませんでしたが、姉たちは自分たちより身分が高い相手でなければ見向きもしませんでした。一方のラ・ベルは、「私はまだ子どもですし、亡くなったお母さんの代わりに、しばらくはお父さんのお世話をしていたいのです」と言って、すべて断っていました。

ところが、人生というものはいつどう変わるか分かりません。あれほど大金持ちだった商人が、ある不運な出来事をきっかけに、一瞬にして財産をすべて失ってしまいました。残されたのは、田舎にある小さな家だけでした。

商人は三人の息子たちに、「それぞれ広い世間へ出て、自分の力で生きていきなさい」と言い聞かせました。二人の姉たちは、「私たちには町にチヤホヤしてくれる男友達がたくさんいるわ。いくら貧乏になっても、その人たちは絶対に見捨てないはずよ」と強気でした。
ところが、いざ困った状況になると、誰一人として近寄ってこようとはしませんでした。それどころか、これまでお金持ちであることを鼻にかけて高慢に振る舞っていた姉たちの落ちぶれた姿を見て、「いい気味だ」と笑う人たちばかりでした。

それとは対照的に、ラ・ベルのことはみんなが気の毒がり、「一文無しでもいいから、ぜひお嫁に来てほしい」という紳士たちが次々と現れました。しかしラ・ベルは、こんな時だからこそお父さんのそばを離れることはできないと思い、すべての申し込みを断りました。

こうして一家は、嫌でも田舎の小さな家に引っ越すことになりました。三人の息子たちは毎日外へ出て、わずかな土地を耕して農作業に精を出しました。
ラ・ベルは毎朝四時に起きて、家族全員の朝食を作りました。最初は誰も手伝ってくれる人がおらず、とても大変な仕事でしたが、慣れてしまえば何ともなくなりました。家事が一段落すると、彼女は本を読んだり、ハープシコードに似た古い楽器を弾いたり、糸車を回したりして過ごしました。

一方、二人の姉は生まれつきの怠け者でした。朝はお昼近くになってようやく起き出し、外に出る用事も遊びに行く場所もないので、一日中だらしなく寝転がって、ふくれっ面でぶつぶつと文句ばかり言っていました。
そして、ラ・ベルが楽しそうに働いているのを見て、「あの子は女中仕事しかできないのね」と軽蔑するように言うのでした。

そんな生活が一年ほど続いたある日のことです。町から「難破したと思われていた商人の持ち船が、荷物を山と積んだまま無事に港へ入ってきた」という知らせが届きました。
家族は大喜びです。中でも二人の姉は、明日にもこの嫌な田舎を離れて、町の大きな家へ帰れると言って大はしゃぎでした。
そして早速、「今日町へ行くなら、着物やアクセサリーを買ってきてちょうだい」と父親におねだりをしました。

「ラ・ベル、お前は何がほしいんだい?」とお父さんが聞くと、ラ・ベルは答えました。
「そうですね。せっかくですから、バラの花を一輪、お土産に買ってきてくださいな」「このあたりには、一本もバラの木がありませんから」と、娘は言いました。
べつにバラの花がどうしても欲しいわけではなかったのですが、姉たちがわいわい騒いでいる中で、自分だけが利口ぶって仲間外れになっていると思われたくなかったからです。

さて、意気揚々と町へ出かけた商人でしたが、いざ着いてみると、いろいろな面倒な裁判沙汰に巻き込まれてしまいました。結局、船の荷物はすべて取り上げられてしまい、商人は出かけた時よりもさらに貧乏になって、またとぼとぼと田舎の家へ帰るほかありませんでした。

あいにくの季節は冬でした。家まであと十五里というところまで来た時、日はすっかり暮れてしまい、道は雪で埋め尽くされてしまいました。
おまけに、大きな森を一つ通り抜けなければなりません。
寒さは厳しいし、お腹は空くし、商人は「もうこのままここで、行き倒れになってしまうのではないか」と思いました。

そんな時、ふと長い並木道のずっと向こうに、ぽつんと一つ、明かりが見えました。
商人はほっとしながら、乗っていた馬の首を並木道のほうへ向け、道の突き当たりまで行ってみました。すると驚いたことに、そこには素晴らしく立派な御殿が建っていました。
しかも、窓からは赤々と明かりが漏れているのに、中には人の気配が全くありません。
戸を叩いてみても、庭に回ってみても、やはりしんかんとして静まり返っていました。
その間に、乗ってきた馬だけが、馬小屋の開いていた戸の隙間から入り込み、飼い葉桶の干し草やカラス麦をがつがつと食べていました。

商人は馬をそのままにして、自分だけそっと中へ入ってみましたが、やはり誰も出てくるものも、声をかけるものもありません。
それなのに、炉の火はかんかんと燃えていて、テーブルには一人前のごちそうとお酒の準備が整えられていました。
商人は肌の下まで雪がしみ込んで凍えていたので、構わずに炉の火で体を乾かしながら、独り言のように言いました。
「ごめんください。いずれ出ておいでになることと思いますが、このお家のご主人さまか、お召使いの方、どうか火にあたらせてください」

こう言ってしばらく待っていましたが、誰も出てきません。時計は十一時を打ちました。
そのうち、お腹が空いて意識が遠くなりそうだったので、テーブルにあった若鶏をひとかけら、おっかなびっくり食べました。ブドウ酒も四、五杯飲みました。
これで少しお腹が満たされると元気も出てきて、ゆっくりと周囲を見回しました。
やがて十二時を打った時、商人は開いている戸から広間を抜けて出て、いくつもいくつも素晴らしい部屋を通り、最後に寝心地のよさそうなベッドが置いてある部屋に着きました。
それを見ると、もうとてもくたびれきっていたので、着物を脱ぐなりごそごそとベッドの中にもぐり込みました。

翌朝十時を打つまで、商人は目を覚ましませんでした。

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