そして、その部屋の中から、何やら怪しい物音が聞こえてきます。
「あの部屋だ! のぞいてみよう」
二人はドアのところまで行くと、そっと中をのぞき込みました。
すると、その洋間のテーブルの下に、かわいらしい女の子がぐったりと倒れているではありませんか!
倒れていたのは、ピンクの洋服を着た、十二、三歳くらいの女の子でした。
「どうしたの? 誰にこんな目に遭わされたんだい?」
小林君はすぐに駆け寄ると、女の子を抱き起こして優しく尋ねました。
女の子はよほど怖い思いをしたのでしょう、ショックで言葉も出ない様子です。
ただ、隣の部屋を指さすばかりでした。
女の子が「あっち、あっちに……」と言うように指さすので、その方向を見てみると、隣の部屋へと続くドアが半分開いていました。
きっと、あのロボットの仕業です!
あいつが女の子を突き倒して、あの部屋の中へと入っていったに違いありません。
小林君は、またノロちゃんの手を引っ張って、その部屋へと入っていきました。
驚いたことに、その部屋はなぜか夜のように真っ暗でした。
窓のよろい戸が全部閉められているせいで暗闇に包まれていましたが、天井と、床に近い壁のところに、電灯が一つずつ灯っていて、こちらに向かって強い光を放っていました。
「あっ、いた、いた! あいつだ!」
ノロちゃんはギョッとして、またしても逃げ出しそうになりました。
部屋の隅に、あの不気味なロボットがニューッと立っていたからです。
消えるロボット
二つの電灯がこちらを照らしているため、その光の向こう側は真っ暗で見えません。
そこに、あの不気味なロボットが立ちはだかり、こちらをじっとにらみつけているのです。
「小林さん、もう帰ろうよぉ。ぼく、怖いよ……」
ノロちゃんが、今にも泣き出しそうな声で言いました。
でも、小林君はノロちゃんの手をしっかりと握ったまま、絶対に離しません。
そのとき、信じられないほど恐ろしいことが起こりました。
ロボットが右手を高く上げ、サッと一振りすると、なんとその手がどこかへ飛んでいってしまい、消えてしまったのです!
二人があっけにとられて見つめていると、今度は左手をサッと振りました。
すると、やはり左手も体からちぎれて、どこかへと飛び去ってしまったではありませんか!
両手がなくなってしまったロボットは、しばらく電灯の向こう側を行ったり来たりしていましたが、今度は右足を、まるでバレエでも踊るようにパッと高く上げました。すると、その右足までもがどこかへ消えてしまったのです!
あとに残されたのは、左足が一本だけです。
一本足のロボットになってしまいました。
昔の本に載っている、一本足の妖怪の絵とそっくりです。
あまりの不思議な出来事に、二人の少年は一歩も動けなくなり、まるで夢でも見ているような気持ちで、その「おばけロボット」をじっと見つめていました。
一本足のロボットは、ピョイ、ピョイと左右に飛び跳ねていましたが、ついにその一本足までもが、ヒューッとどこかへ飛び去って消えてしまいました。
手も足も完全になくなってしまったロボットの、首と胴体だけが、床に落ちることもなくフワフワと宙に浮かび、ユラユラと揺れています。
「エヘヘヘヘヘ……」ロボットの口が、三日月のようにキューッと横に広がり、不気味な笑い声をあげました。
そして、その笑い声がまだ響いているうちに、またしても、今度は……。
あっと思った瞬間、なんとロボットの胴体が、まるでかき消されるように消えてしまったではありませんか!
あとに残されたのは、角ばったロボットの首だけで、それがフワフワと宙に浮いているのです。
しかもその首が、三日月のような形をした口をパクパクと動かし、ヘラヘラと笑いながら、空中をスーッとこちらに向かって近づいてくるではありませんか。
ロボットの首だけがヘラヘラ笑いながら空中をスーッと近づいてくるのを見て、怖がりのノロちゃんは、たまらず小林君にがばっと抱きつきました。
「うわあ……! 助けてくれえ……!」
と、大声で悲鳴をあげました。
さすがの小林君も、これにはゾッとして気味が悪くなってきました。
けれども、小林君は絶対に逃げ出したりはしません。
この世の中に、お化けなんて絶対にいるはずがないと信じていたからです。
ロボットの首が宙に浮いているのも、きっと何か科学的な仕掛けがあるに違いないと考えたのです。
だから、怖がって震えるノロちゃんをしっかりと抱きしめながら、空中をふわふわと漂っているロボットの首を、じっと鋭く睨みつけました。
小林君は、名探偵・明智小五郎の頼れる助手として、これまでに『透明怪人』や『宇宙怪人』といった恐ろしい大事件をいくつも解決してきました。こんな不思議な出来事には何度も出会って慣れているため、本当はそれほど怖いとは思っていなかったのです。
首だけのロボットは、小林君の鋭い視線に睨まれてひるんだのか、スーッと向こうの方へと遠ざかっていき、そのまま、パッとかき消えるように見えなくなってしまいました。
【知恵くらべ】
しばらくそのままで待っていましたが、もう何も現れません。
ロボットは本当に、この部屋から完全に消え去ってしまったようでした。
「ノロちゃん、もう大丈夫だよ。ロボットはいなくなったよ」
ノロちゃんはぎゅっと目を閉じて、小林君にしがみついたままでしたが、それを聞いて、おずおずと目を開けました。
そして、キョロキョロと部屋の中を見回していましたが、そのとき、またしても何かを見つけたのか、いきなり「ぎゃっ!」と小林君にしがみついてきました。
びっくりした小林君が、ノロちゃんの視線の先を見てみると、ノロちゃんが驚くのも無理はありませんでした。
なんと、電灯の光の向こう側にある暗闇の中に、今度は人間の首だけが、スーッと浮かび上がっているではありませんか!
今度はロボットではなく、本物の人間の首が空中に現れたのです。
白髪の頭に、白いひげを長く伸ばした、おじいさんの首でした。
その顔には、キラキラと光るメガネをかけています。
おじいさんの首だけが宙をフワフワと漂っているのですから、これほど不気味で恐ろしい光景はありません。
けれども、小林君はやはり逃げ出しません。
じっと落ち着いて、その白髪のおじいさんの首を睨みつけていました。
首だけのおじいさんは、しばらく空中をユラユラと揺れていましたが、突然、パッと首の下に胴体が現れました。あれっと思っていると、今度はその胴体の下に右脚がくっつき、左脚がくっつき、それから両方の肩に右手、左手と、まるでどこかから飛んできたかのように、次々と手足がおじいさんの体に吸い寄せられてくっついてしまいました。
そうして、あっという間に、一人のきちんとした人間ができあがってしまったのです。
グレーの洋服を着た、白いひげをたくわえた、とても上品で立派なおじいさんでした。
「ハハハハ、感心、感心! さすがは少年探偵団の団長だな。よく逃げ出さずに我慢した、偉いぞ。それに引き換え、もう一人の子は、ずいぶんと怖がりだね。
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