初級翻訳・おじいさんのランプ 第5話

おじいさんのランプ

やがて巳之助はかがみ込み、足元から石ころを一つ拾いました。
そして、一番大きく光っているランプを狙い定めて、力いっぱい投げつけました。
パリーンと音がして、大きな火が一つ消えました。
「お前たちの時代は過ぎた。世の中は進んだんだ」
と巳之助は言いました。
そしてまた一つ、石ころを拾いました。
二番目に大きかったランプが、パリーンと鳴って消えました。
「世の中は進んだ。電気の時代になったんだ」
三番目のランプを割ったとき、巳之助はなぜか涙が浮かんでしまい、もうランプに狙いを定めることができなくなりました。

こうして巳之助は、今までの商売をやめました。
それから町に出て、新しい商売を始めました。
本屋になったのです。

*

「巳之助さんは、今でもまだ本屋をやっているよ。もっとも、今じゃだいぶ年をとったから、息子が店をやっているけれどね」
と東一君のおじいさんは話を結んで、冷めたお茶をすすりました。
巳之助さんというのは、実は東一君のおじいさんのことなので、東一君はおじいさんの顔をじっと見つめました。
いつの間にか東一君はおじいさんの前に座り直し、おじいさんの膝に手を置いたりしていたのです。

「それじゃあ、残りの四十七個のランプはどうなったの?」
と東一君が聞きました。
「知らん。次の日、旅の人が見つけて持って行ったのかもしれないな」
「それじゃあ、家にはもう一つもランプがなくなっちゃったの?」
「うん、一つもなしだ。この台ランプだけが残っていたのさ」
とおじいさんは、昼間東一君が持ち出したランプを見て言いました。
「損しちゃったね。四十七個も誰かに持って行かれちゃって」
と東一君が言いました。
「うん、損しちゃった。今から考えると、何もあんなことをしなくてもよかったとわしも思うよ。岩滑新田に電灯が引けてからでも、まだ五十個くらいのランプはけっこう売れたんだからな。岩滑新田の南にある深谷という小さな村じゃ、まだ今でもランプを使っているし、ほかにもずいぶん遅くまでランプを使っていた村はあったのさ。しかし、何しろわしもあの頃は元気がよかったからな。思いついたら深くも考えず、パッパッとやってしまったんだ」
「馬鹿なことをしちゃったね」
と東一君は孫なので遠慮なしに言いました。
「うん、馬鹿なことをしちゃったよ」「いいかい、東坊」
おじいさんは、きせるを膝の上でぎゅっと握りしめて言いました。
「わしのやり方は少し馬鹿だったかもしれないが、わしの商売のやめ方は、自分で言うのもなんだが、なかなかりっぱだったと思っているよ。
わしが言いたいのはこういうことさ。日本が進んで、自分の古い商売がもう役に立たなくなったのなら、きっぱりとそれを捨ててしまうことだ。
いつまでも未練がましく古い商売にしがみついていたり、『自分の商売がうまくいっていた昔の方がよかった』なんて言ったり、世の中が進歩したことを恨んだり……そんな情けないことは絶対にしないということだよ」

東一君は黙ったまま、長いあいだおじいさんの、小さくても気力に満ちた顔をじっと見つめていました。
やがて、東一君は言いました。
「おじいさんは、えらかったんだねえ」
そして、懐かしむような気持ちで、そばに置いてある古いランプを見つめました。

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