「塩田大尉、私と帆村探偵は、首尾よく怪塔王をやっつけてしまいましたから、どうかご安心ください」
と、小浜兵曹長は報告しましたが、それは小浜の勘違いで、怪塔王はやっつけられもせず、相変わらず生きて暴れているのでありました。
帆村と怪塔王との遭遇については何も知らない小浜兵曹長です。そう報告するのも無理はありません。
「そちらの戦闘の様子はどうなっているのか」
これに対して塩田大尉は、敵の大敗北であることを報告したうえで、まだあと一台の敵ロケットがしきりに抵抗していることを伝えました。
「われわれは、その一台を撃ち落とすまでは大いに頑張って戦うつもりだ。そのうえで白骨島へ突入する考えだ。そこは怪塔王の根拠地だからな」
「あっ、こちらへ来られるのですか。それはますます嬉しいです。まったくこの白骨島は、いかにも怪塔王の巣らしくたくさんの謎に満ちており、そしてまた、いろいろな武器もあるようですよ」
そう言って兵曹長は、いままでに見たり聞いたりしたことを、いろいろと並べ立てました。
それが秘密艦隊にとって、どれほど有益な報告だったか言うまでもありません。
艦隊では、いよいよ白骨島を最後の目的地として進むことになりました。そうなると、いまのうちに早く敵のロケットを撃ち落とさなければなりません。
空からは飛行機隊が、海面からは艦艇が力を合わせて、最後のロケットめがけて攻めかけました。
このロケットは、磁力砲の役に立たなくなったことを早くも察して、いまは逃げる一方です。ロケットの尾部から黒いガスを出して煙幕を張り、逃げること、その逃げること。
3
いま、どちらも鬼ごっこをしています。
磁力砲も機関銃も撃たず、もっぱらロケットは逃げることに一生懸命ですし、秘密艦隊の方ではそれに追いつくことに必死です。
そうこうするうちに、この恐ろしい鬼ごっこはだんだんと白骨島に近づいてきました。
塩田大尉はそれを小浜兵曹長のところへ、さかんに知らせてきます。
それを聞いていた小浜兵曹長は、こちらもなんとかしてこの怪塔ロケットを飛ばさせ、向こうから逃げてくる敵の隊長ロケットを迎え撃ちたいと思いました。
兵曹長は黒人たちのところへやってきて、「まだこの怪塔ロケットは動かないのか」と聞きました。
「いや、なかなか動きません。こんなに壊れているのですから、考えてもおわかりでしょうが、直るまでにはなかなか大変です」
黒人たちはそう言いました。それで早く直しにかかるのかと思いきや、そうでもありません。いやいやながら壊れたところを直しているといった様子が、手にとるように見えます。
これを見て兵曹長は、心中むっといたしました。この調子では、怪塔ロケットの修理ができあがるのはいつのことやらわかりません。
そこで兵曹長は考え、黒人たちに向かって言いました。
「お前たち、壊れたところを早く直した者には自由を与える。つまりお前たちの生まれた国へ、安全に帰してやる」
「え?」と、黒人たちは驚き顔です。
「早く直した者は、奴隷から許されるのですか。自由の身にして、帰してくれるのですか。それは本当ですか」
「そうだ、そのとおりだ」
それを聞くと、黒人たちはたちまち別人のようになり、互いに、ばたばた、こちんこちんと機械の修理にかかりました。ロケットはまもなく直るでしょう。
4
黒人たちがわれ先にと大騒ぎをして、怪塔ロケットの悪いところを直すことにかかっていたとき、怪塔の入り口からぶらりと入ってきたのは、ほかならぬ大利根博士でありました。
「誰だろう?」
黒人たちは目をぱちくりさせています。
大利根博士はまったく知らぬ顔をして、階上の無電室へ登っていこうとします。そのとき、小浜兵曹長はこれを見つけて、
「とまれ! あなたは誰ですか」
と、殺人光線灯を向けました。
「やあ、君のことかね。いま向こうの洞穴の中で、帆村君から聞いてきたよ。僕の一身のため、まことに済まないことをした」
「あなたは誰です。どこかで見たことのある人だが」
「わしのことか。君にわからないというのは、たいへん残念だ」「わしは大利根じゃ」
「えっ、大利根博士!」
小浜兵曹長は、驚きのあまり目を大きく見開きました。
「そうだ、はっきりと覚えている。軍艦をはじめ、あちこちでお目にかかった大利根博士だ。博士、私たちはあなたが怪塔王に殺されてしまったものとばかり思っていました」
そう言いながらも、兵曹長は博士の顔からじっと目を離しません。
「そう思うのも無理はない。なぜか怪塔王は、わしが死んだことにしたかったのだ。わしは突然研究室に飛び込んできた怪塔王たちに捕まり、この島へ連れてこられた。そしてあの洞窟の中に閉じ込められ、ひどい目に遭っていたよ。さっき帆村探偵に救い出されたんだ、これほど嬉しいことはない。だがよく聞いてみると、君が飛行機でこの島へ飛んでこなければ、このような勝利は得られなかったとのことだ。いや、お手柄だ、お手柄だ」
大利根博士は、しきりに小浜兵曹長を褒め称えます。
博士に褒められて、小浜兵曹長は悪い気はしませんでしたが、あぶない、あぶない。博士の目はきょろきょろと落ち着きがありません。
5
怪塔ロケットの中です。小浜兵曹長は、秘密艦隊との連絡を終えて、ほっと一息ついたところでした。そこへ思いがけず大利根博士が訪ねてきたので、喜びが二倍に膨らみました。兵曹長は、まさか大利根博士があの恐ろしい怪塔王だとは知る由もなく、心から博士を信じきっています。
ああ、危ないことです。何か間違いが起きなければいいのですが――。
大利根博士は、小浜兵曹長の隙を見つけてやっつけてやろうと、目をぎょろつかせています。ちょうどその時でした。窓の外で突然、激しい音が聞こえだしました。
プルッ、プルッ、プルッ。
シュー、シュー、シュー。
そして何か、稲妻のような白い光が、小浜兵曹長の目をさっと射しました。
「ああ、なんだろう」
兵曹長は、すぐに窓のところへ駆け寄りました。彼の顔つきが、急に険しくなります。
「あっ、ロケットだ。ロケットが島へ帰ってきた!」
「えっ、ロケットが島へ帰ってきたって?」
大利根博士も続いて窓のところへ寄りました。なるほど、間違いなくロケットです。西太平洋の空で、秘密艦隊のためにあべこべ砲で手ひどくやっつけられたロケット隊の、生き残りの一台です。
「おお、あれは隊長の乗っているロケットだ!」
大利根博士は、思わずそう叫びました。
「えっ、隊長機? 隊長とは、誰のことですか」
兵曹長は博士の言葉を聞き逃さず、問い詰めました。
「隊長機――というのは、つまり怪塔王の部下で一番えらい奴が、隊長として乗り込んでいるロケットだ――どうだね、小浜君、あのロケットが着陸するのを待って取り押さえては――」
光るロケット
1
隊長機のロケットを取り押さえてはどうだと、大利根博士(実は怪塔王)に言われて、小浜兵曹長は大きくうなずきました。
「そうだ。よろしい、あのロケットを取り押さえよう。これはすばらしい獲物だ!」
いつ、どんなときにも恐れを知らない勇士・小浜兵曹長は、この白骨島に不時着して以来、腕が鳴って仕方がないところでした。
コメント