神州天馬侠

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吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第19話

ところで、果心居士がなぜ武田伊那丸を龍太郎に探させようとしたのか、その理由はあとで説明するとして、まずは、果てしない海へと連れ去られてしまった大切なお方を、どうやって探し出せばよいかという相談が始まりました。「竹童、竹童や――」居士があの少...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第18話

今為朝が、五重塔の上に現れた老人の魔物を射落としに行ったぜ!」 坂本の町の葭簀茶屋(よしずぢゃや)でも、そんなうわさがパッと一気に広がった。 床几(しょうぎ)に腰かけてお茶をすすっていた木隠龍太郎(こがくれりゅうたろう)は、それを耳にすると...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第17話

おのれ、どうしてくれる、覚えていろ!」 と地団駄を踏んでにらみつけたが、目の前には海が広がっている——それももう霧のようにぼんやりとして、遠州灘の波の彼方へと消えていくものを、いかに優れた龍太郎であっても、空を飛んで追いかける秘術などはない...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第16話

天文十五年のころ、武田信玄の軍勢が、上杉憲政を攻めて上野乱入にかかったとき、碓氷峠の陣中でとらえたのがこの鷲であった。碓氷の合戦は甲軍の大勝となって、敵将の憲政の首まであげたので、以来、信玄はその鷲を館にもちかえり、愛育していた。信玄の死ん...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第15話

ああ龍虎たおれるものはいずれであろうか。三 船べりに頬杖ついて、龍太郎を待っていた伊那丸は、宵からのつかれにさそわれて、いつか、銀河の空の下でうっとりと眠りの国へさまよっていた。――松かぜの奏でや、舷をうつ波の鼓を、子守唄のように聞いて。―...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第14話

月はないが、空いちめんにみがきだされたようなかがやかしい星の光と、ゆるやかに波を縒(よ)る水明かりで、湖は夜明けのようにほの明るかった。 すると、ギイ、ギイ……と、どこからかこの静寂をやぶる櫓(ろ)の音がしてきた。「お、ありゃなんの船だろう...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第13話

さ、早く」とせき立てたかれは、むりにかれの手をとって、築山から、城の土塀によじのぼり、狭間(さま)や、わずかな足がかりを力に、二丈あまりの石垣を、すべり落ちた。途中に犬走りという中段がある。ふたりはそこまでおりて、ぴったりと石垣に腹をつけな...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第12話

そして、杖のあやしい点には気づかずに、そこそこにそこから下がっていった。「若君、けっして手をおふれなさるな、この様子では、これもあやしい」 と、膳の吸い物椀をとって、中の汁を部屋の白壁にぱっとかけてみると、墨のようにまっ黒に変化して染まった...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第11話

「おお……」と家康はうなずいて、そしてやさしそうに、「父の領地は焦土となり、身は天涯の孤児となった伊那丸、さだめし口惜しかろう、もっともである。いずれ、家康もとくと考えおくであろうから、しばらくは、まず落ちついて、体をやすめているがよかろう...
吉川 英治

初級翻訳・神州天馬侠 第10話

「気は狂っちゃいない! 町人の中にも男はいる、天に代わって、貴様らをこらしめてやるんだ!」「生意気な口をきく下郎め! お前らがこのご城下で平和に暮らせているのは、すべて我々が敵国と日々戦っている賜物だということが分からんのか!」罰当たりめ」...
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