2026-08

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岡本 綺堂

初級翻訳・鼠 第3話

お元さんには、鼠(ねずみ)が取り憑いていると言うのです」「なんだと? なぜそんなことを言うんだ」「お国の話では、お元さんのそばには小さな鼠がいるそうです。いつも見えるわけではないけれど、時々その姿を見かけるのだと。お元さんが縁側などを歩いて...
岡本 綺堂

初級翻訳・鼠 第2話

二人は無言でしばらく顔を見合わせていたが、義助は茶屋の婆さんに向かって小声で尋ねた。「あの毛皮売りのじいさんは何という男だね」「あの奈良井の宿はずれに住んでいる男で、伊平(いへい)と申します」「あの娘の名は」「お糸といいます」それから詳しく...
岡本 綺堂

初級翻訳・鼠 第1話

一 大田蜀山人が書いた『壬戌紀行(じんじゅつきこう)』という旅日記には、木曽街道の「奈良井の宿」の様子がこう記されています。「奈良井の宿場を見渡せば、梅、桜、彼岸桜、すももの花が枝を交え合って咲き乱れ、まるで春の真っ只中にいるような気分にさ...
島木 健作

初級翻訳・黒猫 第3話

あの「図々しい」という言葉では片付けられないような胆の太さだけでも、命乞いをされる資格がある奴だと思った。もし人間であれば、当然どこかの城の主になれるような風格がある。それが野良猫として生きているのは、運命のいたずらに過ぎない。毛の色が少し...
島木 健作

初級翻訳・黒猫 第2話

それでいて、絶えずこちらの顔色をうかがっています。私が無言で嫌な顔をすると、しっぽを股の間に挟んで、よろけるようにして逃げていく。そして、腐った落ち柿なんかを食べているのです。猫は彼らほど卑屈ではありませんが、コソ泥以上に図々しくなってしま...
島木 健作

初級翻訳・黒猫 第1話

病気が少しよくなって、寝ながら本を読めるようになったとき、最初に手にとったのは旅行記でした。以前から旅行記は好きだったのですが、好きなわりにはそれほどたくさん読んではいませんでした。ほかの人と話してみても、旅行記は意外と読まれていないようで...
宮沢 賢治

初級翻訳・黒ぶだう 第1話

子牛が退屈して頭をぶらぶら振っていると、向こうの丘を通った赤狐が風のような速さで走ってきました。「ねえ、散歩に出かけないか?僕がこの柵を持ち上げているから、早くくぐっておしまいよ。」子牛は言われた通り、まず前足を折り、生えたばかりの角を大事...
宮本 百合子

初級翻訳・黒い驢馬と白い山羊 第1話

八月の十五日は晴れた夜が多いものですが、九月の十五夜は、いつも曇りがちです。でも今年は珍しく雲ひとつない快晴で、令子も縁側に座って月見を楽しみました。澄み切って輝く、ゆったりとした大きな月が、ポプラの木の梢の上にのぼると、月明かりにうっとり...
小川 未明

初級翻訳・黒い旗物語 第2話

「昨夜は恐ろしい海鳴りがしたから、何か変わったことが起こると思っていたんだ」と老人が言いました。「よくもまあ、こんな荒波を越えてこの港の近くまでやってきたものだ。何か用があってここへ来たのだろうか」と一人が言いました。「ごらんなさい、あの船...
小川 未明

初級翻訳・黒い旗物語 第1話

一 どこからともなく、おじいさんと子供の二人の乞食が、ある北の港町にやってきました。 季節はもう秋の終わり。日に日に寒さは増し、太陽は南へと遠ざかって、差し込む光も力弱くなっていました。 毎日、渡り鳥たちが、まるで帆柱の林のように立ち並ぶ港...
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