坂口 安吾

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吹雪物語

初級翻訳・吹雪物語 第16話

あるとき卓一が夜更けに大念寺へ帰ってくると、雑然と立ち並ぶ墓石のなかに人影があった。由子が深夜の墓石の上に腰を下ろしていたのだ。「長いこと待っていたのかい?」「化石するほどね。ほら、お墓を台にした彫刻のように、もう動けないわ。手を貸して」卓...
吹雪物語

初級翻訳・吹雪物語 第15話

数日後、由子と野々宮は旅に出ました。卓一は、由子までが旅行に出かけたことを知りませんでした。由子の訪れが途絶えたことで、彼は自分の中に焦るような気持ちが芽生えていることに気づきました。電話のベルが鳴るたびに、由子ではないかと期待してしまうの...
吹雪物語

初級翻訳・吹雪物語 第14話

「どうして私は、こんなところにいるの?」と、死者は不思議そうに夫に尋ねた。「ここは、どこ?」「お前は、死んでしまったのだ」「そんな恐ろしいことを言わないでください」妻は震えた。「私は生きています。あなたを残して、どうして私ひとりが死ねるでし...
吹雪物語

初級翻訳・吹雪物語 第13話

そして心の衰えのために、激しい愛を抱いていながら、愛が冷めていくことを信じ込んでしまったのではないか。こうして、不当に抹殺された愛情が、やがて由子に復讐する。逆上したような愛の破壊を企てさせてしまうのである。そういうこともあり得ると、野々宮...
吹雪物語

初級翻訳・吹雪物語 第12話

それだけが、今の自分には清潔なものに見えたからだ。それなのに、自分が求めるものに酔うことができないのが不思議でならなかった。一方、野々宮と由子の愛は、そのころ破綻しかけていた。こんな出来事があった。野々宮の友人に大谷という弁護士がいる。この...
吹雪物語

初級翻訳・吹雪物語 第11話

世間には、ダンス自体がすでに悪徳であるかのように言う人もいます。左門はそれを信じていませんでしたが、悪徳へ導くきっかけの一つとしては、それも挙げられると思ってはいました。いや、一般的に常識とされるこの考えを、彼もあえて否定はしないという程度...
吹雪物語

初級翻訳・吹雪物語 第10話

いつまでたっても勝てる見込みがないし、そもそも勝とうという情熱もわいてこなかったのです。あるとき他巳吉は、懐に花札を隠し持って左門を訪ねました。そして左門をうまく丸め込んで、花札の手ほどきを始めたのです。五局の碁を打つところを、他巳吉は無理...
吹雪物語

初級翻訳・吹雪物語 第9話

おそらく舞踏場へ行ってから夜会服に着替えるのでしょう。普段着のまま家を出て仕事に向かう彼女でしたが、断髪の髪型や化粧、そして歩くときの鋭い動作など、左門の目にも普通の娘とは少し違った雰囲気を感じさせ、時折その姿を見かけていたのです。初冬にし...
吹雪物語

初級翻訳・吹雪物語 第8話

妖艶な女を前にして、自分から進んで盲目になろうとしている自分の意志だけが、少しずつ分かりかけてきました。悲しい歌が恋であってはいけないと言ったこと。それはまるで自殺のようなものだと言ったこと。その考えが、由子の実生活にどれほどの根拠があるの...
吹雪物語

初級翻訳・吹雪物語 第7話

お二人のこと、私たちのあいだでは、知らない人はいませんわ。きっと結婚のために、お帰りになるのでしょうって、みんなで噂しているくらいですもの」「人は何によって名を得るか、分からないものですね」と卓一は笑った。すべてを知られていることが分かった...
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