初級翻訳・いたずらっ子 第1話

いたずらっ子

むかしむかし、あるところに一人のおじいさんの詩人がいました。
とても心のやさしい、おじいさんでした。
ある晩のこと、おじいさんが家の中でゆっくりと過ごしていると、外はすさまじい嵐になりました。
雨はまるで滝のように降り注いでいましたが、詩人は部屋の中にある暖炉のそばで、ぬくぬくと暖まっていました。
暖炉では火が赤々と燃え盛り、リンゴがジュージューと音を立てて、おいしそうに焼けていました。
「こんな嵐の夜に外にいるなんて、かわいそうになあ。着物もびしょぬれになってしまうだろうに」
おじいさんの詩人はそうつぶやきました。本当に、心のやさしい人だったのです。

すると、その時です。戸の外から、
「あけてください! ぼく、びしょぬれで、寒くてたまらないの!」
と叫ぶ、小さな子供の声が聞こえました。
子供は泣きながら、戸をドンドンとたたいています。その間も雨はザーザーと降り続き、窓という窓は風にガタガタと震えていました。
「おお、かわいそうに!」
おじいさんの詩人はそう言って、戸をあけに行きました。
外には、小さな男の子が立っていました。見ると、なんとすっぽんぽんで、長い金色の髪からは雨水がポタポタと滴り落ちています。おまけに、寒さでブルブルと震えていました。
もし家に入れてあげなければ、こんなひどい嵐の中で死んでしまうに違いありません。

「おお、かわいそうに!」
おじいさんの詩人はそう言って、男の子の手を引きました。
「さあさあ、中へおいで。暖かくしてあげよう。ブドウ酒と焼きリンゴもあげようね。おまえはかわいい子だから」
男の子は、本当に可愛らしい子でした。瞳は明るい二つの星のようにキラキラと輝いています。金色の髪からはまだ雨水が垂れていましたが、それはそれは綺麗にうねっていました。まるで小さな天使のようです。
ただ、寒さのせいで顔は真っ青になり、体中をブルブルと震わせていました。手には立派な弓を持っていましたが、それも雨のせいでびしょ濡れになり、すっかりダメになっていました。矢に塗ってあったきれいな色も、雨で完全ににじんでしまっていました。

おじいさんの詩人は暖炉の前に腰を下ろすと、ひざの上に男の子を抱き上げました。そして、髪の毛の水を絞ってやり、冷え切った男の子の手を自分の手で温めてあげました。さらに、甘いブドウ酒も作って飲ませてあげました。
やがて男の子は元気を取り戻し、頬に赤みがさしてきました。するとさっそく床に飛び降りて、おじいさんの詩人のまわりをクルクルと踊り始めたのです。
「元気な子だねえ」
おじいさんが言うと、男の子は答えました。
「ぼく、キューピッドっていうの。おじいさん、ぼくを知らないの? ほら、そこにあるのがぼくの弓。その弓で、ぼくは矢を射るんだよ。あっ、天気がよくなった! お月さまも出てきたよ」

「だが、おまえの弓はぬれて、もうダメになっているじゃないか」と、おじいさんの詩人が言いました。
「弱ったなあ!」
男の子はそう言うと、弓を手に取って調べました。
「だいじょうぶ、もうすっかり乾いてる。どこも壊れてないよ。弦だってピンとしてる。ぼく、試してみるね」
男の子は弓を引き絞って矢をつがえると、やさしいおじいさんの詩人の心臓を狙って、ピューッと射ました。
「ほうら、ねえおじいさん。ぼくの弓は、ダメになってなかったでしょ?」
そう言うと、男の子は大声で笑いながら、どこかへと飛び出していきました。

なんてひどい、いたずらっ子でしょう! こんなにやさしいおじいさんの詩人を、弓で射るなんて。暖かい部屋に入れてあげて、上等のブドウ酒や素敵な焼きリンゴまでごちそうしてくれた相手を射るなんて!
やさしい詩人は床の上に倒れ込み、涙を流しました。本当に、心臓を射抜かれてしまったのです。
おじいさんは言いました。
「チッ! あのキューピッドというやつは、なんていたずらっ子なんだ! いいかい、よい子供たちに話しておいてやろう。ひどい目に遭わされないように、あいつには気をつけて、一緒には遊ばないようにとな」

よい子供たちはこの話を聞くと、女の子も男の子もみんな、いたずら者のキューピッドに気をつけました。
それでもキューピッドはとてもずる賢く、頭が良かったので、やっぱりみんなを騙していました。学生さんたちが学校の講義を終えて外に出てくると、いつのまにかキューピッドが本を腕に抱えて、みんなと一緒に並んで歩いているのです。おまけに、黒い制服まで着込んでいるので、誰にも見分けがつきません。
ですからみんな、自分たちの仲間だと思い込んで、腕を組んで一緒に歩いてしまうのです。
ところがそうすると、胸を矢で射抜かれてしまうというわけです。

それから、娘さんたちが教会のお説教から帰ってくるときや、教会の中にいるときにも、キューピッドはいつもその後ろをこっそりとついて歩いています。
いや、それどころか、いつどんなときだって、人々のあとを追いかけているのです。
劇場の大きなシャンデリアの中に座り込んで、明るく燃え上がっていることだってあります。
そんなとき、みんなはただのランプだと思っているのですが、あとになってから、それがただのランプではなかったことに気づくのです。

そうかと思うと、お城の庭園の散歩道を歩き回っていることもあります。
いやいや、それどころか、あなたのお父さんやお母さんだって、胸の真ん中を射抜かれたことがあるんですよ。
ぜひお父さんやお母さんに聞いてみてください。
きっと、面白い話を聞かせてもらえるはずですよ。

まったく、このキューピッドというのは本当に困ったいたずらっ子です。
こんな子には、かまってはいけませんよ。
この子ときたら、誰のあとでも追いかけてくるのですから。
なにしろ、年老いたおばあさんでさえ、矢を射られたことがあるくらいなのです。
もっとも、それはずっと昔の話で、もう済んでしまったことですがね。
それでもおばあさんは、そのときのことを、けっして忘れはしませんよ。

いやはや、しようのないキューピッドです! でも、あなたには、この子がどんな子か分かりましたね。
では、キューピッドがとびきりひどいいたずらっ子だということを、どうか忘れないでくださいよ。

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