船はそれから、どんどん、どこまでも走り続け、ついに世界の果ての陸地へとたどり着きました。
ウイリイは船から上がると、百台の車に百樽の肉とパンを積ませ、二百本の革綱をつけて、二百人の水夫たちに二人ずつで引かせて進んでいきました。
すると、向こうの方で、大勢の狼と大勢の熊が空腹のあまり、激しい大げんかをしていました。
みんなが牙をむき、爪を立てて噛み合い、ひっかき合っているので、ウイリイたちはそこを通ることができません。
ウイリイはそれを見て、車から百樽の肉を下ろして投げ与えました。
みんなは喜んで、すぐにけんかをやめて道を通してくれました。
そこからまたどんどん進んでいくと、今度は大勢の大男たちが、これまた食べ物に飢えて、たった一塊のパンを奪い合い、恐ろしい大げんかをしていました。
ウイリイは機転を利かせて、すぐに百樽のパンを与えました。
大男たちは大変喜んで、ぺこぺことおじぎをしました。
「私たちはちょうど百年の間、けんかをしていたのです。おかげでやっと食べ物にありつけました。このお礼にはどんなことでもいたしますから、御用があるときは何なりとおっしゃってください」と彼らは言いました。
ウイリイはそこから水夫たちをみんな船へ帰し、今度は犬と二人きりで先へ進んでいきました。
すると、ずっと向こうの方に、きれいなお城がキラキラと太陽の光を浴びて輝いていました。
犬は言いました。
「この辺りでしばらく待っていてください。あのお城の周りには毒蛇と竜がいっぱいいいて、近づくものをみんな殺してしまいます。しかし、その毒蛇も竜も、一日の中で一番暑い時間に三時間だけ眠りますから、その時を狙ってこっそりと通り抜ければ大丈夫ですよ」
ウイリイはその通りにして、犬と一緒に無事にお城の中へ入りました。城の門も、中にある扉も、すっかり開け放たれていました。
四
ウイリイは犬を外に待たせておいて、大きな部屋をいくつも通り抜け、一番奥の部屋に入りました。そこには、金色の鳥が一羽、すやすやと眠っていました。
その鳥の羽根は、ウイリイが最初に拾った羽根と同じものでした。
ウイリイは犬から教わっていた通り、そっとその鳥のそばへ近づき、しっぽについている一番長い羽根を引き抜きました。
鳥はびっくりして目を覚ましたかと思うと、たちまち一人の美しい王女の姿に変わりました。
それこそが、あの羽根の絵に描かれていた王女でした。
「あなたは私の熊や狼のそばを、よく通り抜けて来ましたね」と王女が言いました。
「肉をどっさりやりましたら、通してくれました」とウイリイは答えました。
「それでは、私を囲んでいる大男たちのところはどうやって通り抜けたのです?」と王女が聞きました。
「パンをどっさりやりました」
「毒蛇と竜の前は?」
「みんなが寝ている時に通り抜けました」
「あなたは一体、何のためにここへ来たのですか?」
「実は私の王さまが、ぜひあなたを王妃にしたいとおっしゃるので、はるばるお迎えに参りましたのです。どうか私と一緒にいらしてください」とウイリイは言いました。
王女は、「それでは明日、一緒に出発しましょう。ですが、とにかくあちらへ行って食事をしましょう」と言いました。
ウイリイは王女の後について、立派な大きな広間へと降りました。そこには、さまざまなごちそうが載ったお皿がずらりと並んでいました。
ウイリイは犬からよく言い聞かされていたので、最初の一皿だけを食べ、あとの料理には一切手をつけませんでした。
食事が終わると、王女はあちこちの部屋を案内してくれました。何を見ても目が覚めるような美しいものばかりでしたが、不思議なことに、これほど大きな城の中に、さっきまで鳥の姿をしていたこの王女以外、誰一人として人の姿はありませんでした。
王女は最後に立派な寝室へ連れて行き、「ここにある寝台のどれなりと、お休みになってください」と言いました。
しかしウイリイはそれを断り、門のそばへ行って犬と一緒に寝ました。
翌朝、ウイリイは王女のところへ行き、「どうぞ一緒に出発してください」と頼みました。王女は言いました。
「一緒に行くのはいいけれど、その前に、この絹糸のかせの中から私を見つけ出してごらんなさい」
そう言うと、すぐそばのテーブルの上に積まれていた、色とりどりの絹糸のかせを指さし、あっという間に姿を消してしまいました。
ウイリイは犬からあらかじめ教わっていたので、ほかのかせよりもほんの少し色が濃いものを選び出し、ポケットからナイフを取り出して、そのかせを二つに切り離そうとしました。
すると王女はあわてて姿を現し、「それを切られると私の命がなくなってしまいます。どうかやめてください」と頼みました。
王女はそれからウイリイを再び昨日の広間へ連れて行き、一緒に食事をしました。
ウイリイは犬から言いつけられた通りを守り、今回も一番最後に出されたお皿の料理だけを食べました。
王女は最後にもう一度、昨日のように寝室の寝台で休むよう勧めましたが、ウイリイはやはりそれを断り、犬と一緒に門のそばで眠りました。
翌朝、ウイリイは「今日はどうか一緒に出発してください」と王女に頼みました。
王女は「では、その前にこのわらの中から私を探し出してごらんなさい」と言って、わらの一束の中に体を隠してしまいました。
ウイリイはその中から、ほかよりも少し軽い感触のわらを選び出し、またナイフで切るふりをしました。
王女はびっくりして姿を現すと、「そのわらを切られると私の命がなくなってしまうのですから」と言って謝り、「それでは、もう出発しましょう」と言いました。
王女は部屋という部屋の戸に一つずつ鍵をかけて回りました。そして最後には、入り口の門にも鍵をかけました。
それから、すべての鍵をまとめて持つと、ウイリイと一緒に城を後にしました。
二人は長い長い道を歩いて、ようやく海辺に着きました。船はすぐに帆を上げ、もと来た大海原へと引き返しました。
王女はその途中で、城から持ってきた鍵の束を、誰にも気づかれないように海の中へ投げ捨てました。
犬はそれを見て、こっそりとウイリイに耳打ちしました。
ウイリイはすぐに魚たちに頼んで、鍵を探してもらうことにしました。
魚たちは、行きがけにうじ虫をたくさんごちそうしてもらったお礼にと、みんなで一生懸命、海の底を探し回りました。
けれども広い広い海ですから、なかなか見つかりません。魚たちは血眼になって探し続けました。
そしてようやく、最後にのこぎり魚が鍵の束を口にくわえて戻ってきました。
鍵は海の底の岩と岩の間に落ち込んでいたのです。のこぎり魚はそこへ無理やり首を突っ込んで引き出したものだから、すっかりあごを痛めてしまいました。
だから、その魚のあごは、今でも長短ちぐはぐになっているのです。
ウイリイはその鍵を受け取ると、王女に知られないように隠しておきました。
船は長い時間をかけて、ようやく元の港へ着きました。
王さまは王女の姿を見て、大変喜びました。王女は年月の経過も感じさせず、美しさもそのままだったからです。
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