初級翻訳・人蔘の精 第2話

人蔘の精

そこへ、弓を持った怪物が岩の陰からしのそと出てきました。
張は、もう怪物の本当の心根が分かっていたので、すっかり安心していました。
怪物は張を縛っていたツルをほどいて、抱き下ろしました。
抱き下ろしながら、その毛むくじゃらの手で張の頭を二、三回優しくなでました。
そして張を地べたにおろした怪物は、ツルを使って三匹の虎の手足を縛り、それを自分の背中にしっかりと括りつけると、また片手に張を乗せて歩きだしました。
洞穴へ帰り着いたころには、すっかりあたりが明るくなっていました。
怪物はまた火をたいて、張のために肉を美味しくあぶってくれました。自分はというと、生の肉をむしゃむしゃと食べていました。
張は、怪物といっしょに食事をしながらこう考えました。
「怪物は自分をエサにして獣を捕まえるつもりなのだから、すぐに殺されるようなことはない。そのうちに自分が逃げ出せるような隙がきっとできるはずだ。それまではじっとしていて、隙ができたらそのときに逃げよう」
張はもうあせらずに、そのチャンスがやってくるのをのんびり待とうと心に決めました。
翌日の夜明けごろになると、怪物はまた張を連れて出かけていき、獣を捕らえました。
一月(ひとつき)あまりも張は怪物のそばにいましたが、なかなか逃げ出す隙がありませんでした。
しかし張は、家に残してきたお父さんのことが気になって気になって仕方がありませんでした。
ある日、彼はついに怪物の前へ歩み出ると、泣きながら山の下の方を指さして、何度も何度もペコペコとお辞儀を続けました。
怪物はじっと張の様子を見ていましたが、何を言いたいのか分かったようで、うなずきました。
やがて怪物はのっそりと体を起こすと、張の頭をなで、それからひょいと抱き上げて山を下り始めました。
そして日が暮れてから、ついにふもとへと着きました。
ふもとへ着くと怪物は張をおろして、自分の胸のあたりの毛をごっそりと一掴み抜き取ると、それを張の手にぎゅっと握らせ、そのままゆっくりと山の上へ帰っていきました。
張はその晩遅く、ようやく自分の家へたどり着きました。
そして、手に握りしめていたものをパッと開いて見てみると、そこにあったのは、十本ほどの、これまで見たこともないような、自然に育ったものすごい立派な人蔘だったのです。

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