初級翻訳・一寸法師 第35話

一寸法師

一寸法師が普通の人間に化けていたとき、その足が本物の義足ではなく、木で作った人形の足だったからです。
特別な工夫が凝らされていて、曲がる部分など実にうまくできていました。
奴がいつも靴を履いていたのは、そのためですよ。
そんな物を作れるのは、人形師の他にはいないでしょう。
つまり、この安川と一寸法師とは、十年来の腐れ縁に違いないのです」
「だが、明智君。どうも変だね」田村検事はふと何かに気づき、明智の説明を遮りました。
「僕の頭がどうかしているのかな。そんなことは不可能に思えるんだ。
もし小松が被害者だとしたら、例の一寸法師が持ち歩いていた腕は誰のものなんだ?
小松が家出したのはつい二、三日前で、百貨店事件の時にはまだ山野家にいたではないか。
そこに時間的な矛盾があるように思うのだが」
「ですが、事件のあった翌日から、小松は病気になりました。
そして、人に顔を見られることを怖がるようなところがあったんです。
僕が彼女の病床を見舞った時も、枕に顔をうずめて、僕の方を正視しようとしませんでした。
そればかりではありません。彼女の無造作に投げ出された指には、マニキュアが塗ってあったんですよ。まるで令嬢の指のように」
「では、まさか……ああ、そんな馬鹿なことがあるだろうか……」
「僕も最初はまさかと思っていました。
ですが、これを見てください。この写真に気づいた時から、僕の意見は確定したのです」
明智はそう言って、台の上から山野家全員が写った写真を取り、田村検事や刑事部長の方へ差し出しました。
そこには、三千子の顔に妙ないたずらが施されていました。
彼女の眉をすっかり白い粉で塗りつぶし、その下に眼鏡の枠が書き加えられていたのです。
それを見ると、田村検事と刑事部長は顔を見合わせ、感心したように「似ている」とつぶやきました。
「似ているでしょう。
三千子の眉を消して、眼鏡をかけさせ、技巧たっぷりの表情を少しおとなしくさせれば、小松と見分けがつきません。
それも道理です。小松というのは、実は山野氏の隠し子で、三千子とは姉妹なのですから。
ただ、一方はおとなしやかな無表情、もう一方は技巧たっぷりのおてんば娘なのと、それに髪の形や眼鏡、眉が違うので、一見しただけでは気づかないだけです。
わかりますか? つまり三千子はあの晩、恋敵の異母妹と言い争った末、激情のあまり、ついあんなことをしてしまったのです」石膏像(せっこうぞう)を投げつけて、はずみで相手を殺してしまったのです。そして、とっさの出来事に、小松に化けるという驚きのアイデアを思いついたというわけです」

「それはどういう意味かね。小間使いに化けてみたところで、罪が消えるわけでもあるまいが」

「先ほどもお話しした北島春雄という、命知らずな男がいました。ちょうどその前日、彼は刑務所を出て、三千子さんに不気味な予告のハガキを出していたのです。失恋に心が狂ってしまった男です。殺されるかもしれない……三千子さんはその日も、この危険な男のことで頭がいっぱいでした。そんな時にあの悲劇が起きたものですから、一つには北島の復讐を逃れるため、一つには小松殺しの疑いを避けるため、そしてもう一つには、山野夫人に継子(ままこ)殺しの疑いを着せるため、どう考えても都合のよい『変装』という妙案を思いついたのです。三千子さんが探偵小説の愛読者だったことを考え合わせれば、彼女の心理や手口もよく理解できます。先ほども言ったように、三千子さんの書棚は国内外の探偵小説で埋め尽くされていましたからね。死体をピアノに隠したのも、ゴミ箱のトリックも、夫人の部屋へ偽の証拠を作ったのも、すべて彼女の知恵なんです。例のゴミ収集車を引いていた作業員は、恋人の蕗屋が変装していたんですよ」

「それを家中の誰も知らなかったというのは、おかしな話だね」

「いや、たった一人だけ知っていた人物がいます。それは三千子さんの父親である山野氏です。ちょうど事件が起きたときに洋館にいたのですからね。山野氏は家名を重んじる厳格な人だけに、かえって三千子の計画に同意したのです。そして、三千子と一緒になって、すべてを秘密の闇に葬り去ろうとしました。小松に化けた三千子に金を与えて家出させたのも、養源寺の和尚や蕗屋を買収したのも山野氏でした。山野氏のそのようなやり方が、結果として夫人の疑いを招き、事件をより複雑にしてしまったのです」

「すると、例の不具者は、小松の死体を埋めることを引き受けて、その立場を利用して山野氏からは金をゆすり取り、一方で夫人を脅迫していたわけだね」

「その通りです。山野氏にしてみれば、あの坊主がまさかあんな悪党だとは知らなかったのでしょう。なぜか非常に親しい仲でしたから。不具者はうまく入り込んでいたのでしょうね。それに、これまでずっと援助を与えていた関係があるので、事情を明かして頼めば、まさか裏切るようなことはあるまいと考えたのでしょう」

「実に複雑な事件だね。だが、君の説明で大筋は理解できた。それでは、約束通り犯人を引き渡してもらうぞ。一体、三千子はどこに隠れているのだ」

刑事部長は、ようやく自分の大切な役目を思い出したかのように、厳格な口調で言いました。

「引き渡すことは引き渡しますがね」明智は沈んだ様子で答えました。「三千子さんも気の毒なんです。ふしだらな点は確かに彼女が悪かったのですが、複雑な家庭に育った一人娘であることを思えば、こうなったのも彼女だけの罪ではありません。それに、彼女は今、深く自分の行いを悔いています。人を殺したといっても過失に過ぎませんし、田村さん、このあたりの事情をよく汲み取ってやってくれませんか」

「分かった、分かった。なるべく君の希望に沿うようにしよう。とにかく早く犯人の居場所を教えてくれ」

「なに、三千子さんはこの家にいるのですよ」

明智が合図をすると、住居の方の障子が開き、そこから明智の部下と、小間使い姿の三千子、そして驚いたことに運転手の蕗屋までが一緒に現れました。三千子は悲しげに泣きぬれて、顔を上げる力もありませんでした。

「蕗屋君も最初からこの家にいたのです」人々の不思議そうな顔を見て取って、明智が説明しました。「これもやはり山野氏が養源寺の和尚を過信した結果なのですが、死体を運んだ蕗屋君は、やはり共犯者に違いありません。和尚が勧めるままに、かくまってもらっていたのです。一寸法師からすれば、何かまた悪だくみでもあったのでしょう。この家の裏手の納屋を急ごしらえの隠れ家にして、三度の食事もそこへ運ばせることにしていました。そして蕗屋はそこで、三千子扮する小松が家出してくるのを待っていたのです。殺されたのが(実は)三千子だったと分かれば、それで三千子の化けた小松の用事は済みますからね。山野氏は適当な時期を見計らって、三千子扮する小松を家出させ、ここで蕗屋と落ち合うことにしたのです。三千子が山野氏の令嬢ではなく小間使いということにしておけば、運転手と一緒になっても、それほど体裁が悪くありませんからね。

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