またあいつと同じ形のいやつがここにいるんじゃないかって思ったんです」
「ふむ、ふむ……。
それはなかなか、いいところに気がついたね。
それで……?」
「それで、穴の中を一生懸命のぞいて、よく見てみたんですけど……ちがいました」
「ちがったのかい?」
「はい、たしかにちがいました。
火星のボートに乗っていたあいつは、ぼくといっしょに組み打ちしたことがあるからよく知っていますが、あいつは体がものすごく硬いやつだったんです!」まるで、鉄の管のようにガチガチにかたい体を持っていたんだ。
それから、大きさだって、あの怪物よりもずっと大きなやつだったよ」
「ふうむ、そうかねえ」
先生は、首をかしげました。
新田先生と千二少年は、どうしてもあの地底の怪物の正体をつきとめたいという強い思いから、穴の中へ下りていくための道を必死に探しました。
ところが、その道がどこにあるのか、いくら探してもなかなか見つかりません。
そんなふうにあたふたと迷っているうちに、ふたりはとうとう、かなりの時間を費やしてしまったのです。
もちろん、新田先生は、蟻田博士がそろそろ戻ってくるだろうから、早くこの地下室から引き上げなければならないと考えていました。しかし、ふと気がついてみると、もうのんびりグズグズしていられないほど、たくさんの時間が過ぎ去っていたのでした。
「千二君。
もう、ここから引き上げよう。
ぐずぐずしていて、蟻田先生に見つかったら、たいへんなことになってしまうから……」
「ええ、わかりました。
でも、なんだかすごく残念ですねえ。
もっとあの怪物をじっくり見たかったのですが」
「仕方がない。
それはまた次の機会にしよう」
ふたりは、ふたたび例の狭い階段の下へと戻ってきました。
そして、千二少年が先に立ち、先生がその後をついて、その曲がりくねった階段をのぼっていきました。
「おやっ」
先頭に立って階段をのぼっていた千二が、とつぜん声をあげました。
「どうしたんだい、千二君」
「先生、なんだかとてもへんなんです」
「何が、へんかね」
「だってみんな、階段をのぼりきったすぐ上が、天井でふさがれているんです」
「天井でふさがっているって、それはどういう意味かね。
この階段の上には、さっき僕たちがはいってきた床の割れ目があるはずなんだがねえ」
「それが、ないのですよ」
「なんだってっ」
先生はびっくりして、懐中電灯の光を上へと向けました。
なるほど、これはおかしい。
階段の出口は、いつの間にかすっかり閉ざされていたのです。
23 国際放送
日本時間で言えば、その日の真夜中のことでした。ロンドンとベルリンの二つの都市から、同時に、とてつもなく驚くべき放送が流されたのです。
ロンドンでは、当時の王立天文学会長であるリーズ卿がマイクの前に立ち、一方のベルリンでは、国防省天文気象局長のフンク博士がマイクの前に立ちました。
この二人の天文学における大変な権威(けんい)ある学者は、いったい何を語ったのでしょうか。
ふしぎなことに、二人が話した内容は、ハンコで押したようにまったく同じでした。
違っていたのは、
「わが英国民諸君、および全世界の人類諸君よ!」
というリーズ卿の呼びかけの言葉と、
「わがドイツ民族諸子、および全世界の人類諸君よ!」
というフンク博士の呼びかけの言葉、それだけだったのです。
「ああ、諸君。
本日ここに、諸君を心底から驚かせるようなニュースを発表しなければならなくなったことを、私は深く悲しむものである。
諸君よ、諸君が今まさに足の下で踏みしめているこの地球は、遠からずして、粉々に崩壊してしまうだろう。
したがって、我々人類にとって、とてつもなく大きな危機が今まさに迫っているということを、何よりもまず、はっきりと知っていただきたい」
こう言うと、ここで二人の講演者はまるで事前に打ち合わせたかのように、しばし言葉を止めました。
「なぜ、我々の地球が崩壊しなければならないのか、その理由を語ろう。
我々の太陽系には、ものすごい猛スピードを持ったモロー彗星(すいせい)が入り込んできているのだ。
我々が本日、念入りに計算を行った結果、我々の地球が、このモロー彗星と正面衝突することをどうしても避けられないという、本当に悲しい結論に達した。
我々はただちに、どうすればこの危機を乗り越えられるかという対策の研究をはじめたが、いったいどのような有効な被害を防ぐ方法が見つかるのか、それは神のみぞ知るところである。
ちなみに、モロー彗星との衝突は、来る四月の初め頃にやってくる」
講演者の声は、ふるえていました。
ロンドンとベルリンからの驚くべきニュース放送は、まだまだ続きました。
「我々は、近くこの対策について国際会議を開くつもりであり、すでにそのための準備を始めている。
八十億年というめくるめく輝かしい歴史の上に立っている我々地球人類は、今こそ持てる限りの知恵をしぼりきって、やがてやってくる大悲劇に備えなければならない!」
マイクの前の講演者は、ここで一段と声をはりあげました。
「我々は、決して悲しんでばかりいてはならないのだ。
このような大変な事態の中では、何かすばらしいアイデアが飛び出さないとも限らない。
そうして、その大悲劇の被害を少しでも和らげることができれば、たとえ地球が崩壊したとしても、運のいい何人かの人たちは、未来の世界に生き残ることができるかもしれない。
我々の行く手は、決して完全に真っ暗闇というわけではないと私は信じている。だから、この放送を聞いてくれた方々は、大いに頭を働かせて、何か良い考えが思いついたら、ぜひ私のところへ知らせてほしい。
あなたが教えてくれた避難のためのアイデアは、我々の会議に持ち寄り、しっかりと研究させてもらうつもりだ」
このようにして、広く一般の人々から、これから起こる災難を避けるための方法を募り、最後には、
「わが愛する地球のすべての人間たちよ。
どうか、最後まで元気を失わないでくれ。
そして、人類の恥になるような行動だけは絶対にとらないように」
そう言って、言葉を結んだのでした。
それは、本当に信じられないほど、驚くべきニュースだったのです。一般の人々にとっては、まさに寝耳に水のような、ものすごい大ニュースでした。
地球が、もうすぐこなごなに壊れてしまうというのです!
モロー彗星という名前の星が、いま私たちが住んでいる地球にドーンとぶつかるというのです!
大宇宙でのその大衝突は、なんと来る四月に起こるというお話でした!
この放送を聞いた人たちは、はじめはとても信じられませんでした。
これはラジオドラマの一こまなのではないかと、何度も何度も疑ってみたのですが、不幸なことに、それがラジオドラマなどではなく本当のことなのだと、だんだんはっきり分かってきたのです。
ロンドンとベルリンから放送された、この地球が壊れてしまうという警告の講演は、もちろん地球の隅々にまであっという間に届きました。
その国際放送は、すぐに録音され、それぞれの国の言葉に翻訳されて、少しの時間も置かずにまたすぐに放送し直されたのです。
新聞社は、びっくりするほどのすばやい手ぎわで、このことを知らせる号外を出しました。
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