家にたどりついた女の子が、「ただいま!」と言ったその瞬間、なんと口の中からキラリと光る金貨がぽーんと一枚とびだしました!
女の子が、森の中で起こった不思議なできごとをくわしくお話しすると、口をひらくたびに金貨がポロポロととびだし、あっという間にへやじゅうがピカピカの金貨でいっぱいになってしまいました。
「見てよ、あの高慢ちきな顔を!」
と、まま母の本当の娘である意地悪な妹が、うらやましさで地団駄を踏みながら大声で言いました。
「あんなにたくさんお金をまきちらしてさ!」
けれども、心の中ではうらやましくてたまらず、自分もすぐに森へ行って、イチゴを山ほど見つけてやろうとたくらんでいました。
「およしよ、おまえ。こんなに寒い時期に出かけたら、こごえちまうよ!」
と、まま母は止めました。
けれども、妹があんまりうるさくせめたてるものですから、とうとうまま母も根負けしてしまいました。しかたなく、最高級のあたたかい毛皮の着物をぬって、それを着せてやったのです。
さらに、道中で食べるようにと、おいしいバターパンとお菓子もたっぷり持たせてやりました。
妹はすまし顔で森へはいっていくと、脇目もふらずに、あの小さな小屋めがけてまっすぐ歩いていきました。
こんどもまた、窓から三人の小人たちがじっとのぞいていましたが、妹はあいさつひとつしませんでした。
それどころか、小人たちのほうは見向きもしず、ひとことの言葉すらかけずに、土足でずけずけと部屋の中へ入りこみました。
そして、さっさと暖炉の特等席にドカッとこしかけると、持ってきたバターパンやお菓子をムシャムシャと食べ始めたのです。
「ねえ、ぼくたちにもすこし分けておくれよ」
と、小人たちが優しくたずねましたが、妹はにらみつけてこう言い放ちました。
「あたしひとりの分だっても足りないんだよ!
赤の他人に分けてやれるもんですかっ!」
まもなく、妹がパンを食べおわると、小人たちは静かにこう言いました。
「じゃあ、そのほうきで、うら口の外のところをきれいにはいておくれ」
「なにいってんのよ、じぶんたちでお掃きなさいよ!
あたしはおまえたちの下働きやお手伝いなんかじゃないんだからね!」
と、妹はふんぞりかえって答えました。
そして、小人たちが宝物や親切な魔法をなにもくれそうにないと見てとると、舌打ちをして戸口から外へとびだしていきました。
ひとりぼっちになった小人たちは、顔を見合わせて相談しました。
「あの娘はあんなに横柄で意地悪で、人にものを分けあたえることも知らない根性曲がりの意地悪んぼだ。
そんな奴には、いったいどんな罰を与えてやったらいいだろう?」
すると、一人の小人が言いました。
「ぼくは、あの娘が日ごとにどんどんみにくくなるようにしてやろう」
二番目の小人が言いました。
「ぼくは、あの娘が口をきくたびに、その口のなかから気味の悪いヒキガエルがゲロゲロととびだすようにしてやろう」
そして、最後の小人はこう言いました。
「ぼくは、あの娘がとてもみじめな最期を迎えるようにしてやろう」意地悪な妹は外でイチゴを探しましたが、ひとつも見つかりなかったので、プンプン怒って家へ帰りました。
そして口をひらき、森でおこった出来事を母親に話そうとしました。
ところが、ひとこと言うたびに、ヒキガエルが1ぴきずつ口の中からとびだしてきたのです。
そのため、みんなはこの娘をたいそう嫌がるようになりました。
こんなことがあってからというもの、まま母はますます腹を立て、ただもうなんとかして、あの優しいお姉ちゃんをひどい目にあわせてやりたいと、そのことばかり考えていました。
けれども、お姉ちゃんの美しさは、日ごとに増していくばかりです。
とうとうまま母は大きなおかまをもちだして、火にかけました。
そして、より糸をぐつぐつと煮たのです。
糸が煮えますと、それをかわいそうな娘の肩にかけて、それから1ちょうのおのをわたしました。
そして、
「これをもって氷のはった川へ行ってね、氷に穴をあけて、このより糸をすすいでおいで」
と、いいつけました。
娘はおとなしく言われたとおりに川へ行って、氷に穴をあけました。
こうして、娘が氷をわっているさいちゅうに、王さまののっている立派な馬車が通りかかりました。
王さまは馬車をとめて、娘にたずねました。
「おまえはだれだね。そこで何をしているのかね」
「あたくしはあわれな娘でございまして、より糸をすすいでいるところでございます」
これをきいて、王さまは娘をかわいそうに思いました。
しかも、見れば、たとえようもないほど美しい娘です。
そこで、王さまは言いました。
「わしといっしょに行く気はないかね」
「ええ、よろこんでおともいたします」
と、娘は答えました。
娘にとっては、まま母や意地悪な妹の顔を見ないですむだけでも、うれしかったのです。
そこで娘は馬車にのって、王さまといっしょに行きました。
やがてお城に着きますと、小人たちがこの娘におくりものとしてきめてくれたとおり、ご婚礼の式が、それはそれは立派におこなわれました。
それから1年たって、若いお妃さまは男の子を生みました。
まま母はこの娘がたいそうしあわせになっていることをききますと、自分のほんとうの娘をつれて、お祝いのあいさつにきたような顔をして、お城へいきました。
ところが、ある日、王さまがよそへいって、ほかにはだれもいないときのことでした。
このわるものの女は、お妃さまの頭をつかみ、自分の娘には足をつかませて、ふたりがかりでお妃さまを寝台からひきずりだしました。
そして、窓からそとをながれている川の中へ、いきなりほうりこんでしまったのです。
そうしておいて、こんどは、あのみにくい顔の娘が寝床の中にもぐりこみました。
まま母は、その頭まですっぽりと布団をかぶせておきました。
王さまがかえってきて、お妃さまに話しかけようとしますと、まま母があわてて言いました。
「おしずかに、おしずかに。ただいまは、お話しなさってはいけません。ひどい寝汗をかいていらっしゃいますから。きょうは、そっとやすませておいてあげなければいけません」
王さまは、わるだくみがあろうなどとは夢にも考えてみませんでした。
ですから、あくる朝になってからようやく、またお妃さまのところへやってきました。
ところが、王さまがお妃さまと話をして、お妃さまがそれにこたえますと、ひとことこたえるごとに、まえには金貨がとびだしましたのに、こんどはヒキガエルがとびだしました。
そこで王さまは、
「これはどうしたことなのか」
と、たずねました。
するとまま母は、
「これはひどい汗のためですから、すぐおなおりになりましょう」
と、うそをつきました。
ところがその晩のことです。
料理番の若い男が、台所の流し口から、一羽のカモがおよいでおよいで入ってくるのを見ました。
すると、そのカモがこんなことを言いました。
王さま あなたはなにしていらっしゃる
おやすみですか おめざめですか
若い男がなんとも返事をしませんので、カモがまた言いました。
あたしのお客はなにしているの?
それをきいて、若い男が答えました。
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