二十四の瞳

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二十四の瞳

初級翻訳・二十四の瞳 第1話

一 小石先生 十年をひと昔というならば、この物語の始まりは今からふた昔半も前のことになります。世の中のできごとといえば、選挙のきまりが変わって「普通選挙法」という法律ができ、その最初の選挙が二月に行われた、その二か月後のことでした。昭和三年...
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初級翻訳・二十四の瞳 第2話

「芋女(いもおんな)ァって、どなるか」「芋女でなかったら、どうする」「芋女に、きまっとると思うがな」 口ぐちに芋女芋女といっているのは、この地方がさつま芋の本場であり、その芋畑のまん中にある女学校なので、こんないたずらな呼びかたも生まれたわ...
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初級翻訳・二十四の瞳 第3話

ところが、ちょうどその同じころ、岬の村でも大さわぎだった。昨日は舟にのってきたとかで、気がつかぬうちにまた舟で帰ったのをきいた村のおかみさんたちは、今日こそ、どんな顔をして道を通るかと、その洋服をきているという女先生を見たがっていた。ことに...
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初級翻訳・二十四の瞳 第4話

三・四年生のクラスがさっさと教室へ入っていったあと、大石先生はしばらく両手を叩きながら、そのリズムに合わせて子どもたちに足踏みをさせ、うしろを向いたまま教室へと導いた。ここでようやく、自分を取り戻したようなホッとするゆとりが心の中に湧いてき...
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初級翻訳・二十四の瞳 第5話

だが、そんなことさえ「行きじゃなくて帰り道でよかった」とありがたがるほど、彼女は素直で前向きな気持ちでいっぱいだった。やがて平らな道に出ると、朝出会った生徒の一団も学校から帰ってきたところだった。――大石、小石――大石、小石何人もの声が合わ...
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初級翻訳・二十四の瞳 第6話

岬の山のてっぺんがかすかに揺れ動いているような様子は、外海の波の荒さを思わせ、少し不安にもなった。途中で自転車から降りなければならなくなるかもしれないからだ。そうなると、自転車ほど邪魔なものはない。しかし、だからといって今さら引き返すわけに...
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初級翻訳・二十四の瞳 第7話

それにしても、入り海をとりかこんだ村ぐらにとって、大昔から何かにつけて目じるしにされてきた名物の老松が災難にあったのに、地元にいる自分が気づかずにいたなんてとても恥ずかしいことでした。しかも今朝がたは、いい気になって調子に乗り、一本松の下か...
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初級翻訳・二十四の瞳 第8話

そんなつもりはちっとも――」「いいえ、だったらどうして人の災難を笑ったりなんかしたんですか。そんなことなら、お上品に道路の掃除なんかしてもらわなくて結構です!とにかく、わたしの家の前はほっといてください。――まったく、自分の自転車が通れんか...
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初級翻訳・二十四の瞳 第9話

「痛いですか、ひどく?」 かけつけた男の先生に聞かれて、女の先生はだまってうなずきました。「歩けそうですか?」 また、うなずきました。「いっぺん、立ってみるか?」 先生はだまったままです。西口ミサコの家から、ミサコのお母さんが、うどんこと卵...
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初級翻訳・二十四の瞳 第10話

こんな夜ふけに、こんなにも苦労をしているのは自分たちだけなのだと思うと、なんだか女の先生のことがうらめしく思えてなりませんでした。 あれ以来、奥さんもまた一役買って出て、四年生と五年生の女子五人の裁縫を受け持っていたのです。しかし、雑巾を縫...
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初級翻訳・二十四の瞳 第11話

そこでとうとう、ヒ・フ・ミ・ヨ・イ・ム・ナ・ヒ(日本の古くからの数え方に合わせた独自の音階)から始めて、男の先生流の教え方で押し通すことにした。そうなるとなったで、生徒たちはすっかり面白がって大喜びした。――ミ、ミ、ミ、ミ、フ、フ、フ、ヒ、...
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初級翻訳・二十四の瞳 第12話

数え年の十歳になるまでは遊んでもよいというのが、昔からの子どもの掟のようになっていましたが、遊ぶといっても、それは本当に自由に遊ぶのではなく、いつも弟や妹をつれていたり、赤ん坊をおんぶしてのうえでのことだったのです。本当に、好き勝手に遊んで...
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初級翻訳・二十四の瞳 第13話

コトエはそこで、草むらに学校の包みをかくして、みんなを待ちました。吉次とソンキが、先をあらそうように走ってやってきました。つづいて竹一と正。いちばんおくれてやってきたのは、富士子と仁太でした。仁太は用心深く、シャツやズボンの四つのポケットを...
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初級翻訳・二十四の瞳 第14話

遠かったあ……!」仁太が口火を切ったのをきっかけに、みんなも口ぐちに言いはじめました。「みんなで約束して、だまって来たんよ、なあ!」「一本松が、なかなか来んもんで、コトヤンが泣きだしたところじゃったんよ」「せんせ、一本松ってどこ? まだまだ...
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初級翻訳・二十四の瞳 第15話

お母さんのお話だと、当分自転車にも乗れないということだったので、そうはからったんだがね」もう、返す言葉がありませんでした。すると、岬の村がいっそう恋しくなり、思わず未練がましく尋ねました。「後任の先生は、どなたでしょう」「後藤先生です」「あ...
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初級翻訳・二十四の瞳 第16話

怪我じゃもん、しかたがない」「そんな目に遭うても、別れのあいさつとは気がええこっちゃい。ゆんとん、さんじゃい」 船頭さんは櫓にあわせて短く言葉を区切りながら、「ゆんとん、さんじゃい」と、いっそう力を入れて漕いだ。大石先生もくつくつ笑いながら...
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初級翻訳・二十四の瞳 第17話

ちゃんと、お母さんにそう言ってから行かにゃ」「そんなこと言ったら、絶対行かせてくれないもん」「そうだなァ、ほんとうにその通りだわ。まちがいないね」おばんはふるえるような力の入らない笑い声で笑って、「でもさ、なにがなんでもお米(ごはん)だけは...
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初級翻訳・二十四の瞳 第18話

「せんせえ――」「また、おいでえ」「足がなおったら、またおいでえ」「やくそく したぞォ」「や く そ く し た どォ」 最後に仁太の声が響いて、あとはもう、言葉のあやふやな響きもわからなくなった。「かわいらしいもんじゃのう」 船頭さんに話...
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初級翻訳・二十四の瞳 第19話

世の中の不況は父の仕事にもたたって、大工の父が、仕事のない日は、草とりの日ようにまでいっているほどだから、弁当箱一つでもなかなか買えないこともわかっていた。しかし松江は、どうしてもほしかったのだ。ここで柳行李をうけいれたら、いつまでたっても...
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初級翻訳・二十四の瞳 第20話

嫁にいったとすれば、小石先生はもう学校をやめるのではなかろうかというのがマスノの意見だった。小ツルがそれにさんせいし、小林先生も、嫁にいくのでやめたと、記憶のよいところをみせた。そしてまた、やめてもらいたくないという希望をいち早く口に出した...
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初級翻訳・二十四の瞳 第21話

「せんせい!」「なあに、松江?」「あのね、あのね、うちのお母さん、女の子産んだんよ!」「あらそう! おめでとう! なんて名前なの?」「あのね、まだ名前ないの。一昨日生まれたばっかりなんじゃもん」「あした、あさって、しあさって」と、松江は三本...
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初級翻訳・二十四の瞳 第22話

危険防止の土手は地面から三尺ほどの高さでめぐらしてあったが、土手はあまり用をなさず、子どもらはわずかな遊び時間をもかってに石垣をつたって、川の中へおりていった。おもに男の子だった。川上に家は一軒もなく、ちろちろの水はきれいだった。山から流れ...
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初級翻訳・二十四の瞳 第23話

「ほらみい、ほらみい!」こんどは先生が笑いながら、「でも、月夜のような気もするわね……」と言うと、女の子たちは両手をあげて、飛び跳ねてよろこんだ。みんな、そうやって騒ぐのが面白かっただけで、誰もそれを本気で考えてはいなかったのだが、正だけは...
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初級翻訳・二十四の瞳 第24話

あとから出てきた教頭先生の説明では、片岡先生の件は「参考人」としてちょっと話を聞いただけのことで、いま校長先生が身元を引き取りに行っているから、すぐに戻ってくるだろうとのことでした。問題の中心は片岡先生ではなく、近くの町の小学校にいる稲川と...
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初級翻訳・二十四の瞳 第25話

それよりマスノさんは、どうしてゆかんの」「風邪ひくといかんさかい」「あれあれ、大事なひとり娘」「そのかわり、旅行のお金、倍にして貯金してもらうん」「そうお、貯金はまたできるから、旅行にやってって、いいなさいよ」「でも、怪我するといかんさかい...
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初級翻訳・二十四の瞳 第26話

痛かったり、つまったりしたのは、お母さんの財布の口のほうで、早苗のために売りにいった珊瑚の玉のついたかんざしは思う値で売れず、洋服を買うことができなかったのだ。人の足もとをみてからにと、早苗の母は、その古手屋(古物商)のことをいつまでもおこ...
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初級翻訳・二十四の瞳 第27話

だから私、この山石早苗という子が、教壇に立ってちゃんとものが言えるかしらって、心配なのよ」「自分のこと忘れて。久子だって昔は人の前じゃろくに唱歌もうたえなかったじゃないか。それでもちゃんと、一人前になったもの」「ふーん。そうだったわね。いま...
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初級翻訳・二十四の瞳 第28話

私は大きくなったらお母さんに孝行つくしたいと思っています。 これなのだと、大石先生はさっした。 まるで女に生まれたことをじぶんの責任ででもあるように考えているコトエ。 それがコトエを、何ごとにもえんりょぶかくさせているのだ。 だれがそう思わ...
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初級翻訳・二十四の瞳 第29話

「下士官になればな、曹長までは平気でスイスイ出世できるんだって。おまけに下士官はちゃんとお給料ももらえるんだぞ」 正には、そこに堂々とした出世の道が見えているようでした。 すると竹一(たけいち)も、負けじと声を張り上げて言いました。「ぼくは...
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初級翻訳・二十四の瞳 第30話

高等科の列の中から、正や吉次や、小ツルや早苗のうるんだ瞳が、一心に自分を見つめているのに気づいたのは、壇をおりてからのことだった。お昼休みに、別棟にある早苗たちの教室のほうへ行くと、いち早く小ツルが見つけて走ってきた。「せんせ、どうしてやめ...
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初級翻訳・二十四の瞳 第31話

「これはね、お餞別(せんべつ)の、葉書と切手なの」 人からいただいた切手帳と葉書を、新しいタオルに添えて包んだものを磯吉に渡し、竹一にはノート二冊と鉛筆一ダースを合格のお祝いとして渡した。「薮入り(やぶいり)なんかでお休みがもらって戻ってき...
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初級翻訳・二十四の瞳 第32話

ひきこまれるような大きな声で、「あらっ、仁太さん!」 そして、あとからあとからバスから降りてくる顔に向かって、「あら、あら、あら、みんないるの、まあ」 仁太につづいて磯吉、竹一、正、吉次と、かつてあの岬の分校で学んだ少年たちはみんなそろって...
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初級翻訳・二十四の瞳 第33話

大きな関心をよせてほめたたえ、そこへつづくことを名誉とせねばならないのだ。なんのために竹一は勉強し、だれのために磯吉は商人になろうとしているのか。子どものころ下士官を志望した正は、軍艦と墓場をむすびつけて考えているだろうか。にこやかな表情の...
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初級翻訳・二十四の瞳 第34話

「母ちゃん、ぼくもう、さっきから迎えに来とったんやで」いつもなら自然と笑みがこぼれてくる、きれいに澄んだその声が、今日はちょっぴり悲しそうでした。ニコッと笑ってみせると、大吉はすぐに甘えるようにすり寄ってきて、「母ちゃん、なかなか戻らんから...
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初級翻訳・二十四の瞳 第35話

仁太のその間髪を入れない言葉があまりにも突拍子もなかったため、係官が聞き流してくれたのだとしたら、思ったことをそのまま口にした仁太はなんと運がよかったのだろう。みんなの代わりに溜飲を下げるようなこの出来事は、ちょっとした珍事件として大石先生...
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初級翻訳・二十四の瞳 第36話

いっさいの人間らしさを犠牲にして人びたちは生き、そして死んでいった。おどろきに見はった目はなかなかに閉じられず、閉じればまなじりを流れてやまぬ涙をかくして、何ものかに追いまわされているような毎日だった。しかも人間はそのことにさえいつしかなれ...
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初級翻訳・二十四の瞳 第37話

少しは人の気持ちも分からないなんて、馬かかしら……」そう言って、大吉の額をツンと指先で強く押した。その勢いでひょろひょろと倒れかかった大吉は、腹を立てて母につかみかかっていった。しかし、母の目に大涙がぽろぽろとこぼれ落ちそうになっているのを...
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初級翻訳・二十四の瞳 第38話

お母さんがそう言ったとき、大吉にはすぐにはその意味が飲み込めなかったが、だんだんとその本当の意味がわかってきた。近頃では、村の柿の木も栗の木も、完全に熟れるまで実が残っていたことは一度もなかった。みんな食べ物が足りなくて、待ちきれなかったの...
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初級翻訳・二十四の瞳 第39話

これほど弱り、まわりの人たちからいたわられている彼女が、ふたたび教職に戻ることができたのは、陰で早苗(さなえ)が一生懸命尽力してくれたおかげだった。早苗はいま、岬の本村(ほんむら)にある母校にいた。「四十になるんだぞ。現役の先生でいても、年...
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初級翻訳・二十四の瞳 第40話

彼女は小さいときに亡くなった姉のことなどおぼえていなかったのだ。それで、古い家庭のことをきくのはもうやめた。西口ミサ子の娘は、勝子(かつこ)といった。そのほか三人の女の子のなかに、赤い新しい洋服を着た川本千里(かわもとちさと)という子どもが...
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初級翻訳・二十四の瞳 第41話

「先生、もしも自転車をお買いになるんでしたら、ご相談にのりますから」それがどういう意味なのか聞き返す暇もなく、大吉の舟は急にスピードを上げて近づいてきた。陸地の影に入って、風が止んだのだろう。大吉は母親だけにちらっと笑いを見せ、そっぽを向い...
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初級翻訳・二十四の瞳 第42話

お母さんの教え子の墓まいりなんだから。いっしょに、きてもいいけど」なんだか不服そうなおおよしを残して、二人は並んで歩きだした。「まあ、ノッポになったことミサ子さん。あんた一番ちっちゃかったでしょう」「いいえ、コトやんです。そのつぎがわたしで...
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初級翻訳・二十四の瞳 第43話

どう?」「わあっ、うまい、うまい」並木がまたさきに歓声をあげ、大吉もさんせいらしい笑顔でうなずいた。日曜日は朝から曇っていた。ふりさえしなければ、一本松から一里の道を歩くにはかえって都合がよかった。歓迎会は一時からというので、十二時にはもう...
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初級翻訳・二十四の瞳 第44話

なあ先生、わたし、あの弁当箱、戦争中は防空壕にまで入れて守ったんですよ。あの弁当箱だけは、娘にもやりたくないんです。わたしの宝でしたの。今日もお米を入れて持ってきたんですよ、先生」 それを聞くと吉次が、あ、そうじゃ、と言いながら、国民服のわ...
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初級翻訳・二十四の瞳 第45話

それは、小学六年生のときの学芸会で、最後のプログラムとして彼女が独唱し、それによって彼女の人気を一気に高めた思い出の唱歌だった。早苗はたまらず、マスノの背中にしがみついて声を上げて泣いた。
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