ここへお入り」そう言ってお豆腐屋さんは、二匹の首すじをつまんで空いた方のお豆腐桶へ入れました。
それから、二匹を家へつれて行ってくれることになりましたが、「とーふ、とーふ」と、お豆腐を売りながら行くのですから、その時間のかかることといったら。
それでも、やっとこさお昼の三時頃にお家の門までたどり着きました。
「まあ、大変なものに乗っかって」と、言って、お母さんと伯母さんがお家の中から飛んできました。
それで、お母さんは一円出して、お礼の代わりに、お豆腐屋さんの残りを全部買ってやりました。
伯母さんは二匹が出かけないうちにと、朝のうちにとてもいい洋服を持ってきてくださっていたのでした。
伯母さんは早速、二匹に着せようとしましたが、もともと骨のやわらかいところへ、足がぐらついているお猫さんとお黒さんのことですから、まるでグニャグニャになって、どうしても着せられません。
伯母さんとお母さんはお腹をかかえて笑いました。
それから怒りました。
でも、二匹はどうにもなりませんので、ご飯をスプーンで食べさせて、ベッドへ寝かせました。
まるで、赤ちゃんになったみたいですね。
あんまりせっかちだと、こんなことになります。
いじわるをしました
グニャグニャになったお猫さんとお黒さんは一晩ぐっすり眠ったので、すっかり元気を取り戻しました。
そして、洋服屋さんの伯母さんにいただいた洋服を着て、お友達のアヒルさんの所へ見せびらかしに出かけてゆきました。
アヒルさんはお猫さんとお黒さんの洋服を見ると、すぐに、お母さんに言いました。
「お母さん、私にも、あんな洋服買ってちょうだい」
お母さんはお猫さんとお黒さんの洋服を前から後ろからよくながめてから、
「ほんとに、よく出来たお洋服ね。うちのアヒルさんにも、同じ所で買ってやりましょう。どこで買ったの? そして、お値段はいくらなの?」と聞きました。
お猫さんとお黒さんは言いました。
「おばさん、このお洋服は買ったんじゃないの。私たちの伯母さんがこさえて下さったの。いくらお金を出しても、ほかの人にはこさえては下さらないわ」
アヒルさんはそれを聞くと、メチャクチャに泣き出しました。
お猫さんとお黒さんは言いました。
「ほんとにしょうのないアヒルさんね。ああ、やかましいこと」そして、さっさと自分たちのお家へ帰ってきました。
本当に、いじわるですね。
ところが、アヒルさんは泣いて泣いて、泣き通しました。
「あんな洋服がほしい。あんな洋服がほしい」
と、無理もありません。まだ子供なんですから。
そこで仕方なく、アヒルさんのお母さんは、お猫さんとお黒さんのお家へ行って、二匹のお母さんにこうお話しいたしました。
「どうか、うちのアヒルさんにも同じ洋服を作っていただけるように、お願いしてくださりませんか。本当にお気の毒なんですけれども」
お猫さんたちのお母さんは、こう申しました。
「どうぞ、どうぞ、ご遠慮なく。その家(伯母さんのところ)は洋服屋さんなのですから、どんなご注文でも喜んでお仕立て申し上げますよ」
アヒルさんのお母さんは、大変喜びました。
そして、「早速、注文にまいります。アヒルさんを連れて」と言って、飛んで帰りました。
それを聞いていたお猫さんとお黒さんは顔を見合わせて、がっかりしました。
後で二匹はお母さんに大変叱られました。
「あんなにいじわるなことを言うものではありません」と。
二匹の顔は真っ赤になりました。
が、幸いなことに、顔中が毛だらけでしたから、人には分かりませんでした。
お風呂に入ってつかれました
寒い寒い冬になりました。
お黒さんとお猫さんの毛は、むくむくと温かそうに、いっぱいに生えそろってきました。
それはそれは、可愛らしくなりました。
そこで、お猫さんのお母さんは、アヒルさんのお母さんに手紙を書きました。
「大変お寒くなりましたが、皆様お変わりございませんか。私ども鳥や獣は、冬になりますと羽根や毛が立派に生えそろい、まことに美しくなるようでございます。お宅のアー太郎さん、ヒー太郎さん、ルー太郎さんも、さぞかし美しくおなりのことと思います。うちのお猫さんも、お黒さんも、大層美しくなりました。それで、今晩ぜひともアー太郎さん、ヒー太郎さん、ルー太郎さんをお連れになって、おいでくださいませ。ごちそうを食べながら、子供たちの自慢話をいたしたいのでございます。かしこ」
この手紙を出してから、お母さんは二匹をお風呂に入れました。
襟のアカ、足のアカ、手のアカ、そんなものはすっかり取れてしまいました。
そして、お猫さんには白い粉をふりかけました。
お黒さんには黒い粉をふりかけました。
実に見とれるばかりの美しさになったので、お母さんはすっかり喜びました。
夜になりました。
アヒルさんのお母さんは、ご自慢のアー太郎、ヒー太郎、ルー太郎さんを磨き立てて連れてきました。
「ガー、ガー、ガー、ガー」とアヒルさんたちは大変な声を出しながら、元気よくお猫さんのお家へやってきました。
「まあ、まあ、なんてお立派な」と、お猫さんのお母さんが驚いたほど、アヒルさんたちはきれいだったのです。
しかし、心の中では「うちのお猫さんたちの方がもっときれいだわ」と思いました。
アヒルさんたちはテーブルに座りました。
ごちそうが出ました。
ところが、お猫さんとお黒さんはなかなか出てきません。
「あの、失礼でございますが、お猫さんとお黒さんはどうなさいました?」とアヒルさんのお母さんが聞きました。
「お猫さん、お黒さん、早く出てきなさい! ガー、ガー、ガー、ガー」と、アヒルさんの子供たちが騒ぎ出しました。
お猫さんのお母さんは、ごちそうの用意や、アヒルさんたちへのご挨拶で、肝心のお猫さんたちのことはほとんど忘れてしまっていたのです。
お母さんは家中を探しました。
けれども二匹は見つかりません。
それで、もう一度探しましたら、二匹はお寝巻きを着て、ベッドに入って、グーグー寝てしまっていて、どうしても起きません。
「どうもすみませんが、どうしても起きてまいりません。なにしろ、今日お風呂に二時間も入っていたものですから、疲れてしまったんでございましょう」とお猫さんのお母さんが申しました。
ずいぶん情けなかったでしょうね。
ところが、何やらあたりが静かになったと思ったら、テーブルについたまま、アー太郎さん、ヒー太郎さん、ルー太郎さんもみんなグーグー寝込んでしまいました。
「どうもすみません。なにしろ、今日お風呂に二時間も入っていたものですから」とアヒルさんのお母さんがおっしゃいました。
それで、その晩の「子供自慢会」はお止めになりました。
コメント