初級翻訳・地底戦車の怪人 第18話

地底戦車の怪人

お前たちはそれでもアメリカ飛行隊の勇士か! よくまあ恥ずかしくないものだ」
司令は再びひどく不機嫌になった。司令がガミガミ言うのを聞いていたピート一等兵は、思わず興奮して叫んだ。
「司令! 自分は撃墜しました!」
「おお、お前はピート一等兵だな。それはでかした! 何機撃墜したか?」
パイ軍曹は驚いて、ピート一等兵の服を引っ張った。しかし、もう手遅れだった。
「はい。あのう、二機であります」
「おお、二機もやっつけたか。それは抜群の手柄だ。よし、あとで褒美をやろう。昇進も上申してやるぞ」
ピート一等兵が撃ち落としたのは日本機ではなく味方の飛行機であることを、司令は知らないものだから、やけにピートを褒めちぎり、すっかり上機嫌になった。横にいたパイ軍曹は驚いて、他人事ながら気が遠くなり、ぶっ倒れそうになった。司令が本当のことを知ったら、ピート一等兵はどんな重い懲罰を受けるか知れない。大嵐の前の静けさとは、まさにこのことだ。いくらこれまでいじめてきた部下とはいえ、これから彼に下るであろう懲罰を考えると、かわいそうでならなかった。

そのとき、司令が叫んだ。
「勇士ピート一等兵! 五歩前へ!」
ピート一等兵は、エラそうな顔をしてのこのこと前へ出ていった。パイ軍曹は心臓が痛くなった。
「ピートのやつ、どこまでバカなんだ。いよいよ大嵐の始まりだぞ」
すると司令は言った。
「勇士ピート一等兵。二機撃墜のときの状況を述べよ。まず聞くが、お前が撃墜した日本機はいかなる機種のものであったか?」
「え、日本機……?」
ピート一等兵は、ようやく気がついた。
(あっ、しまった。とんでもないことを喋ってしまった。撃墜と言ってしまったから、つい敵味方の区別を忘れて喋ってしまった!)
さあ、困った。
「順序立てなくてよい。話しやすいように話せ」
「うわーッ!」
ピート一等兵は、へどもどと混乱する……。

しかし、ピート一等兵は運が強かった。そのとき、突然、思いがけない騒ぎが起きた。司令のそばへ副官が飛んできたのだ。
「おお、飛行司令。リント少将はこっちに見えていないか?」
「リント少将? 閣下はこっちへ来ておられません。どうかしましたか?」
「いや、一大事だ。さっきの騒ぎのうちに、リント少将の姿が急に見えなくなったのだ。もう調べるところは全部調べた。困ったなあ。君のところも、もう一度念入りに調べてくれ」
「はい、承知しました!」

一大事である。飛行隊員は総動員で付近を探すことになった。――そしてピート一等兵は、味方を撃ったことが司令に知られそうになり、危ういところで助かったのである。ところがそのころ、氷の中の監房でも、不思議な囚人紛失事件が持ち上がっていた。監房の前では、衛兵と、そこへちょうどやってきたパイ軍曹が激しく言い争っていました。

「冗談じゃありませんよ。パイ軍曹殿、早く囚人を返してください。あの『黄色い幽霊』を……」
「わしは知らん」
「知らんでは困るじゃありませんか! 軍曹殿が監房の扉を開けて、囚人を引っ張り出したのですぞ。それからピストルでおどしたり、靴で蹴飛ばしたりしたではありませんか」
「蹴飛ばす理由があったからやったまでだ。そんなことについて、貴様の指図は受けん」
「指図をしているのではありません。黄色い幽霊を返してくださいと申しているのです」
「わしがそんなことを知るものか。囚人の番をするのは貴様ら衛兵の仕事じゃないのか」
「ああ、それはひどい。軍曹殿が囚人を自由にしておきながら……」
「何を言う! 上官に対して無礼者め!」

そう言うやいなや、パイ軍曹は乱暴にも衛兵のあごに鉄拳をガーンと打ち込みました。衛兵は悲鳴を上げて、その場に倒れ込んでしまいました。

そのころ、氷上ではリント少将の姿を求めて、大騒ぎがますます大きくなっていました。
「どこにもおられないじゃないか」
「不思議なこともあるものだな」
「おや、もう一つ紛失したものがあるぞ。ここにあったはずなんだが」
「何がなくなった?」
「地底戦車がどこかへ行ってしまった」
「地底戦車? そんな馬鹿なことが……」と言いながらそこを見ると、なるほど地底戦車がありません。
「一体、これはどうしたんだ」
「うむ、これは容易ならぬ事件だ」

【三つの紛失事件】

リント少将が行方不明となった。囚人の沖島速夫が、いつの間にかどこかへ逃げ出してしまった。そこへもってきて、氷上に置いてあった地底戦車まで紛失してしまった。三つの紛失事件が同時に起きて、アメリカ軍基地は大混乱の渦に巻き込まれていました。

リント少将はどこへ行ってしまったのか。沖島速夫はどこに隠れているのか。そして、地底戦車はどうしたのか。
地底戦車は、地上の大騒ぎをよそにして、このとき氷の下深くで静かに巨体を横たえていました。地底戦車の中で、向かい合って座っている二人の人物がありました。

「……少将閣下。乗り心地はいかがですかな」

そう言っているのは、外ならぬ沖島速夫でした。三つの紛失物――リント少将、沖島、そして地底戦車は、みんな一つところに集まっていたのです。少将は、苦虫を噛み潰したような顔をしています。

「……君が余に要求するものは何か。何がほしいのか。早くそれを言え」
「少将閣下、お考え違いをなさらないように。私は閣下から何かを頂こうとも思っていないのです。ただ、地底戦車の乗り心地をうかがっているだけです」

沖島速夫は、とんでもないことをやってのけました。日本機の襲来騒ぎが始まると、彼は我に返ったのです。騒ぎのせいで監房の入り口は開いたままで、番をしている者はいません。今だと思った彼は氷上へと飛び出しました。そして、とっさに思いついてリント少将を地底戦車の中へ誘い込み、缶詰にしてしまったのです。そのまま素早く氷の中へと潜り込んでしまったのでした。そのとき彼は、一つの素晴らしい計画を思いついていたのです。

「……早く言ってくれ。何でも君の要求に従う。だから外へ出してくれ」
「外へ出せと言っても、今はもう氷の中に入っているのです。お望みならば、このまま海底深くへ墜落してみてもいいのですよ」
「もうわかった。君は余を不名誉極まりない捕虜としたうえ、東洋流の残酷な刑にかけようというのだな」
「残酷なことは、東洋よりもむしろ閣下の国で盛んに行われているではありませんか――しかし、そのように外へ出たいと言われるなら、出して差し上げましょう。しばらく待っていてください」

沖島速夫は、どこまで胆が据わっているのか、ゆうゆうとリント少将に対しているのでした。

【地底戦車はどこへ】

沖島速夫は操縦席にのぼると、地底戦車をギリギリと前進させ始めました。計器の針が一斉に動き出します。囚われのリント少将は(この小僧め)と、沖島の背後からピストルを突き出そうとしましたが、思い直してそのまま引っ込めました。いくらここでピストルを向けてみたところで、どうにもならないからです。

なぜならば、もし沖島を撃って傷つけてしまえば、あとは誰がこの地底戦車を動かせるというのでしょう。

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