初級翻訳・海底大陸 第11話

海底大陸

【Z光線と海底超人】

長良川博士の無線連絡は、さらに続きました。
「少し難しい話になってしまいましたが、とても面白い話ですから、もっとよく聞いてくださいね」
と博士は言ってから、こう続けました。
「そのコペルニクス山が崩れる様子を、私は自分のヨットに乗って地球をぐるりと一周しながら、あちこちで観測してみたのです。
すると驚いたことに、大西洋から月に向かって、電波と同じくらいのスピードで謎の放射線がビューンと発射されていることが分かりました。その光線のせいで、月の山が削られて崩れていたことが証明できたのです。分かっていただけますか?」
「いやあ、なんと言っていいか、本当にびっくり仰天するようなお話ですね。それで、そのあとはどうなったのですか?」
「それから私は、大西洋にピタリと狙いを定めて、パリ大学から発射する電波の力も借りながら、研究を続けてみました。すると、さっき言った謎の放射線――これを仮に『Z線』と呼ぶことにしましょう――そのZ線が発射されている場所を、海の地図の上でなんと15か所も見つけたのです。ところが、その15か所の発射場所が、実はとんでもなく恐ろしい事実を示していたのです」
「恐ろしい事実ですって? それは一体何なのですか。聞くだけでゾクゾクしてきました」
「身の毛もよだつような、大発見なのです。
いいですか。
その15か所の発射場所を順番に線で結んでいくと、大西洋のど真ん中に、ある不思議な形が浮かび上がってくるのです。その形というのが、とんでもないものだったのですよ」
「ああ、博士。あなたもしや、大昔の物語に伝わる、あの恐ろしい伝説を私たちに信じ込ませようとしているのではないでしょうね?」
「エバン船長。私は真実をお伝えするためなら、あなたを驚かせてしまうことも仕方のないことだと思っています。きっと今、あなたの頭には、今から9000年前に大地震が起こって大西洋の波の下に沈んでしまったという、あの『アトランティス大陸』のことが浮かんでいるのでしょう。そうです、あのアトランティス大陸です! 9000年前の超ハイテク大文明! 歴史のあるエジプトやギリシャ、中国だって、アトランティス大陸の素晴らしい文明の前には、足元にも及ばなかったと言われている、あの伝説の大陸ですよ!」
と、博士の声はブルブルと震えを帯びていきました。
「今から1時間ほど前、私はこのパリ大学の研究室で、私が見つけた15か所のZ線発射場所を海の地図の上で線でつないでみたのです。すると、なんということでしょう! その形は、あの伝説に残されているアトランティス大陸の形と、ぴったり重なったのです! ああ、私たち科学者はいつも冷静でいなければなりません。しかし、こんな恐ろしい秘密を突きつけられて、どうして震えずにいられるでしょうか!」
「……」
エバン船長の顔は、みるみる青ざめていきました。海の底に沈んだアトランティス大陸の幽霊が、今まさに、自分たちの乗るルゾン号の真下でうごめいているかもしれないのです。
「これは間違いありません、信じてよい事実なのです。
エバン船長。
アトランティス大陸が沈んだあたりの海の底には、私たち人類がまったく知らなかった、ある生き物が暮らしているのです。
それがどんな姿をした生き物なのか、私にもまだ分かりません。
しかし、遠い月の山をボロボロに崩してしまうほどの科学力を持っているのですから、私たち人間よりもはるかに頭の良い、進んだ生き物であることは間違いありません。
あの謎に包まれたクイーン・メリー号の行方不明事件だって、このZ線を放つ生き物――これを『海底超人族』と呼ぶことにしましょう――その海底超人族のしわざだと考えれば、すべての謎のつじつまが合うではありませんか!
船長、あなたの船はとにかく大警戒をしてください。一刻も早くその場所を離れて、安全な港へ引き返すのが一番です!」
博士は心配そうに親切なアドバイスを伝えて、無線電話を切りました。

【笑うスミス警部】

フランスの船「ルゾン号」のえらい船員たちは、長良川博士とエバン船長が交わしている無線電話のやり取りを、スピーカーから流して全員で聞いていました。
話が進んでいくにつれて、まるで約束でもしたかのように、全員の顔からみるみる血の気が引いて真っ白になっていきました。なんという偉大な長良川博士の発見であろう。
博士によって名づけられた海底超人族が、このあたりの海面から、クイーン・メリー号を奪ったとは、なんという驚くべき出来事であろうか。
船員たちは、船の縁から下をのぞきこみ、どす黒い海面を気味悪そうに見つめた。
ああ、この下に自分たちの方を、じっとうかがっている何千何万もの怪物の目玉が光っているのだ。

「あははは!」
突然、甲板の上で大声で笑い出した者がいた。
誰であろうか、無遠慮な人間だとその方を見ると、それは他の誰でもない、ロンドンの警視庁からメリー号の捜査のために派遣されているスミス警部だった。
彼はなおも「からから」と笑い続けながら、こう言った。
「博士の力も偉大なものだ。こうしてルゾン号にたくさんの信者を作ってしまったからなあ。あははは!」

さっきからこの様子をじっと見ていた三千夫少年は、スミス警部の前に進み出て言った。
「スミスのおじさん。長良川博士のことをそんなに笑うなんて失礼じゃありませんか」
「なあに、坊や。おまえも聞いたろうが、世の中には常識というものがあるんだよ」
「でも博士は有名な学者です。でたらめを言うはずがないじゃありませんか」
「ほほう。君にもやっぱり病気がうつったらしいね。9000年も前に海底に大陸が沈んでしまったのだから、そのときに生きていた人間だって、馬だって牛だって、みんな溺れ死んで全部死に絶えたに決まっているじゃないか。博士にはそんな常識的な判断さえつかないんだ。気の毒を通り越しておかしいじゃないか」
「じゃあ、おじさんは、ぼくらのクイーン・メリー号が行方不明になって、今どこでどうしていると言うんですか?」
「海賊船に捕らえられているんだよ。ほら、さっき本船にスペインの海賊が使ったという信号縄を投げた『鉄のクラゲ』なんてやつがいるだろう。あれがメリー号を盗んだ一味に違いない。今にそれを英国海軍がはっきりさせてくれるに違いないさ」

スミス警部は、さっき言ったのと同じ言葉を繰り返した。
果たして長良川博士が気が変なのであろうか。それとも、スミス警部が頑固すぎるのであろうか。
腕組みをして考え込んでいるエバン船長は、何も言わなかった。

【洋上の暗雲】

北西の空から、海を圧するような激しい爆音が聞こえてきた。
「あっ、来た、来た」
一番早くそれを聞きつけて甲板に飛び上がったのは、スミス警部だった。
爆音は刻一刻と大きさを増し、やがて霧のような雲の間から飛行機が現れた。
一機、二機、三機……。数えてみると全部で12機からなる偵察および爆撃の飛行隊であった。
ルゾン号の近くに来るにしたがって、翼に染め出された蛇の目のマークがはっきりと見えてきた。
英国海軍に属する空軍の出動だ。司令であるラスキン大尉が率いる、英国の精鋭機である。

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