山本 周五郎

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山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第17話

それから、権之丞の挨拶を上の空で聞き流しながら、こう言いました。「手紙は見たけれど、あれでは要ったことがよくわかりません。いったいお父さまは、どうしろとおっしゃっているのですか?」「殿さまはご病気でございます。そうでなくとも、江戸でのご滞在...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第16話

「くにから権之丞がまいったと、お取次ぎ下さい」番小屋には小者が二人いたが、その片方が不審そうな、咎めるような眼つきで、じろじろと風態を眺めたのち、「どなたに、どういう用件で、取次ぐのか」「くにから権之丞がまいったと申せば、わかる筈でございま...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第15話

六「――なんだか嫌な話だな」半之助は顔をしかめた。そのような陰謀めいた話には何の興味も湧かないし、聞いていて耐えられない気分だった。「もうやめにしようじゃないか」そう小声で囁いたとき、ちょうど下の座敷へ一人の女が入っていくのを見て、彼は思わ...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第14話

これまでにも城中で二度ばかり見かけたことがあったが、背丈の小ぶりな、白面で、どこか陰気な青年のように記憶していたが、いまちょっと見たところでは、かなり肥えたようである。「あとの二人は水野と大久保だろう」「そうだ、先客も四人ばかりいる。その中...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第13話

しかし、矢に射抜かれた白鷺(しらさぎ)が一羽、ばたばたと暴れながら落ちてきて、木陰の暗い地面の上で、無残に白い綿毛を散らすのが見えた。そしてこの家の右奥の方から、浴衣姿で腰に刀も差していない侍が一人、なにやらニヤニヤと笑いながら歩いてきて、...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第12話

本当に残念でなりませんよ」「半之助さまも、ご一緒にお出かけに?」彼女はきらりと光る目で、半之助のほうを振り返った。直接名前を呼ぶなんて行儀が悪いよ、彼は何も言わずにうなずいた。佐枝はあきらかにムッとしたようだった。けれど負けず嫌いな性格で、...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第11話

しかし、その法令を持続させたのは彼だろう? たびたびの反柳沢運動にもかかわらず、彼の地位が揺るがず、甲府城主となり、大老などと自称するようになったのは、ひとえにそのおかげなのさ」「しかし、あの狂気じみた禁令は、むしろ彼の首を絞める縄になって...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第10話

当惑したように、口ごもって、なにやら身振りをするばかりだった。松室泰助は、しんこくに考えこむだけだし、正木重兵衛はしきりに説を立てるが、あまりに飛躍的であり、また矛盾が多かった。――要するに反抗でしょう、世間一般の俗習に抵抗することでしょう...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第9話

父と母のことですよ」「――わからないね」「ダメですよ、あなたはいまビクッとなさったし、僕の目が見られないじゃありませんか。何もかも知っているということが、お顔にちゃんと言葉として書いてありますよ」「失敬だが、帰ってくれないか」半之助は落ち着...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第8話

彼はぼんやりとそう思いました。しかし、彼の意識そこにずっととどまり続けることはありませんでした。すっぽんぽんになった女の肌の白さや、重たそうな肉体の丸み、驚くほど力強い腰まわり、そしてすでに少し印象がぼやけかけていながらも異様に美しい顔立ち...
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