子供にいろいろ話を聞かせてくださって、あつくお礼を申します。しかし、子供の考えを迷わさないように願いますぞ。空の星は、取り下ろしたり、みがいたりできるものではありませんからな。星というものは、われわれの地球と同じく、天体なのですぞ。そしてまた、それがいいところなんですからな」
「ありがとう、お年よりのひいおじいさま!」と、オーレ・ルゲイエは言いました。
「ありがとう! あなたは、一家のお頭です。あなたは『古い』お頭です。しかし、わたしは、あなたよりももっと古いのです。わたしは、むかしの異教徒なのです。ローマ人やギリシャ人は、わたしのことを、『眠りの精』と呼んだものですよ。わたしは、いちばんとうとい家の中へもはいっていきましたし、今でもはいっていきます。わたしは、小さい人とも大きい人とも、おつきあいができるのです! それでは、今夜は、あなたが話をしてやってください!」――
こう言うと、オーレ・ルゲイエは、こうもりがさを持って、行ってしまいました。
「今では、自分の考えを言うこともできんのか!」と、古い肖像画が言いました。
そのときヤルマールは目がさめました。
日曜日
「今晩は!」と、オーレ・ルゲイエは言いました。
すると、ヤルマールはうなずきました。けれども、すぐさまとんで行って、ひいおじいさんの肖像画を、かべのほうへ向けてしまいました。こうしておかないと、またゆうべのように、口を出されて、お話が聞けなくなってしまいますからね。
「さあ、お話を聞かせて。
『一つのさやに住んでいる、五つぶの青いエンドウマメの話』や、『メンドリの足に愛をささやいた、オンドリの足の話』や、『あんまり細いので、ぬい針だとうぬぼれている、かがり針の話』なんかをね」
「お話のほかにも、ためになることはたくさんあるよ」と、オーレ・ルゲイエは言いました。
「ところで、今夜は、ぜひともおまえに見せたいものがあるんだよ。わたしの弟なんだがね、名前は、やっぱりオーレ・ルゲイエだよ。もっとも、弟のほうは、どんな人のところへも、一回しかやってこないんだ。
やってくるとすぐに、その人を馬に乗せて、いろんなお話を聞かせてくれる。
だけど、そのお話というのは、たったの二つだけなんだ。
一つは、だれも想像できないくらい、すばらしくて美しいお話。もう一つは、ぞっとするような恐ろしいお話で――あまりに怖くて、とてもここには書ききれないようなお話なんだよ」
そう言うと、オーレ・ルゲイエは、小さなヤルマールを窓のところへだき上げて言いました。
「ほら、あそこに見えるのが、わたしの弟で、もう一人のオーレ・ルゲイエなんだよ。
人間たちは、弟のことを『死神(しにがみ)』とも呼んでいる。
だけど、ごらんよ。
絵本なんかだと、ガイコツばかりの恐ろしい姿で描かれているけれど、本当はそんなふうじゃないんだ。
それどころか、銀のししゅうが施された立派な上着を着ているんだよ。
まるで、かっこいい軽騎兵(けいきへい)の軍服みたいじゃないか! 黒いビロードのマントが、馬の上で風にひらひらとひるがえっているよ! おや、あんなにすごいスピードで馬を走らせているぞ!」
言われてヤルマールが目をこらすと、まさにそのオーレ・ルゲイエが馬を走らせていました。
そして、若い人たちや年をとった人たちを、馬に乗せていたのです。
ある人は馬の前に、またある人は後ろに乗せました。
でも、馬に乗せる前に、オーレ・ルゲイエはいつもこうたずねるのです。
「ふだんの通信簿(成績表)は、どうだったかな?」
「とてもいい成績です!」と、だれもかれもが答えました。
「よろしい、それじゃあちょっと見せたまえ」と、オーレ・ルゲイエは言います。
すると、みんなは自分の成績表を見せなければなりません。
その結果、「大正解(たいへんよくできました)」や「優秀」をもらっていた人たちは、馬の前のほうに乗せてもらえて、すてきで楽しいお話を聞かせてもらえるのです。
ところが、「ふつう」や「もう一息」をもらっていた人たちは、馬の後ろのほうに座らされて、ぞっとするような恐ろしいお話を聞かなくてはならないのでした。
そんな人たちは、体がふるえて、しくしく泣いていました。
馬から飛び降りようとしても、それは無駄なことです。
なぜって、みんなは馬に乗せられたとたん、まるで足に根っこが生えたみたいに、ピクリとも動けなくなってしまうのですから。
「だけど、死神って、とってもりっぱなオーレ・ルゲイエなんだねえ!」と、ヤルマールは言いました。
「ぼく、ちっともこわくないよ」
「そうさ、こわがる必要なんて何もないんだよ」と、オーレ・ルゲイエは言いました。
「ふだんから、ちゃんいい成績表がもらえるようにがんばりさえすればいいんだからね」
「そのとおり、じつにためになる!」と、ひいおじいさんの肖像画がつぶやきました。
「やっぱり、こうして自分の意見を言うのは役に立つものだな!」こう言って、肖像画は大満足しました。
みなさん! これでおしまいです。これが、眠りの精オーレ・ルゲイエのお話なのです。
今夜は、オーレ・ルゲイエが、みんなにもっともっとたくさんのお話を聞かせてくれるかもしれませんよ!
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