初級翻訳・水族館 第5話

堀 辰雄

そしてついに、この悲劇の最後としては、少しばかり残酷な出来事が起きてしまいました。
それは、集まった人混みの中のひとりが、どこから持ってきたのか、突然、花火のようなものを打ち上げたのです。
おや、花火かな? 最初は誰もがそう思いましたが、しかしそれは違いました。
それは新聞社のカメラマンが彼女を撮影するために焚いた、マグネシウムの閃光だったのです。
マグネシウムの光は、一瞬の間でしたが、屋根の上で髪を振り乱し、片手にピストルを持ったまま、呆然と立ち尽くしている狂人の凄まじい姿を、私たちにはっきりと見せつけました。
私たちはその姿を見て、思わず歓声を上げそうになりました。
しかし、ちょうどその瞬間でした。
不意打ちのマグネシウムの光に、屋上の彼女はひどく驚いてしまったようでした。
彼女はそのせいで体のバランスを崩したように見えました。
そして、屋上からまっ逆さまに、私たちの方へと墜落してきたのです。
私は思わず目を閉じました。
もうこれ以上、この場所に留まって、死と向き合うような吐き気に耐えることはできませんでした。
そのために、「まだ生きているぞ!」という人々の叫び声をぼんやりと耳にしながら、私は目を閉じたまま、その場を立ち去るよりほかありませんでした。

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