野村 胡堂

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水中の宮殿

初級翻訳・水中の宮殿 第5話

「まあ、まあ、お嬢様」そう言って迎えてくれた中年の夫人は、昨年猫間ヶ淵で亡くなった潜水夫の妻で、お高さんという――白い割烹着に、引詰めた束髪といった、思いの外東京風の女性です。小屋は板敷きの六畳間が二つと、それに小さな物置がついているだけ。...
水中の宮殿

初級翻訳・水中の宮殿 第4話

滝山さんは金庫の鍵を持っているんだから、上の穴から手なんか入れなくたって、扉を開けて中を見られるはずじゃない」「でも、中にある『平泉館』の記録なんて、滝山はいつでも見られるものなんだから、わざわざ爺やさんを殺してまで奪う必要はないだろう?」...
水中の宮殿

初級翻訳・水中の宮殿 第3話

早速自分も資金の一部を出し、広く世の中からも資金を募って、いよいよ仕事に着手したのは昨年の春のことでした。 幸運なことに歴史学者である立花博士は平泉の古記録を手に入れ、それに基づいて仕事を進めるうち、かつての柳の御所の跡から一枚の薄い銅板を...
水中の宮殿

初級翻訳・水中の宮殿 第2話

「あっ」 中は二人の警官が警備しており、床の上には、まだ洗い流されていない血が、赤い膠(にかわ)のようにこびりついていました。「お嬢さんたちの入るところじゃありません。向こうへ行って、向こうへ」 二人の可愛らしい断髪の少女が入ってきたのを見...
水中の宮殿

初級翻訳・水中の宮殿 第1話

「お嬢様、今すぐ鎌倉の翠川さんの別荘へ行ってください」「どうしたの、爺や?」「どうもしませんが、夏休みになったら泊まりに行くお約束でしたよね」「でも、爺や一人で不自由することはないの?」「私はもう六十八歳ですから、どんなことがあっても驚きま...
楽聖物語

初級翻訳・楽聖物語 第78話

彼はわずか24歳という若さでこの世を去りましたが、音楽の歴史に消えることのない大きな足跡を残した一人です。 セザール・フランクの弟子の中で最も若く、その後ヴァンサン・ダンディにも教えを受けました。遺された作品は少ないのですが、「ヴァイオリン...
楽聖物語

初級翻訳・楽聖物語 第77話

日本で発売されていないものもあと1枚あり、合唱も管弦楽も常識を超えて美しく、素晴らしい出来だったので本当に惜しいことをしました。再発売を待ちたいと思います。 私たちに一番親しみやすいのは、イギリス・コロムビアから出ている「弦楽四重奏曲」(1...
楽聖物語

初級翻訳・楽聖物語 第76話

だんだんと成長し変化して、初期の美しい雰囲気は失われましたが、その分、精巧で少し暗い響きになっていくストラヴィンスキーの姿を見るのはとても興味深いです。 「詩篇による交響曲」は、聖書の詩篇から言葉をとった新しい宗教音楽で、人間味があるのにど...
楽聖物語

初級翻訳・楽聖物語 第75話

「クラヴサン協奏曲」は、ファリアのレコードの中では一番の美しさだと思います。作曲者自身の弾くクラヴサンと、モイーズのフルートが共演しているなんて、まさに贅沢なご馳走ですよ(コロムビア J7844―5)。 舞踊曲「恋は魔術師」は、アルフテル指...
楽聖物語

初級翻訳・楽聖物語 第74話

彼の音楽理論は感覚的な快楽を追求し、伝統を無視したものでしたが、結局のところカンディンスキーの絵画と同じように、理論に溺れてしまい、その優れた才能を十分に伸ばしきらないうちに亡くなってしまったという印象です。 しかし、視覚や嗅覚までをも音楽...
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