さらに、それぞれの野菜にぴったりの肥料がたっぷりと与えられ、植物ホルモンが巧みに使われているうえに、成長を促す特殊な電波までかけられているので、野菜のできばえは素晴らしく、育つスピードも驚くほど早いのです。
三根夫は別の場所で、果物畑も目にしました。果物たちもきちんと箱に入って並べられており、木の細さに比べて、驚くほどたくさんの見事な実がなっていました。これも人工的な特殊栽培法のおかげなのです。
同じ階には、広々とした牧場や養魚場もありました。どちらも三根夫をひどく驚かせました。なぜなら、牧場には牛や豚の姿はなく、三根夫が初めて見る不思議な生き物が飼われていたからです。養魚場で見た魚も地球ではあまり見かけない種類ばかりで、何だか不思議な気持ちになりました。
そうした細かいことまで全て書き記しているときりがないので、特に重要なことだけを述べておきましょう。ハイロが三根夫をさらにもう一階下へ連れて行くとき、彼は耳打ちしました。
「三根夫さん。ここからは気をつけてくださいよ。この国の心臓部にあたる、とても重要で秘密の場所ですからね。兵器工場なんです」
兵器工場があるというのです。やはりそうだったのか。怪星ガンも兵器を作り、保有しているのか。どんな兵器を作っているのだろうと、三根夫の好奇心はかき立てられました。
ハイロに案内されて下りてみると、工場のあまりの巨大さに驚き、思わず「あッ、これは……」と叫びそうになって、あわてて口を閉じました。どうしてこれほどの大工場があるのかと、あきれるばかりです。働いているガン人の数も驚くほど多く、くるくると轟音を立てて回る無数の工作機械が、次々と兵器を造り出していくスピードときたら、目が回るほどでした。これを見ても、ガン人は地球人よりも感覚が鋭く、能力も優れていることがよくわかります。
しかし、そこで造られている兵器類は、一体どうやって使うものなのか、さっぱり見当がつかないものがたくさんありました。三根夫は一つ一つハイロに尋ねたかったのですが、あいにく周囲にはたくさんのガン人の職工がいたので、口を開くことができませんでした。なぜなら、三根夫は頭からガン人の作り物をかぶっており、自分が口を開いても作り物のほうは口を動かさないので、すぐに怪しまれてしまうからです。
その代わり、三根夫は例の写真機と録音機を仕込んだ四角い箱を大いに活用しました。生産されている兵器を写真に収め、職工たちが交わしている言葉を録音したのです。この広い兵器工場を見終えたとき、三根夫はすっかり疲れ切ってしまいました。そこで「動く道路」のそばにしゃがみ込み、ハイロにしばらく休ませてくれと頼みました。
ハイロは笑って、「それでは、これを食べなさい」と、青い飴玉のようなものを二つ、三根夫の手のひらにのせてくれました。
「これは何だい?」
「疲れが一瞬で吹き飛ぶ薬ですよ」
「それはありがたい。でも、こんな作り物を頭からすっぽりかぶっているから、食べられないよ。どうしたらいいかな」
「ははあン。それなら、わしの体の陰でその作り物を脱いで、大急ぎで食べなさい」
「なるほど。じゃあ頼むよ」
三根夫はハイロの陰でガン人のお面を脱ぎました。ああ、せいせいした。青い玉を二つ口の中へ放り込み、ついでにと思って持参したパンをむしゃむしゃと食べました。それから水をがぶがぶと飲みます。そして、目を白黒させながら大急ぎで、お面を元通りにすっぽりと頭からかぶりました。
「三根夫さん、どうです? 体が軽くなったでしょう」
「ああ、本当だ。さっきの疲れがどこかへ行ってしまった。よく効く薬だね」
三根夫は元気を取り戻し、ハイロについて名所見物を続けました。
「もう一階下にある場所が、この国で一番重要なところなんです。ちょっと見るだけで我慢してくださいね。監視の目がたくさんあって、ひどく光っていますから」
「そこは何をするところなんだい、この国の」
「動力室です。つまり、この国を動かしているあらゆるエネルギーを生み出す場所ですよ。操縦室もあります」
なるほど、これは重要な場所だ。二人は一階下へ降りましたが、間違えてこの階へ降りてしまったようなそぶりを見せ、五分ほどでそこを引き上げて上の階へ戻りました。しかし、三根夫はその短い時間のうちに、しっかりと見ていたのです。そこには、巨大なエンジンがずらりと並んで、ごうごうと音を立てて回っていました。さらに一段高い場所には、透明なガラス張りのような台があり、ものものしい作業着に身を包んだ二十人ほどのガン人たちが、複雑な機械の山の中でそれぞれの持ち場につき、しきりに手を動かしたり、体を起こしたりして機械の調整をしていました。
そこが、怪星ガンの操縦室であることに間違いありませんでした。
とにかく、ものすごい動力室でした。
科学と技術の粋を集めた大殿堂とでも呼びたくなるような、壮大な光景でした。
「さっき見た大きなエンジンは、何をエネルギー源にしているんだい?」三根夫はハイロに尋ねました。
「今のところは旧式ですが、原子力エンジンを使っています。ですが、そのうちに、もっと効率のよいものに改造する計画があるそうですよ」
「へえ、原子力エンジンが旧式だというのかい?」
「あれは消極的で効率が悪いですし、巨大な装置のわりに動力があまり出ないと言われていますからね」
「そうかなあ。原子力エンジンといえば、すばらしい動力を出すものだがね」
「この国の技術者たちは、循環性の強力なエンジンを設計しようとしているんです。つまり、出したエネルギーをまた元へ戻して再利用する仕組みですよ。そうなれば、今までのようにおいそれと原料を使い捨てにするやり方は損だ、と言っているんです」
ハイロは、エンジンの仕組みについても相当な知識を持っているようでした。
「ハイロ君。この国は宇宙の中を突き進んでいるけれど、その力はやっぱりあの動力室から出ているのかい?」
「そうですとも。この国は、恒星や惑星などと違って、我々の手で作ったものですからね。宇宙を旅するには、もちろん動力が必要です。ですから、あの動力室は、この国にとって非常に大切なんです」
動力室が極めて重要であることは、よく分かりました。
怪星ガンの大きさから考えて、これほど巨大な物体が宇宙空間を高速で飛び続けるには、毎秒ものすごい動力を生み出さなければならないはずです。
地球人の頭脳と科学力では、とても真似できないことでしょう。
三根夫は、怪星ガン人の知能の深さとスケールの大きさに、改めて驚かされました。
(このようなガン人に打ち勝って、我々テッド隊員がうまくこの怪星ガンから脱出することなんて、果たしてできるのだろうか……)
それを考えると、三根夫はひどく気がめいってきました。
問題の天蓋
三根夫が変な顔をしてふさぎ込んでしまったので、ハイロは心配して声をかけました。
「誰でも動力室を見ると、気が重くなるものです。それは、『もし動力室が壊れたら、我々はどうなってしまうんだろう』という不安が誰の心にも起こるからです。まあ、心配しないほうがいいですよ。この国には専門家がたくさんいるんですから、動力室のことは彼らに任せておけばいいんです。
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