夜中に本物の絵を外して、偽物と入れ替えて、本物の方を持ち出してしまったのさ」
「えっ、あれがみんな偽物だって」
石村さんはびっくりして、部屋へとんでいって、ひとつひとつ強く調べました。
「あっ、やっぱりそうだ。本物とそっくりに描いてあるが、みんな偽物だ」
石村さんは真っ青になって言いました。それにしても、小林くんまで偽物とは、いったいどんなやり方をしたのでしょうね。
3
二十面相は、石村さんの絵をぜんぶ偽物と取り替えて、盗んでいってしまいました。そこにいた六人の刑事と、小林くんと少年探偵団員六人が守っていたのですが、それがみんな、二十面相の子分の変装した偽物だったのです。
本当におどろきました。泥棒たちに見張りをさせたのですから、盗まれるのは当たり前です。小林くんまで偽物だったのです。では、本物の小林くんはどうしたのでしょうか。小林くんは、二十面相のためにひどい目に遭っていたのです。
石村さんはこの話の初めに、小林くんに電話をかけましたね。その電話を、石村さんの家に忍び込んでいた二十面相の子分が聞いてしまったのです。小林くんは石村さんから電話があると、詳しい話を聴くために自動車を呼びました。小林くんが自動車に乗ろうとしたとき、後ろから一人の男が乗ってきたのです。その男は小林くんを倒して、猿ぐつわをはめ、手足を縛ってしまいました。この男と運転手は、二十面相の子分だったのです。こうして、小林くんは連れ去られてしまいました。
そして、自動車が止まった場所は、原っぱの中にある奇妙な家の前でした。
そこは、「お化け屋敷」の見世物小屋だったのです。
その中には、気味の悪い幽霊や、面白いお化けなど、さまざまなものが並んでいました。
手足を縛られた小林くんは、二人の悪者に抱えられて、お化け屋敷の奥の方へと連れ込まれました。
竹やぶの中の細い道を進んでいきます。
すると突然、恐ろしい怪物が現れました。
大きさは二メートルもあり、首が地面からニュッと突き出ているのです。
それはゴリラのようでもあり、ライオンのようでもあり、人間の悪党のようでもありました。
それは、大きく恐ろしい顔をしていました。
二人の悪者は、草がぼうぼうと生えた地面に、小林くんを放り出しました。
すると、竹やぶの中から、黄金仮面をつけた二十面相がぬうっと姿を現しました。
「わっはははは……、小林か、久しぶりだな。
君をこうして捕まえておいて、石村の絵をすべて頂戴することにしたよ」
小林くんは、悔しいけれど縛られているので、何もすることができません。
「今ごろは、君とそっくりな少年に変装した俺の子分と、六人の少年探偵団員、そして六人の刑事が石村の家を守っているはずだ。
それらはみんな偽物で、俺の子分というわけだ。
わっはははは。
二十面相の知恵なんて、こんなものさ。
明智が東京にいないのが残念だよ」
二十面相はそう言いました。
「俺は、明智の偽物だって見事に作れるからね。
ところで、君はしばらくこの怪物の中で大人しくしていろ。
このお化け屋敷は、実は俺のものなんだ。
珍しいものがたくさんあるよ。
君にもあとで見せてやるよ。
はっははは」
ああ、大泥棒がお化け屋敷を持っているなんて。
怪物の裏側に回ると、一見しただけでは分からないような入口がついていました。
二人の子分はそれを開け、中に小林くんを放り込んでしまいました。
これから、ポケット小僧が小林くんを見つけることになります。
そして、二十面相との恐ろしい戦いが始まるのです。
4
小林くんがお化け屋敷の怪物の首の中に閉じ込められたのと、同じ日のことです。
少年探偵団員のポケット小僧は、何も知らずにお化け屋敷の近くを歩いていました。
すると、向こうから団員の井上くんがやってきました。
「あっ、ポケット小僧じゃないか!」
「あっ、井上さん。なんでそんなに急いでいるの?」
「うん、大変なことがあるんだ。さっき向こうで、少年探偵団のバッジを拾ったんだ。裏を見ると、ローマ字で『KOBAYASHI』と彫ってある。団長のバッジに違いない。それが、三メートルおきぐらいにいくつも落ちているんだ」
「じゃあ、小林さんが誰かにさらわれたんだね」
「うん、僕がそのバッジのあとを追っていくと、お化け屋敷の見世物小屋の前に出たんだ。小林団長は、あのお化け屋敷に連れ込まれたに違いない。それで、急いで明智先生のところへ知らせようと思って、電話を探していたんだよ」
「だめだよ。明智先生は大阪の方へ行っていて留守なんだ」
「それじゃあ仕方がない。この近くにいる団員の木下くんを呼んで、三人でお化け屋敷に入ってみよう。小林団長を捜すんだ」
二人は近くのお店の赤い電話で、木下くんを呼び出しました。木下くんはすぐにやってきました。
「木下くん、電話のある団員五、六人に連絡をして、あとからお化け屋敷へ来てくれ。だが、中へは入らないでどこかに隠れているんだ。そして、もし中から笛の音が聞こえたら、僕たちを助けに来るんだ。いいかい?」
井上くんとポケット小僧は、木下くんを残して、お化け屋敷の中へ入りました。
まだ時間が早いので、見物客はあまりいません。
薄暗いお化け屋敷は、シーンとしていてお墓のように静かです。
恐る恐る歩いていくと、背広を着て帽子をかぶった、六歳ぐらいの子どもが飛び出してきたのです。
「いらっしゃい。こちらへおいでください」
なんだか、レコードでも聞いているような声でした。
その子どもは、歯車のような音をさせながら、先へ歩いていくのです。
「この子どもは、きっとロボットだよ」
井上くんはそう言って、子どもの顔を指で叩いてみました。
すると、コツコツと音がしました。
やはり、ロボットだったのです。そのロボットについていくと、真っ黒な幕で囲まれた部屋に入りました。
「あっ、骸骨だ!」
ふわっと、一つの骸骨が現れて、コツコツと骨の音をさせながら踊りだしました。
すると、またもう一つ、もう一つと、次々に骸骨が現れて五つに増えてしまいました。
そして、井上くんとポケット小僧の周りを、ぐるぐると踊りながら回るのです。
それは本物の骸骨ではありません。作り物なのです。
でも、真っ暗なところでこんなものに出会ったら、誰だって気味が悪くなるでしょう。
さあ、これからどんなことが起こるでしょうか。二人はうまく小林くんを助けることができるでしょうか。
5
お化け屋敷へ連れ込まれた小林くんを助けるために、ポケット小僧と井上くんがお化け屋敷へ入っていきました。外には少年探偵団員たちが、合図があるのを待っています。
小さな子どものロボットが、二人を骸骨の部屋へ連れていきました。骸骨がカタカタと踊っています。最初はびっくりしましたが、その骸骨は操り人形と同じだとわかったので、二人は笑って奥へ進んでいきました。子どものロボットは、もうついてきません。
竹やぶの薄暗い道を通っていくと、すうっと二人の頭の上に、お化けが飛びついてきました。それも人形だとわかったので、怖くはありません。奥へ進んでいくと、いろいろなお化けが出てきましたが、二人は平気です。
どんどん進んでいくと、大きな怪物の首が竹やぶの中からニュッと現れました。
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