アルカージナ (おびえた声で)いったい何の音かしら!?
ドールン (落ち着いた様子で)なあに、心配いらないよ。
きっと僕の薬カバンの中で、何か薬の瓶でも破裂したんだろう。
なんともないさ。
(そのまま右手のドアから出ていき、半分ほどの時間が経ってから戻ってくる)やっぱりそうでした。
エーテルの小瓶が割れて破裂したんです。
(機嫌よく歌を口ずさみながら)「われ、ふたたびおんみの前に、うっとりと恍惚(こうこつ)として立つ」……
アルカージナ (ほっと胸をなで下ろしながらテーブルへと駆け寄り、座る)ふぅ、ものすごくびっくりしちゃった。
昔の嫌な事件のことが、つい思い出されちゃって……(両手で顔を覆う)目の前がまっ暗になったわ……
ドールン (雑誌のページをめくりながら、トリゴーリンに話しかける)そういえばこれに、二ヶ月ほど前のアメリカからの通信記事が載っていましてね、ちょっとあなたにお聞きしたいと思っていたんですよ、その中の記事でね……(トリゴーリンの腰に手を回し、ステージの照明がよく当たるほうへ連れていく)……なにしろ僕、この問題にはすごく興味があるものでね……(声をグッと低くして、耳打ちするように小声で)ちょっとアルカージナさんを別の場所へ連れていってください。
じつはね、トレープレフ君が、ピストルで自殺してしまったんです……。
――幕――
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