僕は代理の役目が終わったので、失礼して勉強部屋へと引き下がりました。
その翌々日、絹子さんはお父さんと一緒に帰郷の途につきました。
その前日に四谷へと往復したことがあったのは、言うまでもありません。
僕は郁子と敏子を連れて東京駅へ見送りに行きました。
芳夫さんも来ていました。
「今度お出になるときは函迫(はこざこ)ね」
と敏子が車の窓からこっそり囁きました。
敏子にとって函迫は理想の場所なのです。
帰りは途中まで一緒だからということで、芳夫さんも同じ電車に乗り込み、
「源太郎君、もう数学はあれで十分だから、これからは暗記ものに全力を注ぎたまえ」
と忠告してくれました。
こうして僕は家庭教師の手を離れ、一心不乱に勉強に打ち込むことになったのです。
合格するかどうかは時の運、くよくよ考えても仕方がない。
人事を尽くして天命を待つのみだ。
初級翻訳・親鳥子鳥 第42話
佐々木 邦
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