山本 周五郎

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山本 周五郎

初級翻訳・桑の木物語 第14話

ねえ……教えてよ、何か心配事でもできたの? 悠ちゃん」「うるせえって言ってるだろ! いいから黙ってほうっておいてくれ!」四日目になって、家から家扶(かふ―お世話係)の渡辺のおじいさんがやってきた。お父さんもお母さんも心配しているから一度家に...
山本 周五郎

初級翻訳・桑の木物語 第13話

「いやあねえ悠ちゃんたら、まるで取って付けたみたいじゃないの、ふだんすばしっこいくせにそんなことは気が利かないのね」「黙ってろ、うるせえ、こっちあお祖父さんから云いつかってるんだ、さあ坐んなよ、母ちゃん」「勿体ない、よして下さいよ、肩が曲る...
山本 周五郎

初級翻訳・桑の木物語 第12話

「こんなものを、どうせ、始末におえません、見るたびにどうも、なんとも」庭師の老人はしきりにこぼしていた、「――どうしたってお庭につくもんじゃございません、いまに爺いが叱られるに定っています」正篤はなにも云わず微笑していた。まだ下屋敷にいると...
山本 周五郎

初級翻訳・桑の木物語 第11話

決して、殿をひとりで旅立たせたりはいたしません。――人間はいつか必ず死ぬものです。遅かれ早かれ、いずれはみんなこの世を去っていくのです。……殿、どうか死ぬことばかりを考えないでください。大切なのは、今こうして生きているその時間です!できるだ...
山本 周五郎

初級翻訳・桑の木物語 第10話

そして参勤出府(さんきんしゅふ)の式――国元での特産品である献上物を持って将軍に謁見(えっけん)すること――が済むとすぐ、正篤は軽い風邪をひいて床に伏せた。旅の疲れも出たのだろう、長くて四、五日もすれば治ると思われたが、そのまま五十日ほども...
山本 周五郎

初級翻訳・桑の木物語 第9話

母ちゃん、舟を借りるぜ!」正篤(まさあつ)を促して河岸(かし)へとびだすと、おみつが追いかけてきてまた世話を焼きはじめた。「その舟はだめよ、悠ちゃん! だめなのよ、こっちの舟にしなさいよ!」「黙ってろ、うるさいな! 素人じゃねえんだ!」「偉...
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初級翻訳・桑の木物語 第8話

庭師はそんなものはお屋敷の庭へ植えるものではないと云い、なかなか承知しなかったが、若君がどうしてもきかないので、それでは内証ですからと云って、日月亭の裏のところへ二本植えた。「こっちは若、こっちはおまえのにしよう」若君は悠二郎にこう囁いた。...
山本 周五郎

初級翻訳・桑の木物語 第7話

そして、若君の気をまぎらわせてやろうと思い、耳に口をぴったりと押しつけてささやいた。「魚をすくいに行きませんか?」若君は怪訝(けげん)そうな顔をしてこちらを見た。「鮒(ふな)だのエビだのが獲れるんですよ。面白いぜ!」ほかのやつらには内緒だか...
山本 周五郎

初級翻訳・桑の木物語 第6話

――まるで赤ん坊が振袖(ふりそで)でも着たみたいに、体をクネクネさせ、のたのたとした疲れたような格好で、重そうにやっとの思いで泳いでいるのだ。悠二郎は、そいつらがなんだか不憫(ふびん)でたまらなくなった。そこで鋏を持って来て、一尾ずつ捉まえ...
山本 周五郎

初級翻訳・桑の木物語 第5話

いつも唇をギュッと固く結び、まるで周りを圧倒するような鋭い目で先生の講義をじっと聞き、おちついた心地よい声でそれはもう見事なお手本のようにハキハキと本を読み上げるのだった。「結構です、たいへん結構!」どの先生も、みんな小太郎のほうを褒めちぎ...
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