あの頃から自分は正しく生きようと心がけてきたつもりだったが、振り返ってみれば、まだ後悔することばかりだったかもしれない。
若い者たちはこれからの人生をかけがえのないものとして大切にし、本当に有益で、正しい道を歩まなければならないだろう……とおじいさんは思ったのでした。
「あなたの言いたいことがよくわかりました。
この家の奥さんにも、子供をむやみに叱らないようによく注意しますし、みんなが幸せに暮らせるように、私の力でできる限りのことをして見せましょう」
とおじいさんは力強く誓いました。
気づくと、白い天使の姿はどこへともなく消えていなくなっていました。
それから間もなくして、この家に待ちに待った赤ん坊が生まれました。
その日を境に、奥さんは本当に優しく素晴らしいお母親となり、主人はよく働く働き者の大工となって、二人は赤ん坊の顔を見るのが何よりも楽しく、日々の大きな慰めとなったのでした。
おじいさんは仕事の帰りにこの家に立ち寄り、その平和な暮らしぶりを見るのが、この上ない喜びでした。
そして、誰であれ子供を厳しく叱っているのを見かけると、おじいさんはこう言って聞かせたのです。
「自分が産んだからといって、この子は自分のものだとばかり思ってはいけない。
神様こそがこの子供の本当の親なのだから、自分の機嫌にまかせて子どもを育ててはならないよ」
村の人たちは、今どき神様などという話を信じ、おじいさんを子ども扱いして笑いました。
「おじいさん、それが神様の子供だと言うなら、人間だって皆神様でなければおかしいじゃないか。それなのに、いい人間もいれば悪い人間もいる。いったいそれはどういうことなんだい?」
と、おじいさんに問いかけました。
そのとき、おじいさんはかつて天使が言った言葉を思い出しました。
――人間は生まれてくるとき、すべてを悟る力を授けられてきたのだが、いつしかそれを忘れてしまい、正しい生活ができなくなってしまったのだ……と。
しかし、おじいさんは、そんな話をいま目の前の人たちにしても、到底信じてくれないだろうと思いました。
ましてや、自分が翼を持った天使を目撃したなどと言ったところで、大工の夫婦をはじめ、誰も本当だとは思ってくれないでしょう。
そう思うと、おじいさんは言いようのない寂しさと悲しさを覚えたのでした。
おじいさんは願いました。どうかもう一度だけ、あの天使の姿を見たい。
もし次に出会えたなら、今度こそしっかりと目に焼き付けておこう――。
そして、ほかの人たちにもそっと教えてあげようと思ったのです。
けれど、二度と天使の姿を見ることはありませんでした。
やがて、季節は巡り、春がやってきました。
長い冬の間じっと眠っていた草木がふたたび息を吹き返し、空は鮮やかな緑色に彩られ、あたたかな風が吹き抜けていきました。
おじいさんは静かに空を見上げ、心の中でそっと感謝したのでした。
――一九二五・一二作――
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