初級翻訳・若草物語 第26話

オルコット ルイーザ・メイ

ローリーは、木立ちの中にあるシダの葉の下に小さな穴を掘ってお墓を作ってくれました。かわいそうなカナリアは、優しいベスの手によって、ポロポロとこぼれる涙と一緒にそっと土に埋められました。その上には青々としたコケが敷かれ、スミレとハコベの花で作った可愛い花輪が、お墓の目印の石の上に飾られました。

その墓石には、ジョーがお昼ご飯の用意をしながら一生懸命に考えた、お別れの詩が書かれていました。

お葬式が終わると、ベスは悲しい気持ちと、さっき食べたエビのせいで胸がいっぱいになってしまい、自分の部屋へと戻っていきました。けれど、朝からベッドが片付けられておらず、ぐちゃぐちゃのままで、横になる場所すらありませんでした。

それでも、お部屋を少しずつ片付けているうちに悲しみもだんだんと和らいできたので、ベスは台所で山のような洗い物を片付けているジョーのお手伝いをしに行きました。

二人はもう、心も体もへとへとになってしまいました。

その頃、ローリーはエイミーを馬車に乗せて、外へと連れ出してくれていました。

さっきの酸っぱいクリームを食べてお腹が気持ち悪くなっていたエイミーは、これで気分転換ができると大喜びでした。

そしてやがて、お母様が家に帰ってきました。三人の娘たちは一生懸命にはたらいていましたし、戸だなをちょっとのぞいてみると、彼女たちの経験の一部は成功していたことがわかりました。
ところが、やっと片づけを終えたというのに、三人はひと休みすることもできませんでした。
というのも、次々とお客さまがやってきて、お茶を出したり、お使いに行ったりと大忙しだったからです。
けれど、露とともにたそがれ時がせまってくるころ、姉妹たちは六月のバラが美しく咲きはじめたポーチに集まりました。
「なんていやな一日だったのかしら。
今日という今日はね。」
ジョーがそう口を開くと、メグが言いました。
「いつもより時間は短く感じたけれど、本当にいやな日だったわ。」
「ちっとも家らしくなかったわ。」と、エイミー。
「お母様と、カナリアがいなかったから、なんだか家じゃないみたいだったわ。」とベスは、涙ぐみながら空っぽの鳥かごを見上げました。
「みなさん、お母様は帰ってきましたよ。ベス、カナリアがほしければ、明日買ってあげましょうね。」と言いながら、お母様も娘たちの仲間入りをしました。
お母様にとっても、この一日のお休みは、あまり楽しいものではなかったようです。
「みなさん、あなたたちの『経験』は、もう十分ですか?」
「あたしは、もうたくさん!」とジョーが言い、ほかの三人も声をそろえて言いました。
「あたしも!」
「お母様は、みなさんがどんなふうに過ごすのかと思って、あえて何もかもほうっておいて出かけました。けれど、今日の経験で、みなさんは家の中を楽しくするためには、それぞれが自分の仕事を責任を持ってやり遂げなければならないということがわかったはずです。ハンナと私だけでみんなの仕事を片付けていれば、あなたたちはさぞ幸福で気楽だったでしょうが、家の中はちっとも上手く回っていませんでしたね。だからこそお母様は、だれもが自分のことばかり考えていたらどんなことになるか、教訓としてみんなに見せておきたかったのです。あなたがたが互いに助け合い、毎日やるべき仕事があれば、ひまになったときその時間はとても楽しく思えるものです。そして苦しいときには互いにがまんし合っていけば、家はどんなに楽しく美しい場所になることでしょう。わかりましたか?」
「わかりました。よくわかりました。」
娘たちは口々に叫びました。
「では、お母様の言うことを聞いて、もう一度、小さな重荷を背負うのですよ。たまには重く思えることもあるでしょうが、それはみんなのためになり、慣れてしまえば軽く感じられるようになっていきます。はたらくことは健康にもいいですし、退屈もしないし、よこしまな心も起こらないものです。身体にも心にも良いことであり、お金や流行の持ち物などよりも、ずっと立派な精神力や自立心をあたえてくれるのですよ。」
みんなは、喜んで働くことに決めました。
ジョーは料理を練習すること、メグはお母様にかわって父様へ送るシャツを縫うこと、ベスはピアノやお人形遊びにあまり時間をとらずに毎日勉強すること、エイミーはボタンの穴かがりが上手になるように努力し、また正しい言葉づかいの練習をすること、とそれぞれに決意を述べました。
「けっこうです。お母様は、今度の経験がうまくいって、本当によかったと思います。もう二度と繰り返さなくてもいいでしょう。でもね、奴隷のように働きすぎることはいけません。働くにも遊ぶにも時間をきちんと決めて、毎日を有意義に楽しく過ごし、時間を上手に使ってその価値を理解するようにしなさい。それができれば、たとえ貧しくても娘時代を楽しく過ごせますし、年をとってからも後悔することなく、この人生を立派に生きていけるのです。」
「よくわかりました。」と、娘たちは、お母様の教訓を深く心にとどめました。

第十二章 ローレンスのキャンプ

ベスは郵便局長さんでした。たいてい家にいて時間を決めて局へ行くことができましたし、鍵を使って小さな扉を開け、郵便物を受け取って配るのが大好きだったからです。
七月のある日のこと、ベスは両手にいっぱいの郵便物をかかえて帰り、家中に配って回りました。
「お母様、はい、花束よ。ローリーは一度も忘れずに届けてくれるのね。」と、ベスは花束を受け取ってお母様の大きな花瓶にさしました。
「メグ姉さんには、手紙が一通と、手ぶくろが片っぽ。」
メグはお母様のそばに座ってシャツの袖口を縫っていましたが、言いました。
「あら、両方忘れてきたのかしら。お庭に落としてきたりしていない?」
「いいえ、郵便局には片っぽしかなかったわ。」
「片っぽだけなんていやだわ。でもそのうちに片っぽも見つかるでしょうね。あたしの手紙は、ドイツの歌を訳したものがはいっているだけ。きっとブルック先生がなさったのね。」
「ジョー博士には、手紙が二通と、本が一冊、それにおかしな古帽子。帽子は大きくて、郵便局のボックスからはみ出していました。」
ベスは、書斎で何か書き物をしているジョーに、笑いながら言いました。「もう、ローリーったら意地悪なんだから! 私が『日焼けしたくないから、大きな帽子が流行ればいいのに』って言ったら、『流行なんて気にしないで、大きな帽子をかぶればいいじゃない。あったら本当にかぶるかい?』なんて言うから、あったらかぶってやるって約束しちゃったのよ。いいわ、それなら本当にかぶって、流行なんてちっとも気にしていないところを見せてやろうじゃない!」

ジョーはそのおかしな帽子を近くにあった胸像の頭にひょいと引っかけると、さっそく手紙を読みはじめました。

それはお母様からの手紙で、ジョーの目はうれしさでキラキラと輝きました。

『愛するジョーへ。あなたが怒りっぽいところを一生懸命におさえようと、がんばっている姿を見て、お母さんは本当にうれしく思っています。

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