地底獣国

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久生 十蘭

初級翻訳・地底獣国 第1話

プロローグモスクワの科学アカデミーは、第二次五カ年計画の期間中、国をあげた文化的なプロジェクトとして三つの企画を立てました。それらは国民教育省と国家計画委員会を経て中央委員会へ提出され、第八回連邦ソビエト大会で正式に承認されました。その三つ...
久生 十蘭

初級翻訳・地底獣国 第2話

歯並びのいい、白すぎる歯。光を宿した鋭い目。……その目は、さっきからずっと博士の顔に据えられています。右の手は、なめし革のジャケットの脇ポケットに突っ込まれたままです。そのほか七、八人、つまり「極東管区における秘密調査隊」の一行は、全員この...
久生 十蘭

初級翻訳・地底獣国 第3話

われわれの中から、断じて、三人目を出すまいと決議したのです」博士は、瞼をゆっくりと上げて、淀まぬ眼差しで、モローゾフ教授の眼をみつめる。「モスクワへも帰らない。……このうえ、調査を続けるのは嫌だとなると、いったい、どういうことになるんですか...
久生 十蘭

初級翻訳・地底獣国 第4話

**6月8日**朝の8時に、三人で交代に目を覚ました。どこからともなく、かすかな光が差し込んでいる。元気はだいぶ戻っていたので、大急ぎで朝食を詰め込んだ。私は昨日から猛烈な喉の渇きを感じており、どんなに汚い水でもいいから一滴飲めたらと、喉か...
久生 十蘭

初級翻訳・地底獣国 第5話

そこから、川の工事用のトロッコのレールが、うねるように続いています。中洲の上には草のようなものがまばらに生えていて、その端に流刑囚の小屋と、監視人の小さな家がありました。二人ずつ鎖でつながれた八人の流刑囚たちは、トロッコに座ったり、地面に直...
久生 十蘭

初級翻訳・地底獣国 第6話

「……おら、こんな不具だすけ、とってもそんなとこさ、ついて行けねえべ。……おら、ひとり、こんなとこさ残されて、どうしてこれから生きていかれるべ。おら、いやだ、おらいやだ」血を吐くような叫び声を上げると、彼は同じ鎖に繋がれている、二十四、五歳...
久生 十蘭

初級翻訳・地底獣国 第7話

また、噴出するままにしておくとトンネル内が水浸しになる恐れがあるため、必要な分を飲んだら必ず穴を塞ぐこと。その他にも、食料の扱い、気圧計の使い方、トンネル内の空気の検査法、野営の際の注意など、すべてにおいて漏れなく教え諭しました。六人の漁師...
久生 十蘭

初級翻訳・地底獣国 第8話

「しばらく休憩しよう」博士は測量機器を取り出すと、手早く自分たちが今いる場所の観測を始めました。六人の漁師たちは背負っていた荷物を下ろすと、代わる代わる水を飲み、水筒をいっぱいにし、それから側壁にもたれかかって座りました。誰一人として、くつ...
久生 十蘭

初級翻訳・地底獣国 第9話

この計画は、企画・軍部・建設・地理・交通の各技術委員を網羅した「全同盟科学研究計画会」の秘密会議において、細部にわたって厳密に話し合われ、前代未聞の作戦計画として決定されました。この恐ろしい攻略路が完成したあかつきには、ソ連邦は日本帝国に対...
久生 十蘭

初級翻訳・地底獣国 第10話

一キロほど進むと、行く手に、なんともいえないぼんやりとした微光が漂っているのに気づきました。月光のような蒼白さではなく、霧のような乳白色でもありません。たとえば、緑柱石(エメラルドの仲間)の輝きを薄い布越しに眺めたような、淡く、淡い海緑色。...
久生 十蘭

初級翻訳・地底獣国 第11話

朱色、白、赤茶色、紫黒色と、さまざまな色の溶岩が重なり合い、瑪瑙(メノウ)のような美しい縞模様を見せています。その底を、重油の流れのような黒い川が、のたりと動いていました。安全灯の光の当たり具合で、その川は紫がかった紺青になったり、深い藍色...
久生 十蘭

初級翻訳・地底獣国 第12話

それは古生代三畳紀のレーチック植物の一種で、当時、羊歯(シダ)や木賊(トクサ)などとともに地球の表面をおおっていた「ニルソニア」という種類のソテツです。博士の手のひらは、今、まさに一千万年前の植物の肌に触れているのです!「……息が詰まる!」...
久生 十蘭

初級翻訳・地底獣国 第13話

いつものように非情で冷酷な眼つきをしているが、見るからに憐れを催すほどひどくやつれ果て、シャツもズボンもズタズタに裂け、いたるところにべっとりと血の跡がついていた。ナターシャのほうは、もっとひどい有様だった。外套の襟元は無残に引き裂かれ、む...
久生 十蘭

初級翻訳・地底獣国 第14話

揉み合いが落ち着くと、教授は片手で舟の縁を掴みながら、素早く後退りして船尾の方へ登り、隙なく拳銃を膝の上に構えました。ナターシャは安全灯の光を五人に向け、こちらも油断なく監視を続けています。三十分。永遠とも思えるほど長い三十分が過ぎましたが...
久生 十蘭

初級翻訳・地底獣国 第15話

代赭色(たいしゃいろ)の大きな口をガバッと開け、七インチ(約十八センチ)ほどもある、見るも恐ろしい剣のような歯をむき出し、一跳びで三間(約五メートル)ほどずつ跳ねながら、地響きを立てて二人の後ろに追い迫っているのです!博士と四人の漁夫は、ひ...
久生 十蘭

初級翻訳・地底獣国 第16話

見ると、それは石炭紀の貴重な「プレウロトマリア」でした。生きている長者貝! これに博士は夢中になりました。狂ったように西側の断崖へと駆けて行きましたが、それっきり戻ってくることはありませんでした。海鳥の卵と古鱈ばかりの食生活が、私たちの壊血...
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