下村 湖人

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下村 湖人

初級翻訳・論語物語 第4話

彼はそれを、自分に対する嫌味(皮肉)のようにも聞いてしまったのである。(自分は、もう四十の坂を越してかなりになるのに、まだ一度も孔子にそんな風な讃め方をされたことがない。どちらかというと、くさされる方が多かったくらいだ。) 彼はそう思って、...
下村 湖人

初級翻訳・論語物語 第3話

「だが――」と孔子は語をつづけた。「君にとっては、貧乏はたしかに一つの大きな災いだったね。」 子貢は返事に窮した。彼は、今日途々「貧乏はそれ自体悪だ」とさえ考えて来たのであるが、孔子に真正面からそんな問をかけられると、妙に自分の考えどおりを...
下村 湖人

初級翻訳・論語物語 第2話

そして、天のめぐりを待たずに自分でせっせと財産を築くことを、あまり快く思っていらっしゃらないようだ。しかし、腕のいい人間が、正しい道をふまえて財産を築くことの何がいけないというのだろう。自分に言わせれば、貧乏はそれ自体が悪いことであり、お金...
下村 湖人

初級翻訳・論語物語 第1話

序文 『論語』という本は、「天の書」であると同時に「地の書」でもあります。 孔子は、一生をかけてこつこつと地上の道を歩きながら、天の言葉を語るようになった人でした。 天の言葉を語ってはいましたが、彼には特別な神秘さも、不思議な奇蹟もありませ...
下村 湖人

初級翻訳・次郎物語 第10話

次郎はそれがいくぶん気がかりでしたが、「それなら僕、行くよ」と、先ほどからの自由な気分を失わないまま答えました。そして、自分の一言で明日の計画が決まったとき、彼は久しぶりに、お浜の家にいた頃のような穏やかな気分を味わいました。間もなく俊亮は...
下村 湖人

初級翻訳・次郎物語 第9話

それなら、その声に応じてすぐに出ていけばいいはずなのに、そうもいきませんでした。母の言葉は、彼が素直に出ていくには少し強すぎたのです。母の声を聞くと、次郎はすぐさま座敷の方に背を向け、立木によりかかってしまいました。「次郎ちゃん、父ちゃんが...
下村 湖人

初級翻訳・次郎物語 第8話

次郎はびっくりして手を引きましたが、その五本の指には、ご飯が一握りつかまれていました。彼はあわててそれを口に押し込みながら、座敷の方へ逃げ出そうとしました。しかし、もう遅すぎました。座敷の敷居をまたぐかまたがないかのところで、彼は襟首をお民...
下村 湖人

初級翻訳・次郎物語 第7話

彼はしかし、まだ目がさめないふりをして、そのまま動かずにいました。しばらく沈黙がつづきました。「まあ、あきれた子だね」お民は平手で、三つ四つ彼の臀を叩きました。それでも彼は、小豚の死骸のように転がったままでいました。そのうちに燈火がぱっと灯...
下村 湖人

初級翻訳・次郎物語 第6話

次郎は闇の中に目を凝らしながら、道の端っこにしゃがみ込みました。「次郎、次郎や、どこにいるの?」次郎は息を殺しました。そして、逃げ出すなら今だと思いました。しかし、彼は立ち上がりませんでした。それは、お民がすぐそばに立っているからというだけ...
下村 湖人

初級翻訳・次郎物語 第5話

ちょいと門を出るのさえ、この頃ではおずおずしていらっしゃるようで、本当におかわいそうですわ」「でも、私から直接言い聞かせれば、納得しないわけはないと思うのだがね」「そうだと結構でございますが……」「親身の母親が言って聞かせても、ダメだと言う...
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