初級翻訳・気まぐれの人形師 第2話

小川 未明

二つの人形を並べてみると、赤い縮緬の着物を着たほうはお嬢様のように見え、紫のメリンスの着物を着たほうは、なんとなく腰元のように見えました。

それからしばらくして、ある夜のことでした。近所に住む知人の女性が、子供を連れて遊びに来ました。帰る時、子供は女の子の人形をしっかりと掴んで離そうとしませんでした。
「これはお姉ちゃんの大事な人形だから、坊やが持って帰っちゃダメよ」と女性がいくら言っても、子供は手から人形を離しませんでした。
「いいですよ、おばさん。貸してあげますから、持っていかせてあげてください」と女の子は言いました。
「本当にすみませんね。明日、すぐに持ってきますから、どうかお借りしますね」と女性は言いました。
子供が持っていたのは、『不幸せ』なほうの人形でした。子供をおぶった女性は、女の子やそのお母さんたちに挨拶をして、家を出ていきました。

外には粉雪がさらさらと降っていました。女性がもう自分の家に着いたかなと思われる頃、不意に玄関で、下駄についた雪を叩き落とす音がしました。誰かと思って見ると、先ほどの女性が戻ってきたのです。
「まあ、途中でこの子が人形を落としてしまったようなんです。いくら探しても見つからなくて……ここまで戻ってきました」と言われました。
「それなら、私が探してきます!」と女の子は立ち上がりました。
お母さんが提灯に火を灯してくれました。そして、子供を連れた女性と女の子は一緒に、人形を探しに出かけました。
「本当に、すみませんね」「いいえ、すぐに見つかりますよ」と、小母さんは娘に謝り続けました。
「ええ、きっとすぐに見つかります」と、娘は笑いながらそう言って、足元を見つめながら歩いていきました。
すると、誰も通らない雪道の上に、その「不しあわせの人形」は落ちていました。
顔の上にも体の上にも粉雪がうっすらと積もっているのが、提灯の明かりに照らされてぼんやりと浮かび上がりました。
「ああ、ここにありました!」と、娘は雪にまみれた人形を拾い上げました。
そして心の中で、この人形は本当になんて不運なんだろう、と思いました。
それから小母さんと別れて、彼女は人形をしっかりと抱きしめながら家へと戻りました。
それだけではありません。その年の夏には、不しあわせの人形はタンスの上から落ちて、片手を折ってしまったのです。
「どうして、このお人形さんばかりいつも不しあわせなのでしょう?」と、彼女は不思議に思いました。
そうこうするうちに、月日は流れていきました。
あの南の港町へ行ってから、いつの間にか三年が経っていました。
冬がまたやってきたとき、お父さんがこう言いました。
「ちょうど子供の学校も休みだし、あの町へ行ってみようか」
一緒に行けることを聞いたとき、彼女がどれほど喜んだことか!
「ああ、またあのおじいさんのところへ行って、人形を買いましょう」と彼女は思いました。
そして今度は、決して「不しあわせの人形」は買うまいと心に決めました。
南の国の町の様子は、三年前と少しも変わっていませんでした。
港の景色も、丘の眺めも、あの頃のままでした。
いろいろな小鳥が林の中で鳴いていて、オレンジの実もやはり黄色く熟れていました。
ある日、娘はその町を歩いていました。
いつか行った人形屋を訪ねようと思っていたのです。
夕方の夢のようにかすんだ空の下、紫色の光が差し込む店を探しながら、見覚えのある路地へと入っていきました。
「ああ、あのおじいさんなら亡くなりましたよ。気まぐれな人で、自分の作った人形にさえ好き嫌いをつけていた人ですが……もうあの店はありません。いまでは、あの人の作ったものなら、どんな壊れた人形であっても大騒ぎして、旅の人たちはみんな集めていってしまいますよ」
娘が町の人におじいさんの店を尋ねると、そんな答えが返ってきました。
彼女は、あのおじいさんの人形がそんなに価値のあるものだったのかと、初めて知ったのでした。
娘がお父さんにその話を伝えると、お父さんも驚いた顔をしました。
そして彼女は、自分の家に帰ると、二つの人形を同じ箱の中に入れて、大切に飾ることにしました。
この時から、長い間不しあわせだった人形は、もう一つのしあわせな人形と同じように、幸せになったのでした。

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