初級翻訳・小公女 第13話

小公女

あの子だって、私たちと同じ小さい女の子なのですもの」
「まあ、セーラさん。ベッキーは下女ですよ。下女なんて……あなた方のようなお嬢さんとは身分が違います」

ミンチン先生は、今までに一度も、ベッキーをセーラたちと比べて考えてみたことはありませんでした。先生の考えに従えば、小使いの娘などというものは、石炭を運んだり、火を起こしたりする機械でしかなかったのでした。

「でも私、ベッキーだって私と同じ女の子だと思います。今日は私のお誕生日ですから、私のお願いをかなえて、あの子を喜ばせてやってくれませんか」
「じゃあ、今日は特別に許してあげましょう。レベカ、お前セーラさんにお礼を言いなさい」

この話の間、ベッキーは部屋の片隅でしりごみしながら前掛けの端をいじくっていましたが、ミンチン先生にそう言われると、ひょこひょこと出てきてお辞儀をしました。彼女は思うようにお礼の言葉も言えませんでした。

「ほんとに、どうもありがとうございます、お嬢様。もううれしくって、私はお人形が見たくてたまらなかったの。ありがとうございます。それから、先生、ありがとうございます」
「あっちの隅に立っていなさい」ミンチン先生は出口の方を指して言いました。「あんまり皆さんのそばに寄ってはいけないよ」

ベッキーはにやにや笑いながらその隅へ退きました。どんな隅にでも居残ることを許されたのは、台所で胸をわくわくさせて待っているより、どんなにいいことかわかりませんでした。

ミンチン先生はやがて一つ咳払いをして、こう言いました。
「皆さんにちょっと申し上げておきたいことがあります。ご存じの通り、セーラさんは今日、十一歳になられました」
「ひいきのセーラ嬢だわ」と、ラヴィニアがそっとささやきました。
「あなたがたの中にも、もう十一歳になられた方が五、六人はいるでしょう。が、セーラさんのお誕生日は、それらの方々のお誕生日とは少し意味が違います。というのは、セーラさんはもう少し大きくなると、非常な財産を相続なさるからです。その時が来たら、セーラさんは世の中のためになるように、そのお金を使わなければならないと思います」
「ダイヤモンド鉱山のことか……」」とジェッシイは小声で言って、忍び笑いをしました。
セーラは先生の言っていることを聞いていたわけではありませんでしたが、青鼠色の瞳でじっと先生を見つめていると、何となく心がざわつくのを感じました。
先生がお金のことを話していると知ると、私はあの先生を好きになれたためしがない、というような気持ちになりました。
子供のくせに大人を憎むなんて、生意気なことだとは分かっていましたが。

ミンチン先生は訓話を続けました。
「クルー大尉がセーラさんをインドから連れてきて、私に預けた時、大尉は冗談めかしてこうおっしゃいました。『先生、私はこの娘が近い将来に大変な大金持ちになると思うと心配です』と。そこで、私は大尉にこうお答え申し上げたのです。『私の教育は、お嬢様の財産の飾りとなるようなものでなければなりません』と。今、セーラさんは学校中で一番よくできる生徒さんです。セーラさんのフランス語や舞踏は、学校の誇りと申さねばなりません。それにセーラさんのお行儀は、『プリンセス・セーラ』と呼ぶにふさわしいほど非の打ちどころがありません。セーラさんは今日、皆さんに対する愛情のしるしとして、このお茶の会を開くことになさったのです。皆さんはセーラさんの物惜しみしない気持ちを、きっとうれしくお思いになることと存じます。そのしるしに皆さん、大きな声で『セーラさん、ありがとう』とおっしゃってください」

皆は、いつかセーラが初めて来た時のように、いっせいに立ち上がって、「セーラさん、ありがとう」と言いました。
ロッティなどは、言いながら高く飛び上がったほどでした。
セーラは恥ずかしそうにもじもじしていましたが、やがて裾をつまんで優雅に礼をしました。
「皆さん、ようこそお越しくださいました」
「セーラさん、よくできました」とミンチン先生は褒めました。
「まるで宮様が人民から『万歳』を浴びせかけられた時とそっくりです。ラヴィニアさん、今あなたは鼾(いびき)のような声を立てましたね。セーラさんが羨ましいのなら、もう少し上品にその気持ちを表したらどうでしょう。さあ、皆さんは何でも好きなことをしてお遊びなさい」

先生の背後で扉が閉まるやいなや、少女たちはまるで呪文を解かれたように椅子から飛び出し、箱の周りに駆け寄りました。
セーラもうれしそうに、箱の一つを覗きました。
「これは、きっと本よ」
すると、アーミンガードは言いました。
「あなたのパパも、お誕生日に本をくださるの? 私のパパとちっとも違わないのね。そんなもの開けるのはおよしなさいよ」
「でも、私は本が大好きなのよ」

『最後の人形』は実に見事なものでした。
少女たちはそれを見ると、声を上げ、息もつまるほど喜びました。
「ロッティと大して違わないくらいね」
そう言われてロッティは手を叩き、笑いこけながら踊り回りました。
「まるでお芝居にでも行くように盛装しているのね」と、ラヴィニアまで言いました。
「外套(コート)には貂(てん)の毛皮がついているわ」
「あら、オペラグラスまで持っているわよ」とアーミンガードが前へ出てきました。
「トランクもあるわ。開けてみましょうよ」

セーラは床に座って、トランクの鍵を外しました。
棚が一つ外されるごとに、いろいろな珍しいものが出てきました。
たとえばレースの襟飾りや、絹の靴下、それから首飾りや、ペルシャ頭巾の入った宝石箱、長い海獺(ラッコ)のマフや手袋、舞踏服、散歩服、訪問服、帽子や、お茶会の服や、扇などが、あとからあとからと出てくるのでした。
セーラは無心にほほえんでいる人形に、大型の黒い天鵞絨(ビロード)の帽子をかぶせてやりながら、こう言いました。
「ことによると、このお人形には私たちが言っていることが分かるのかもしれないわね。皆さんに褒められて、得意になっているのかもしれないわね」

すると、ラヴィニアは大人ぶって言いました。
「あなたはいつも、ありもしないことばかり考えているのね」
「そりゃあそうよ。私、空想ほど面白いものはないと思うわ。空想はまるで妖精のようなものよ。何かを一生懸命に空想していると、本当にその通りになってくるような気がするものよ」
「あなたは何でも持っているから、何を空想しようと勝手よ。でも、万一あなたが乞食になって屋根裏に住むようになるとしたら、それでもあなたは、空想したり、そのつもりになったりしていられるでしょうかね」
「私、きっとできると思うわ。乞食だって空想したり、そのつもりになったりできないことはないと思うもの。でも、辛いことは、辛いでしょうねえ」

そのとたんに、アメリア先生が入ってきました。
セーラはあとで思い返して、本当に不思議なタイミングだったとよく思いました。「セーラさん、あなたのお父様の代理人であるバロウさんがいらして、ミンチン先生とお二人だけでお話ししたいことがあるそうですから、皆さんは客間に行って、ご馳走を食べていらっしゃい。

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