お母さんはきよの様子を見ると、すぐに「何かまた、心配になることを言ってきたの?」と、やさしく問いかけました。
「はい、お父さんが病気だそうです……」
「お父さんが病気?」と、お母さんはびっくりして、その手紙を受け取って読みました。
そこには、一週間ほど休みをもらって、帰ってきてほしいと書いてありました。
「これは、弟さんが書いたのかい?」と、お母さんは子供らしい文字の手紙を見ながら言いました。
「はい」と、きよは答えました。きよにも弟がいて、小学校に通っているそうです。
そばでこれを聞いていた賢二は、父親が病気ではどんなにさびしいだろうと、田舎で姉の帰りを待っている少年の気持ちを思うと、同情せずにはいられませんでした。
そして、その手紙の字は上手とは言えませんが、いかにも丁寧に書かれていたので、きよの弟さんはまじめな少年なのだろうと思いました。自分の読み終わった雑誌でも、きよが帰るときに、弟さんへ持っていってもらおうかな、などと考えていました。
きよは、その日の夜行列車で立つことになりました。
いつもなら、初めての田舎帰りで楽しいはずなのに、打ち沈んだ顔つきを見ていると、かわいそうでなりません。
お姉さんと賢二は、駅まで見送りに行きました。
「お父さんの病気が大したことなかったら、早く帰っておいでね」とお姉さんがきよをなぐさめました。
賢二は、心の中で、きよにわがままを言って悪かったと後悔していました。
きよはそんなことを気にしていない様子で、汽車が動き出すと、名残惜しそうに何度も何度も頭を下げて、遠ざかっていきました。次の日の朝、お姉さんはいつもより早く起きて、お母さんのお手伝いをしました。
「これは感心だね」
お父さんはそう言って、お姉さんをほめました。
「これが何日も続けば、本当にえらいんですけどね」
お母さんはそう言って笑いました。
しかし、お膳を並べているとき、お姉さんはさっそく茶碗を一つ割ってしまいました。
「大事な茶碗を割ってしまったね」
お母さんがそう言うと、お姉さんは「冷たくて手がすべったんだから、しかたがないでしょ」と、逆にぷりぷりと怒っていました。
「それはあなたがそそっかしいからですよ」
「学校のことが気になって落ち着かないんだもん」
「もし、これがきよの仕業だったら、あなたなんて言ったかしら?」
お母さんがこう問いかけると、お姉さんは自分自身が同じ失敗をして初めて、ささいなことで自分たちがきよを叱っていたのは本当に悪かったな、と反省しました。
外では、北風がびゅうびゅうと吹いています。
賢二は、明日の日曜日になったら、新しく買ってもらった大きな凧を空に上げることを楽しみにしていたのでした。
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