初級翻訳・「テーブルよ、ごはんの用意」と、金貨をうむロバと、「こん棒、ふくろから」 第4話

「テーブルよ、ごはんの用意」と、金貨をうむロバと、「こん棒、ふくろから」

「この中には、一本の頑丈なこん棒が入っているんだよ」
「ふくろなら肩にかけられますし、いろんなものを入れるのに役立つでしょうけれど。
だけど、中に入っているこん棒っていったい何の役に立つんですか?
ふくろが重たくなるばかりじゃありませんか」
「そこだよ、いま俺が言おうと思っていたのは」
と、親方は答えました。
「もし誰かお前によくないことをする奴がいたら、『こん棒、ふくろから』って言いさえすればいいのさ。
そうすれば、こん棒が勝手にお前の味方になって、ふくろの中から飛び出して相手の奴らのところへ向かい、そいつらの背中で面白おかしく踊り狂ってくれるんだ。
おかげで、奴らはたっぷり一週間は身動き一つできなくなる。
お前が『こん棒、ふくろへ』って言うまでは、決して暴れるのをやめないんだからな」
若い職人は親方にお礼を言って、そのふくろを肩にかけました。
そして、職人のことをバカにしたり、何かよからぬ手出しをしようとする者が現れると、そのたびに職人は「こん棒、ふくろから!」と言いました。
するとすぐさま、こん棒が勢いよく飛び出して、上着の上からだろうとジャケットの上からだろうと、次から次へと思い切り相手の背中をボカボカと殴りつけるのでした。
しかもそのこん棒は、職人がわざわざふくろから引き出すのを待ったりなんかしません。
そのすばらしき素早さといったら、お話にならないほどでした。
誰もが「あっ」と思う間に、もう容赦なく殴りつけられているのでした。
若いろくろ細工師は、日が暮れるころに、兄さんたちがだまされたあの宿屋にたどり着きました。
ろくろ細工師は背中のふくろを自分の前のテーブルの上において、いままでに世の中で見てきた、いろんな珍しい話をし始めました。
「そうさね、『ごはんの用意』のテーブルだとか、金貨をうむロバだとか、そのほかにも世の中にはいろんなすごいものがある。
どれもなかなか大した代物ばかりで、僕だってそれらをバカにしようとは思わないよ。
だけど、僕が手に入れて、このふくろの中にいつも入れて持ち歩いている宝物に比べたら、そんなものは問題にもならないね」宿屋の主人は、両方の耳をぴくぴくさせながら考え込みました。
「いったいぜんたい、なんだろうな。あのふくろには、きっと宝石ばかりがぎっしりつまっているにちがいない。こいつもちょうだいしなくちゃならないぞ。いいものは、なんでも三つそろえなくちゃっていきものだからな」
夜寝る時間になると、お客であるろくろ細工師は、腰掛けの上に長々と横になり、ふくろをまくらのかわりにして頭の下に敷きました。
宿屋の主人は、お客がもうぐっすり眠り込んだだろうと思うころを見計らってやって来ました。
そして、ふくろを慎重に、そっと動かしたり引っ張ったりしてみました。こうして、このふくろをそっと抜き取って、うまくほかのものとすり替えることができるかどうか、試していたのです。
ところが、ろくろ細工師のほうは、もうずっと前からこれを待ち構えていたのでした。
主人が思いきってぐいと引っ張ろうとしたその瞬間、「こん棒、ふくろから!」と、大声で叫びました。
すると、その声といっしょに、こん棒がふくろからすごい勢いで飛び出し、主人の背中に飛びかかって、めちゃめちゃに殴りつけました。
主人は、かわいそうに声を上げて泣き叫びました。
けれども、主人が大声で叫べば叫ぶほど、こん棒はその泣き声のテンポにぴったり合わせて、ますます力を入れてボカボカと殴りつけるのです。
とうとう、主人はすっかりくたくたになって、床の上にバタリと倒れ込んでしまいました。
そこで、ろくろ細工師がいいました。
「きさまが、『ごはんの用意』のテーブルと、金貨をうむロバを返さなければ、もういっぺんこん棒のダンスをおどらせてもらうぞ」
「ああ、とんでもない、もうしません!」
と、主人は聞こえるか聞こえないくらいのひくい声で言いました。
「みんな、みんなお返しいたします! どうか、そのいまいましいばけものだけは、ふくろの中へもどしてくださいまし!」
それを聞いて、職人は言いました。
「おなけけをもって今回は許してやる。だが、二度とこんなひどい目にあわないように、しっかり気を付けるんだな」
それから職人は、「こん棒、ふくろへ」と叫んで、こん棒をふくろに戻して休ませてやりました。
ろくろ細工師は、次の日の朝、『ごはんの用意』のテーブルと金貨をうむロバをつれて、お父さんの家へ帰りました。
年老いた仕立て屋さんは、息子のひとりがまた帰ってきたのを見て、たいそう喜びました。
そしてこの息子にも、
「おまえは、よそへ行って、いったい何を習ってきたんだね?」
と、尋ねました。
「お父さん、わたしはろくろ細工師になりましたよ」
と、息子は答えました。
「そいつはとても手のかかる細かい仕事だな」
と、お父さんは言いました。
「旅のみやげには、何か持って帰ってきたのかい?」
「ものすごく珍しいものですよ、お父さん。ふくろに入ったこん棒さ!」
と、息子は自慢げに言いました。
「なんだって?」
と、お父さんは思わず大声をあげました。
「こん棒だって? そいつはご苦労なこったな。こん棒なんて、木を切りさえすりゃあ、いくらだって自分で作れるじゃないか」
「ところが、ただのそんなこん棒とはちょいとちがうんです、お父さん。わたしが『こん棒、ふくろから』って言いますとね、こん棒が飛び出してきて、わたしになにか悪いことをしようと思っているやつを相手に、すごい暴れっぷりの踊りをやらかすんですよ。しかも、そいつが地べたにひれ伏して、どうかこれ以上打たないでくださいってお願いするまでは、けっして暴れるのをやめないんですからね。ほらご覧なさい、このこん棒のおかげでね、宿屋の泥棒おやじが兄さんたちから取り上げていた『ごはんの用意』のテーブルと、金貨をうむロバを、こうしてきっちり取り返してきたんですよ。さあ、ふたりの兄さんたちを呼んでください。それから、親類の人たちもみんな呼んでください。みなさんに腹いっぱい美味しいものを食べたり飲んだりしていただいて、そのうえ、ポケットを金貨でいっぱいにしてあげますよ!」
年寄りの仕立て屋さんは、その言葉をすんなりとは信用しなかったものの、それでもとにかく親類の人たちをみんな集めました。
そこで、ろくろ細工師は布を部屋の中にひろげ、金貨をうむロバを部屋へと連れてきました。
そして一番上の兄さんに向かって、
「さあ、ロバに向かって話しかけてごらんよ」
と、言いました。
粉ひきの兄さんが「ブリックレーブリット!」と言うと、またたく間に、まるで夕立のように金貨の雨がパラパラと布の上に降ってきたのです。
そしてロバは、みんなが「これ以上はもうとても持ちきれないよ!」とびっくりするくらいまで、金貨をたくさん吐き出し続けました。
(あなたも、もしそこにいられたらなあ、なんて羨ましそうな顔をしていますね。)
その次に、ろくろ細工師は小さなテーブルをもちだして、こう言いました。
「兄さん、さあ、今度はテーブルに向かって話しかけてみなよ。

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