初級翻訳・サンタクロースがさらわれちゃった! 第3話

サンタクロースがさらわれちゃった!

そして、そのまま強い力で引っ張られて、動いたり声を出す暇もなく、ソリから投げ出されて、雪だまりの上に頭から突っ込んでしまいました。
トナカイは気づかずに、おもちゃの袋を乗せたまま走り続け、やがて姿が見えなくなって、走る音も聞こえなくなってしまいました。
サンタクロースはいきなりのことに、しばらく訳が分かりませんでした。
気がしっかりしてきたころには、悪魔によって雪だまりの中から引きずり出されて、硬いロープで体のまわりをぐるぐる巻きにされていました。
それからサンタクロースは山に連れて行かれて、秘密の洞窟の中へ押し込められました。
逃げ出さないように、サンタクロースはごつごつした岩の壁に鎖でつながれてしまいました。
「うひゃひゃひゃひゃひゃ!」
と悪魔たちは笑いました。
それはもう嬉しくて嬉しくて、お互いの手をとりあって喜びました。
「今ごろ、子どもたちはどうしてるだろうな? 朝になってみると、靴下の中にも、クリスマスツリーのところにも、プレゼントがない! そうしたら、いったいどうなるのか見ものだぜ。
泣き出す? 暴れ出す? そんでもって、朝から親にお仕置きをされるわけさ。
そして、オレたち、ジコチュー、ネタマシー、ニクシミー、ミンナテキーの洞窟の前に、みんなみんな行列を作るってわけなのさ! バンザイ、オレたち洞窟の悪魔にバンザイ!」
でも、今年のクリスマスイヴは、サンタクロースだけじゃなかったのです。
ソリの中に、ちょうど妖精をお手伝いとして連れてきていたのでした。
リルのナターと、ヌックのピーター、ピクシーのキルターに、ウィスクという小さなフェアリーが一緒だったのです。
四人はサンタクロースがとりわけ気にかけている妖精たちでした。
この妖精たちなら、きっと子どもたちにプレゼントを届けるお手伝いをしてくれるだろうと思ったのです。
でも、ご主人さまがソリからいきなり引きずり出されてしまったときには、寒い寒い風が当たらないように、みんな運転席の下に隠れていたのでした。
ですから、妖精たちはサンタクロースがいなくなったことに、しばらく気がつきませんでした。
やがて、サンタクロースの明るい歌声が聞こえてこないことが、妖精たちにも分かりました。
世界を回っているときにはいつも口笛を吹きながら歌っているのに、今日に限ってこんなに静まり返っているのはおかしい、と思いました。
ウィスクが運転席の下から頭を出すと、サンタクロースはいませんでした。
トナカイに命令する人が誰もいないのです。
「止まって!」
ウィスクが声を張り上げると、トナカイは素直に言うことを聞いて、だんだんスピードを緩めていって、おしまいにはぴたりと止まりました。
ピーターとナター、キルターの三人(さんにん)も、運転席の下から出てきました。
振り返ってみると、ソリの作った跡がずっと向こうのほうまで続いているので、サンタクロースからずいぶん離れてしまったようです。
「どうすればいいかな?」
ウィスクはみんなに聞きました。
大変なことになったので、今までやんちゃしていたウィスクも、すっかり元気のない顔になっていました。
「今すぐに引き返して、ご主人さまを探したほうがいいのではないでしょうか。」
リルのナターがよく考えてから、そう言いました。
「いやいや。」
とヌックのピーターが割って入りました。
ピーターは何か大変なことが起こると、いつも頼りにされるしっかり者でした。「もし、ぼくたちがもたもたして引き返したりしたら、時間がなくなって、夜が明けるまでに子どもたち全員にプレゼントを配り終えることができなくなってしまうよ。それは、サンタクロースが一番悲しむことなんじゃないかな。」

すると、普段はあまり喋らないキルターがこう言いました。

「きっと、悪い連中にさらわれたんだと思う。狙いは子どもたちを不幸にすることに違いないよ。だから、何よりもまず、ぼくたちがサンタクロースの代わりになって、このおもちゃをちゃんと子どもたちに届けなくてはならない。そのあとで、ご主人さまを探して、無事に助け出せばいいんじゃないかな。」

その考えにみんな納得したので、すぐに妖精たちは動き出しました。ヌックのピーターがトナカイに声をかけると、トナカイはその言葉を聞いて、再び走り出しました。山や谷を越えて、森や野原を抜けて、ようやく家々が並ぶ街までやってきました。家の中では、子どもたちがぐっすりと眠っていて、明日の朝プレゼントを見つけて喜んでいる夢を見ています。

妖精たちにとっては、とても難しいお仕事でした。というのも、これまでサンタクロースのお手伝いは何度もやってきましたが、いつもはご主人さまが「あれをしなさい、これをしなさい」と指示をくれるので、サンタクロースの考え通りに動けていたからです。でも今日は、自分たちでどうすべきか考えて、おもちゃを配らなければいけません。そしてやはり、サンタクロースほどには子どもたちのことを詳しく知らなかったので、妖精たちはおかしな間違いをいくつかしてしまいました。

マミー・ブラウンはお人形さんを欲しがっていたのですが、妖精たちはドラムをプレゼントしてしまいました。もちろん、マミー・ブラウンはどうしていいかわからず戸惑いました。チャーリー・スミスは外で遊ぶのが大好きな男の子で、足が汚れないように新しいゴム長靴を欲しがっていたのですが、妖精たちはソーイングセットをプレゼントしました。それを見たとき、チャーリーは思わずカッとなって、つい「サンタのいんちき!」と叫んでしまいました。

もし間違いをたくさんしでかしてしまったら、それこそ悪魔たちの思うつぼで、子どもたちを不幸にしてしまうところでしたが、幸いなことに妖精たちはサンタクロースがいなくても一生懸命、精一杯考えて、サンタがいつもしていたことを思い出してその通りに頑張ったので、こんな大変な状況でも間違いは思ったより少なくて済みました。

できるだけ早く終われるように努力したのですが、それでもプレゼントを全部届けきる前に、空が白み始めました。トナカイがニコニコ谷に帰ってきたのは、いつもの時間をずいぶん過ぎてしまって、森からお日さまが頭をのぞかせ、少し明るくなったころでした。こんなに遅くなったのは、何千年も続く歴史の中で初めてのことでした。

トナカイを小屋に入れたあと、妖精たちはご主人さまをどうやって助け出すかについて考えました。まずはじめに、サンタクロースの身に何が起こって、今どこにいるのか、それを知ることが大切だという話になりました。そこでフェアリーのウィスクが、妖精の女王のところへ行きました。妖精の女王の住まいは、バージーの森の奥深く、ちょうど森の真ん中あたりにありました。

住まいに着くと、ほどなくして女王は悪い悪魔たちのことをすべて教えてくれました。どうやって悪魔たちがサンタクロースを誘拐したか、そしてその狙いは子どもたちを不幸にすることであることを説明してくれたのです。さらに女王は、なんでも協力すると言ってくれたので、ウィスクは心強くなって、ナター、ピーター、キルターの三人が待つ場所へと飛んで帰りました。そして四人で話し合って、敵の手からサンタクロースを取り戻す作戦を立てました。

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