初級翻訳・怪星ガン 第6話

怪星ガン

「君は、モリか」
「森です」火傷を負った男は苦しそうにあえぎながら言いました。
「艇長……これを発火現場で見つけました。本艇の出火は、これが原因です」
「これは何だ」
「強酸と金属を使った発火装置です。艇長、本隊の作戦を失敗させようという陰謀があるに違いありません。他の艇にも、こんなものが仕掛けられているかもしれません。至急、僚艇へ警告してください」
「うん、わかった。すぐ司令艇へ報告する」
艇長は痛む胸を押さえて振り返り、テレビ電話の方を見ました。
映写幕には、司令艇の隊長テッド博士の顔が大映しになっており、博士は「わかった、早く退避せよ」と目で合図を送っています。
少佐はホッとしました。
「報告は済んだ。モリ、さあ僕と一緒に、早く艇から脱出しよう。君の空間漂流器は……おお、これを着ろ」
少佐は自分の漂流器を森に着せようとしました。
「それはいけません。艇長の深い情けに感謝します。しかし私はもうダメです。助かりっこありません。艇長、私にかまわず、早くこの艇を離れてください」
「そんなことはできない……」
「艦長、早く艇を離れてください!」
森は最後の力を振り絞って立ち上がると、漂流器を少佐にかぶせました。
それから操縦室の床にある自動開扉のボタンを押すと、床がぽっかりと開き、その穴の中へ少佐の体を押し込みました。
すぐその外には、真っ暗な宇宙が広がっていました。
漂流器にはまった少佐の体は、ついに艇を離れました。
艇はものすごい速度で落下していたため、頭を下にして急行列車のように少佐のそばをすり抜け、下の方へと落ちていきました。
それから十五分後、恐ろしい第二の大爆発が起こり、第六号艇は無数の火の玉となって空中へと飛び散りました。
事件の原因を突き止めた倉庫員の森もまた、その火の玉の一つとなったことでしょう。
救う者、呪う者、そして魔力を振るう者。
大宇宙を舞台に、奇々怪々な物語はまだまだ続いていきます。危機一歩まえ

 三根夫少年も帆村荘六探偵も、第六号艇の悲惨な最後を涙とともに見送りました。
「おじさん、第六号艇は自然に爆発したのでしょうか? それとも、誰か悪い人間がいて爆発させたのでしょうか」
 三根夫は、どうも様子がおかしいと感じて、帆村にたずねました。
「さあ……今のところ、どちらとも言えないな」
 帆村探偵は首を横にふり、少し考え込んでいましたが、やがて「うむ、そうか。これは気をつけなければならない」とつぶやき、顔色を白くしました。
「やっぱり、悪人がいるんですか?」
「うむ。ミネ君に言われて気づいたんだが、六号艇が爆発した中心部を考えると、どうしても自然爆発が起こったとは思えないんだ。あそこは絶対に安全な場所だった……だから、時間の関係から考えても、これは時限爆薬で爆発させられたものと見て、まず間違いはないだろう」
 さすがは名探偵です。爆発がどの場所で起こったかを見落とさず、その位置から、これが事故ではなく他人の陰謀による大惨劇であることを推理したのです。
 このことは、あとに六号艇の艇長ゲーナー少佐が救助されたことで、はっきりしました。空間漂流器に身をまかせ、極寒の真っ暗な空間をあてもなく漂っていた六号艇の乗組員たちは、六名の犠牲者を除いて、全員が他の船に助けられました。
 そのうちの一名は、自ら艇と運命をともにした倉庫員のモリであり、他の五名は、六号艇が爆発したとき、ものすごい勢いで飛び散った破片によって、不幸にも漂流器を壊されたり、致命傷を負ったりした人々でした。
 救助のときは壮観でした。九台の僚艇すべてが六号艇の遭難現場のまわりに集まり、四方八方から強力なライトで照らしました。あたりは光の海と化しました。六号艇から吹き出る火災の煙が、地上の場合とは反対に、照明を助ける役割を果たしました。顕微鏡で見る微生物のような形をした空間漂流器が、明るく光ります。それを目当てに、救助作業がはじまったのです。
 しかし、六号艇が爆発して飛び散ったときには、誰もがヒヤッとしました。破片が飛んできて、自分の船をぶち壊すのではないかと、肝を冷やしたのです。ですが幸いにも、それによる損傷は免れました。
 ゲーナー少佐は、司令艇に救助されました。救援隊長のテッド博士は、少佐を迎え入れると、しっかりと抱きしめました。
「けがはないのかね」
「たいしたことはありません」
「ほう、やっぱりけがをしているんだね。ドクトル、手当を頼みます」
 医局長がすぐに手当にかかりました。少佐は両手と左脚を負傷していました。手のほうは火傷でした。
「隊長、倉庫員のモリが重大な発見をしたのです。それは……」
 少佐は傷の手当が終わるのを待てないという様子で、隊長に報告をはじめました。隊長テッド博士は非常におどろきました。そばで聞いていた人々も顔色を変えました。報告を聞き終えた隊長は、何かを思うと何も言わず、急いでその場を去りました。そして司令室に入りました。
「至急の命令だ! 各艇に時限爆薬が隠されている恐れがある。各艇はすぐさま艇内を全部調べろ。六号艇の爆破の原因は、時限爆薬のせいだとわかった!」
 隊長は僚艇に無線で命令を伝えました。確かにその恐れはありました。六号艇だけが特別に狙われる理由はないからです。ですから、時限爆薬が他の九台の艇にも隠されている可能性は十分にあったのです。
 この命令を受けた各艇は震え上がりました。そんな物騒なものがあっては一大事です。各艇は総員を集め、大至急で艇内の捜査をはじめたのです。
 その結果、隊長テッド博士の素早い命令が功を奏したことがわかりました。第二号艇と第三号艇、そして博士が乗っている司令艇の三台に、やはり時限爆薬が隠されていたことが判明したのです。その危ない「お客さま」は、ただちに艇外へ放り出されました。それは木箱に入っており、機械の部品を入れた箱のように見えました。あと五分、探し出すのが遅ければ、司令艇も六号艇と同じ運命をたどっていたことでしょう。実に危ないところでした。

 社会事業家ガスコ氏

 艇内捜査と時限爆薬の処理が済んだあとで、艇長テッド博士は数名の幹部とゲーナー少佐、そして特別に帆村荘六を招き入れました。
「集まってもらったのは他でもないが、先ほどの時限爆薬事件だ。なぜあんなものが隠されていたのか、これについて諸君の意見を聞かせてもらいたい」「じつにこれは、憎むべき陰謀事件であるからねえ」

そこで一同は、あの事件のてんまつを振り返り、さまざまな意見を述べ合って、事件の背後に何者かが隠れているのではないかと探し出そうとしました。

「出航のまえに、じゅうぶん調べたんだがなあ。まったくふしぎだ」
「密航者がいないか調べたときに、怪しい品物がまぎれこんでいないかも、いっしょに厳重に調べるよう各艇に伝えていたんですがねえ」
「もし、そういう品物がまぎれこんだとすれば、それはやはり出航のすぐまえのことだと思います。乗組員の家族が面会に来て、艇を出たり入ったりしましたからねえ。もしそういうすきがあったとすれば、それはそのときですよ」

これは帆村荘六の意見でした。

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