初級翻訳・少年 第7話

少年

「やーい、お母さんって泣いてやがる!」
保吉は次第に遠ざかる彼らの声を憎みながら、足元に舞い降りた無数の鳩にも目を向けず、長い間、すすり泣きをやめることができませんでした。

保吉はそれ以来、この「お母さん」という言葉は、すべて川島くんがでっち上げたウソだと信じ込んでいました。
ところが、ちょうど三年前のこと。上海に上陸した直後、東京から持ち越していたインフルエンザのせいで、ある病院に入院することになりました。
熱は入院してからもなかなか下がりません。
彼は白いベッドの上で、ぼんやりとした目で、モンゴルの春を運んでくる黄砂の凄まじさを眺めたりしていました。
するとある蒸し暑い午後、小説を読んでいた看護師さんが、突然椅子から立ち上がってベッドのそばへ歩み寄り、不思議そうな顔で彼の顔を覗き込みました。
「あら、お目覚めになりましたか?」
「どうして?」
「だって、今『お母さん』っておっしゃったじゃありませんか?」
保吉はこの言葉を聞くが早いか、あの回向院の境内を思い出しました。
川島くんの言葉も、もしかしたら……本当のことだったのかもしれません。

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