お伽草紙

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初級翻訳・お伽草紙 第1話

「あ、鳴った!」お父さんがそう言って、ペンを置いて立ち上がりました。ただの空襲警報なら動じないお父さんですが、高射砲がドーンと鳴り出すと話は別です。すぐに仕事を中断し、五歳の女の子に防空頭巾をかぶせて抱きかかえ、防空壕の中へと急ぎます。壕の...
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初級翻訳・お伽草紙 第2話

お婆さんも「命に関わるものではないのでしょうね」と、ニコリともせずに一言たずねただけで、それ以上はそのコブに何の興味も示してくれません。むしろ、近所の人たちの方が同情して、「どうしてそんなコブができたんでしょうね」「痛まないんですか?」「さ...
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初級翻訳・お伽草紙 第3話

木のうろから這い出た四つん這いの姿勢のまま、前方の怪しい宴会の様子をじっと見つめて、「気持ちよさそうに、酔っているな」とつぶやき、なんだか胸の奥底から、不思議な喜びが湧き上がってきました。お酒飲みというものは、よその人たちが酔っているのを見...
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初級翻訳・お伽草紙 第4話

「うむ」「また、水がたまれば腫れるでしょうね」「そうだろうなあ」結局、このお爺さんの一家にとって、コブのことなど何の問題にもならなかったのです。ところが、このお爺さんの近所に、もうひとり、左の頬に邪魔なコブを持つお爺さんが住んでいました。こ...
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初級翻訳・お伽草紙 第5話

もちろん、一人暮らしをしていたわけではありません。父も母もいて、弟も妹もいて、大勢の召使いもいました。つまり、この海岸で有名な旧家の長男だったわけです。旧家の長男というものには、昔も今も一貫したある特徴があるようです。「趣味性」、すなわちこ...
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初級翻訳・お伽草紙 第6話

また捕まったら、また若旦那に買い取ってもらうつもりですよ。浅はかで悪うございましたね。私はどうしても若旦那にもう一度会いたかったんだから仕方がないでしょう。この『仕方がない』というところが、惚れた弱みというものですよ。どうか私の心意気を買っ...
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初級翻訳・お伽草紙 第7話

あなたたちは、人生の切実な姿を見せつけられるのが大嫌いですからね。それこそ、あなた自身の高級な宿命に、泥水をかけられたような気がするんでしょう。あなたたちの親切は、遊びなんだ。享楽なんだよ。亀だから助けたんだ。子供だからお金をやったんだ。荒...
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初級翻訳・お伽草紙 第8話

「あれは、鯛じゃないんだ。海の火事さ。ひどい煙だろう。あれだけの煙となると、そうだな、日本の国を二十個くらい寄せ集めたくらいの広大な場所が燃えているのと同じだ。」「嘘をつくな。海の中で火が燃えるもんか。」「浅はかだねえ、浅はかだ。水の中だっ...
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初級翻訳・お伽草紙 第9話

門だけじゃなく、乙姫様のお部屋にも屋根や壁はあるよ。けれど、それも乙姫様の尊厳を守るために作られたものであって、雨や露を防ぐためのものじゃない。」「そんなものかな。」浦島はまだ納得がいかない顔で言いました。「その乙姫様の部屋というのはどこに...
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初級翻訳・お伽草紙 第10話

この魚の掛け橋の尽きたところからまっすぐに降りて行くと、ちょうど竜宮の正殿の階段の前に着くのです。さあ、何をぼんやりしているのです。飛び降りますよ、いいですか」亀はゆらゆらと沈んでいきました。浦島も気持ちを切り替えて両腕を広げ、魚の掛け橋の...
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初級翻訳・お伽草紙 第11話

どうです? 竜宮は歌とダンスと、おいしい食べ物とお酒の国だと、お誘いした時に言ったでしょう? どうです、想像と違いましたか?」浦島は答えず、深刻そうな顔で苦笑いしました。「わかっていますよ。あなたの想像では、ドンチャン騒ぎで、大きなお皿にタ...
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初級翻訳・お伽草紙 第12話

「ずっと向こう、乙姫さまの歩いていく方角の、ずっと向こうに何か見えませんか?」と亀に言われて、浦島は眉をひそめてその方向をじっと見つめました。「ああ、そう言われてみるとなにかあるようだね」ほとんど一里(約4キロ)先と思えるほどの遠方、深い淵...
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初級翻訳・お伽草紙 第13話

ここで亀は、まるでエデンの園の蛇のように、人の好奇心をそそるような妙なことを言ったのです。やはり、これも爬虫類共通の宿命なのでしょうか。いやいや、そう決めつけてしまうのは、この善良な亀に対して気の毒というものです。亀自身も以前、浦島に向かっ...
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初級翻訳・お伽草紙 第14話

それに、あの懐かしい竜宮の名誉にかけても、何とかしてこの不可解なお土産の中に、尊い意味を見つけ出したいものですね。いかに竜宮での数日が陸上の数百年に当たるとしても、何もその歳月を、こんなややこしいお土産にして浦島に持たせなくてもよさそうなも...
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初級翻訳・お伽草紙 第15話

小さい子供なら適当な言い訳でごまかせますが、もっと大きくなって「武士道」や「正々堂々」といった考え方を教わった子供なら、このウサギの仕返しを「やり方が汚い」と感じるのではないでしょうか。これは問題だ、と愚かな父は眉をひそめたというわけです。...
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初級翻訳・お伽草紙 第16話

あなたのその匂いは、ただの臭みじゃないんだから」ウサギは平然と、とどめの一撃を食らわせます。すると急に、何か素晴らしいことでも思いついたのか、パッと目を輝かせました。笑いをこらえているような顔つきでタヌキの方に向き直り、こう言います。「それ...
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初級翻訳・お伽草紙 第17話

この山で生まれて三十何年かになるけれど、こんな……」「まあ! あなたはもうそんな年なの? この前、私に十七歳だって教えたくせに、ひどいじゃないの。顔がシワシワで、腰も少し曲がっているのに十七歳だなんて変だと思っていたけれど、まさか二十歳も年...
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初級翻訳・お伽草紙 第18話

あいたたた。いいかい、忠告するよ。お前はまだ若いようだから、俺のような年寄りの言うこと――いや、別に年寄りじゃないが、とにかく、馬鹿にしないで、この友人の忠告だけは大切にしてくれよ。何せ、体験者の言葉なんだから。あいたたたた」「ありがとうご...
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初級翻訳・お伽草紙 第19話

またウサギが眉をひそめた表情をも、これは自分の先日の「ボウボウ山」の災難に心を痛めているのに違いないと解釈し、こう言いました。「や、ありがたい。心配無用だよ。もう大丈夫だ。おれには神さまがついているんだ。運がいいのだ。あんなボウボウ山なんて...
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初級翻訳・お伽草紙 第20話

もう何としてもこの女とくっついて一生離れないぞ、と心の中で決意を固めました。「よいしょ」と泥の舟に乗り込むと、「お前はきっと、舟を漕ぐのも上手なんだろうねえ。おれだって舟の漕ぎ方を知らないわけでは……まさか、知らないわけでは決してないんだが...
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初級翻訳・お伽草紙 第21話

そして男性には、あの善良なタヌキがいつも溺れかけてあがいているのだ。作者の、それこそ三十何年にもわたる、ひどく不振な経歴に照らしてみても、それは火を見るより明らかだった。おそらくは、あなたにとっても。(後略)舌切雀私はこの『お伽草紙』という...
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初級翻訳・お伽草紙 第22話

もし万が一、そんなすごい奴が目の前に現れたら、お前の両目はまぶしさでつぶれてしまうかもしれないよ。いいか、わかったか。この僕の『お伽草紙』に出てくる奴らは、日本一でも二でも三でもないし、世間でいう「代表的な人物」でもない。これはただ、太宰と...
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初級翻訳・お伽草紙 第23話

カゴメ カゴメカゴノナカノ スズメイツ イツ デハルこの歌は、仙台に限らず日本全国で子供の遊び歌になっているようだが、「カゴノナカノ スズメ」と言って、あえて籠の中の小鳥を「雀」と限定しているところや、「デハル(出る)」という東北の方言が何...
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初級翻訳・お伽草紙 第24話

馬鹿にしないでください! 私はあなたのことを思って、あなたと一緒になったのですよ」「色気なんて、これっぽっちもありやしませんよ。あなたもずいぶん下品なことを言うんですね。そもそも私が、あなたのような人と一緒になったばかりに、朝から晩までどん...
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初級翻訳・お伽草紙 第25話

それをまたお照さんはいいことにして、やけにこの旦那とイチャイチャしていたからね。まあ、みんな悪いんだ。放っておけ」「あら、あなたこそ、やきもちを焼いているんじゃないの? あなたは、お照さんのことが好きだったんでしょう? 隠したってだめよ。こ...
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初級翻訳・お伽草紙 第26話

「せめて、雀の里のお土産のしるしに、この葛籠のうちどれでもお気に召したものをお持ち帰りくださいませ。お邪魔かもしれませんが」「いらないよ、そんなもの」「いらないよ、そんなもの」とお爺さんは不機嫌そうにつぶやき、そのたくさんの葛籠(つづら)に...
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