初級翻訳・幸福の鳥 第2話

小川 未明

だが、もし数えまちがえたなら、そのときはすべてが夢と消えてしまったのだと思いなさい」
「おじいさん、それくらいのことをまちがえるはずはありません!」
男はそう答えて、自分の家へ戻りました。
誰が訪ねてきても会わないつもりで、入り口の戸をしっかりと閉め切りました。
そして袋から豆を出し、熱心に数えはじめました。
窓を打つあられの音も、鳥の鳴く声も、男の心を乱すことはできませんでした。
暗くなるとろうそくをともし、ご飯も食べずに数え続けました。
そのとき、突然どこかの隙間から風が吹き込んだのか、ろうそくの火がちらちらと揺れました。
男は「はっ」として、今火が消えては大変だと、両手を広げて火影をかばいました。
その瞬間、せっかく数えていた数を、すっかり忘れてしまったのです。
そのとき、金色の翼を輝かせて、幸福の鳥が海のかなたへ飛んでいくのを、男はぼんやりとした幻のように見たのでした。

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