山彦乙女

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山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第21話

――わたくたちの猿楽は、一年に一度、四月十一日の夜に神前で舞うほかには、決して舞ってはならないはずです。花世はかたくなに首を振りました。それは事実、その通りでした。その日は恵林寺の機山公(武田信玄)の命日にあたり、亡くなった霊をなぐさめるた...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第20話

「舟を止めてって言ったのに」こう言いながら、ものすごく上手に、舟の上へと上がってきた。「水の中からは舟の影がはっきり見えるから、動いてきたりしたらすぐに逃げちゃうじゃないの」「乙女さま、これを」若者は浴衣を取ると、すぐに少女の体を包もうとし...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第19話

「柳沢侯は数寄のお方で、お眼にとまる者は必ずお部屋にお入れなされ、やがて将軍家の伽におすすめなさる、ということではございませんか」「そうなればなお、強い大きなてづるが掴めるでしょう」「貴女は狂っておいでなさる、われらにとって徳川はもと敵では...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第18話

「まさか、比女さまがさようなことを」「いいではないか、何百年の昔のことを、少しばかり書き替えたところで、誰に迷惑を及ぼわけではなし、系図の偽作は、このごろの流行といってもいいくらいです」「それでは柳沢侯を……」「わかったでしょう、登世が江戸...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第17話

それから、権之丞の挨拶を上の空で聞き流しながら、こう言いました。「手紙は見たけれど、あれでは要ったことがよくわかりません。いったいお父さまは、どうしろとおっしゃっているのですか?」「殿さまはご病気でございます。そうでなくとも、江戸でのご滞在...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第16話

「くにから権之丞がまいったと、お取次ぎ下さい」番小屋には小者が二人いたが、その片方が不審そうな、咎めるような眼つきで、じろじろと風態を眺めたのち、「どなたに、どういう用件で、取次ぐのか」「くにから権之丞がまいったと申せば、わかる筈でございま...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第15話

六「――なんだか嫌な話だな」半之助は顔をしかめた。そのような陰謀めいた話には何の興味も湧かないし、聞いていて耐えられない気分だった。「もうやめにしようじゃないか」そう小声で囁いたとき、ちょうど下の座敷へ一人の女が入っていくのを見て、彼は思わ...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第14話

これまでにも城中で二度ばかり見かけたことがあったが、背丈の小ぶりな、白面で、どこか陰気な青年のように記憶していたが、いまちょっと見たところでは、かなり肥えたようである。「あとの二人は水野と大久保だろう」「そうだ、先客も四人ばかりいる。その中...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第13話

しかし、矢に射抜かれた白鷺(しらさぎ)が一羽、ばたばたと暴れながら落ちてきて、木陰の暗い地面の上で、無残に白い綿毛を散らすのが見えた。そしてこの家の右奥の方から、浴衣姿で腰に刀も差していない侍が一人、なにやらニヤニヤと笑いながら歩いてきて、...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第12話

本当に残念でなりませんよ」「半之助さまも、ご一緒にお出かけに?」彼女はきらりと光る目で、半之助のほうを振り返った。直接名前を呼ぶなんて行儀が悪いよ、彼は何も言わずにうなずいた。佐枝はあきらかにムッとしたようだった。けれど負けず嫌いな性格で、...
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