山本 周五郎

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山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第7話

「私のもので失礼しますけれど」彼女はそう言って、黙ったまま、じっとこちらの様子を見つめていました。「どうしたんだい?」半之助がそう言って顔を向けると、おなには寂しげにふっと笑い、首を横に振りました。小さな唇の間から、白い糸切歯がちらりと覗き...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第6話

そもそも僕のことを覚えていらっしゃらなかったんでしょう」「――そんなことないさ」「そんなことって、僕はそう思うんですからね」愛想よく微笑んではいましたが、その笑顔には明らかに棘(トゲ)が含まれていました。――ああ、あの笑い方だ。半之助はその...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第5話

「今日はご主人役でお疲れさまね」 彼女はそう言って、まっすぐにこちらを見上げながら、親しげにふふっと笑いかけました。「お友達がいらしたら、みんな連れていらっしゃいよ。美味しいごちそうをたくさん用意して待ってるから」「ありがとう、暑いのにどう...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第4話

もう子どもっぽいつまらない妖怪話などを信じる年齢ではありませんでしたが、この一連の出来事のあまりの異様さと、なんだかゾッとするような不気味さには、かなり強烈なショックを受けていました。――かんば沢。もちろん見たこともありませんでしたが、きっ...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第3話

昔はここで金属を溶かして何かを作っていたらしく、「いもじ」という地名は「鋳物師(いもじ)」と書くらしい、ということなどである。 「かんば沢へも、今年の冬には入ってみようと思っているんだ。遠くから見たところでは、木や草が茂りすぎていてとても近...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第2話

表向きは普通の農家の地主で、特に立派な苗字もなく、代々の主人は「清左衛門(せいざえもん)」と名乗っていた。年貢の記録などを見ても、それほど広い土地を持っているわけでもなければ、昔から庄屋や戸長といった村の役職についたことも一度もなかった。し...
山彦乙女

初級翻訳・山彦乙女 第1話

序の章 安倍半之助(あべはんのすけ)が、のちに自分の人生をずっと縛り続けることになる「かんば沢」という不気味な名前を初めて耳にしたのは、十歳の時のことであった。それはなんとも薄気味悪く、怪しげな話であり、のちに兵庫(ひょうご)という叔父の奇...
孫七とずんど

初級翻訳・孫七とずんど 第7話

「あっぱれだな、柿ノ木!」「孫七、よくやったぞ!」「初めての戦いで一番乗りとは、さすがだな!」「国へ帰ったら、お前も隊長に出世だな!」知っている人も知らない人も、みんな次々とやって来ては大喝采(だいかっさい)を送ります。それがひと段落したか...
孫七とずんど

初級翻訳・孫七とずんど 第6話

まわりの神経は極限まで張り詰めているように見えるのに、不思議と実際の動きはどこかスローモーションで、ぎこちなく感じられます。ところが、いざ自分が槍を構え直してその場に入ってみると、のんびりしているどころではありません。声をかける隙すらないほ...
孫七とずんど

初級翻訳・孫七とずんど 第5話

「こいつはとてつもなく危険なものだなあ」「なにがそんなに危険なんだよ!」「なにがって、石原寸度右衛門、おまえにはこれが見えないのか? むやみやたらにこんな弓矢だの、鉄砲の弾だんなんぞが飛んできてさ、戦場という場所はとびきり危険なところじゃな...
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